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フットボーラーとプレーヤーの違い

こんにちは。
サッカーコーチのコーチ倉本和昌です。

今日はがっつりサッカーの話します。フットボーラーとプレーヤーの違いについてです。

ロナウジーニョとジダンを比較するDVD

フットボーラーとプレーヤーの違いというのは、選手には大きく2つのタイプがあるという考え方ですが、これが全てであるということでありません。

2002〜2006年に私がバルセロナに住んでいた時、ライカールト監督率いるバルサは全盛期を迎えていました。当時活躍していたのは、バルサのロナウジーニョとライバルチームであるレアル・マドリードのジダンです。

スペインで、その二人を比較するDVDが発売されました。そのDVDの中で、あらゆるスペインのサッカー著名人が「二人はどう、何が違うのか?」を議論しているものでした。そんなDVDが売れるのもまさにスペインならではですね。

ロナウジーニョとジダンの違いを端的に言うと、「フットボーラー」と「プレーヤー」の違いであると。

つまり、ジダンは「その置かれている状況において最善の判断ができる選手(プレーヤー)」、ロナウジーニョは「その状況において自分がやりたいプレーができる選手(フットボーラー)」という違いだとそのDVDの中では言われていました。

もちろん二人ともその時代を代表する素晴らしい選手です。ファンの目線や好きなクラブによって「どちらがより素晴らしいか?」決めるのは難しいでしょう。

私は、このDVDがきっかけで選手のタイプについて考えるようになりました。

「フットボーラー」と「プレーヤー」

タイプがあるというだけで、どっちがいいというわけではありませんし、これはあくまで「そうであろう」と勝手に色々な人が議論の中で出してきただけなので、絶対的なものではありません。

ただ、選手には2つのタイプがあるという考え方です。

スペインにいた頃、指導者同士の会話の中では、よくこんな表現が使われていました。

「この選手はサッカーを知っているな」
「この選手はなんて簡単にサッカーが見えるんだ」 
「サッカーをプレーすることとサッカーをプレーすることを知っているのは違う」
 
当時のその言葉を聞いたばかりの私は、正直その言葉の意味がよくわかりませんでしたが、今になってその感触をつかんできました。

大雑把な言い方にすると

・ジダンは Jugador(フガドール スペイン語)  = Player =プレー(ゲーム)をする人

・ロナウジーニョは Futbolista(フットボリスタ スペイン語)  =  Footballer =フットボールをする人

であるとということです。
 
プレーヤーとはプレーする人なので、イメージとしては将棋やチェスの棋士、つまり再現性高い。一方で、フットボーラーは感覚でプレーする、つまり再現性は低いが、即興性が高い。
 
つまり、ロナウジーニョは2人に囲まれた時に「一人目をエラシコでかわして、食いついた二人目はまた抜きでかわす」というのがやれてしまう選手。フットボールをするための才能を持って生まれてきた人とも言えます。
 
ジダンは「二人自分のところに来たということは、一人味方がフリーだからどうやってその選手を使うか?」その状況に応じた判断をし、しかもミスがない。

イニエスタも飛び抜けたレベルの「プレーヤー」で、以前スペインの番組で、記者が「なぜあなたはあんな風に判断間違えず信じられないようなプレーができるんですか?何を考えながらプレーしているんですか?」と聞いたんです。

その時の彼の答えは「私は何も難しいことはしていません。その状況のしもべになっているだけです」と答えたんです。
聞いている全員はの頭に「?」が浮かびます。つまりイニエスタが言いたかったのは「自分がこうやってプレーしようというものより、その状況が最適解を導いてくれており、自分はその最適解に従ってプレーしているだけである」と

指導者のすべきこと

 
私たち指導者は、どちらのタイプでもサッカーをプレーすることを理解することができるように選手に促していかないといけないわけです。

私の師匠であるアルベルト(アスレチック・ビルバオ分析官)は、以下のように語っていました。

「フットボーラーは基本的に南米の選手に多い。そもそもの絶対数は世界中全てのサッカー選手の中で1割もいない。ヨーロッパだと典型的プレーヤーが多いのはイタリアかもしれないね。つまり、どっちのタイプがいてもW杯優勝はできる。

でも、フットボーラーだけのチームはチームとしては機能しない。だからヨーロッパのトップクラブは基本的にプレーヤータイプの選手で構成し、最後の決着をつける部分はフットボーラータイプの創造性や打開力を組織に組み込んでいく。」

つまり、フットボーラーは”そういう選手”を見つけてくることが重要なんです。そしてその才能を壊すことなく、「サッカー的しつけをする」ことも必要になってきます。

なぜなら、自分の好きなプレーしかしないという選手が本当にトップレベルまで到達できるかというとそれは難しいわけです。

サッカー的なしつけとは

私の中で、「サッカー的しつけ」とは、3つの要素があります。
・チームの中でポジショニングを気にすること
・切り替えを素早くすること
・守備をすること

この部分はコーチとしての影響を与えられることです。その中で、ぜひその才能、自分の武器、能力を発揮してもらいたいわけです。

ここにネイマールの例を挙げましょう。

2011年のクラブW杯決勝でFCバルセロナとサントスが対戦し、4−0でバルサが勝った試合を覚えていらっしゃいますでしょうか?

この試合にサントスのエースとしてプレーしていたネイマールはあまりのバルサの凄さに驚き、その後バルサへの移籍を決めます。

移籍してきた選手は新しいチームに慣れるのに当然時間がかかりますが、バルサの場合はさらに苦労するわけです。

もし、ここでネイマールがチーム全体でプレーすること、ポジショニングを気にすること、切り替えスピードを上げてプレッシャーかけることを全くやらなかったらどうなっていたでしょうか?おまけにドリブルばかりしてつっかけて、奪われても取り返さない選手だったら?

きっと「もうバルサではプレーできない。そんなに自分のやりたいことがやりたいならそういう他のチームを探しなさい」となっていたはずです。

現実はそうはならず、ネイマールはバルサのサッカーにも順応したわけです。もちろんメッシやスアレスの助けがあったからだと思いますが。
 
つまりフットボーラーも野放しにしているだけではトップレベルプレーできなくなっているのです。
 

まとめ 

アルベルトも言っていた通り、基本的にほとんどの選手が「プレーヤータイプ」になります。繰り返しになりますが、どちらのタイプがいいとか悪いとかではありません。

ただし、私たちコーチは「プレーヤータイプ」の選手なのに「フットボーラータイプ」にしようとしていたり、そもそもフットボーラー自体を作ろう、育てようとしていたらそれは本当に危険なことだということです。

もしかしたらもっと上のレベルでプレーできたはずなのに、それが叶わなかったということが起こってしまうからです。

このタイプの見極めが全てではありませんが、その選手がどのタイプか気にすることは、その選手の成長を考える上でも必要なことです。

フットボーラーは「いるか?いないか?」で育てられるものではない。

プレーヤーを育てて勝利を目指すか?それともフットボーラーが現れるのを待つか?

両方必要なのは当然ですが、皆さんはこの選手のタイプについてどう思われましたか?そして、皆さんはどんな選手を育てたいと思いますか?

ヨーロッパでどうやって選手どんな選手を育てているのか、についてもお伝えしている倉本和昌のワールドサッカーラボ

気になる方はこちらをどうぞ。


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