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『抽象』であそぶ、年中さん

今週のクリエイティブ・ムーブメントのクラスでは、
『音を描く、絵を踊る』
というワークショップであそびました。

音を耳で聴くだけでなく、カラダ全体で捉え、
カラダの中に広がる感触や、感情をもとに、
クレヨンの色や質感に変換して、紙に描く、

というあそびです。
これは、完全に『抽象』の世界。

多くの園児にとって、絵を描く、という体験は、

「ゾウさんの絵を描く」
「お父さん、お母さんのお顔を描く」

など、「何を描くか」が具体的にイメージとしてあり、
「そう見えるように描く」という機会の方が、
圧倒的に多いかもしれません。

しかし、ここでは、はじめから「音」という
目に見えないものを題材にしています。

つまり、そこには、正解も不正解もなく、
「本人にとっての真実」が描かれていきます。


嬉しそうに絵の説明をしてくれるIくん

子どもたちは、お教室いっぱいに広がり、
一人のスペースを確保して、
それぞれ目を瞑り、音を集めに行きます。

まるで、落ち葉を拾って集めたり、昆虫を虫籠に集めるように。
そうして、聴こえてきた音は、

重い音?軽い音?
早い音?ゆっくりな音?
優しい音?うるさい音?

などとそれぞれのカラダで味わいながら、
クレヨンを使って描いていきます。

鳥の声が聴こえても、鳥そのものの絵を描く子はおらず、
それぞれ、鳥の声を何色かな?どんな強さの線かな?
など考えながら、思い思いに描いていくのです。

これは、抽象画であり、そこには抽象の世界を楽しみ、
抽象というコンセプトを感覚的に理解して、
主体的にあそぶ子どもたちの姿があります。

絵というものは、
(あるいはダンスでも、音楽でも、なんでもそうですが、)
どうしても、上手い下手が気になってしまう。

でも、こういうやり方ならば、上手い下手はなく、
その子が感じたまま描けば良いので、
自由に楽しむことができます。

ここで、注目すべきポイントは、

どうしてこの年中さんたちが、
こうした一見難しそうなコンセプトを
すぐに理解して楽しむことができたのか?

というところ。

これは、4月から毎週毎週、
カラダを使ってあそんできたことにあります。

特に1月からは、

「次は、ふわふわ優しい動き!」
「次は、早くてとんがった動き!」
「次は、ねっとりした動き!」
「次は、ぐにゃぐにゃな動き!」

などと私が声がけをし、いろいろな動きのクオリティを
全身で感じたり、体現したりしてきました。
こういった経験を積み重ねたことで、
子どもたちのカラダの中には、
いろいろな感触や感覚が残ったのだと思います。

そのプロセスを経て、「音」という題材に出会うと、
音も、カラダの感覚で捉えられるようになる。

とてもシンプルに表すと、
耳→脳、ではなく、耳→カラダ→脳
のようなプロセスで捉えるようになるのではないかと思います。

それが、こうした絵の描き方に繋がったのではないかと、
考えています。


みんな描き方が全然ちがう!

一見ぐちゃぐちゃの線や形に見えるかもしれませんが、
とんでもない!!

みんな私や担任の先生のところに飛んで行って、

「これはね、〇〇先生の足音だよ!」
「ほら!こうやってブーンって飛行機が飛んでったよ!」

などと、一つ一つの線や形について、
夢中になって教えてくれるんです。

これは、きっと『自分だけの答え』を出していくスキルに
繋がっていく。

誰の正解でもない、自分の正解。

自分のカラダの中で起こっていること、
それがどんな感覚で、どんな気持ちとつながっているのか。

そういうことを、継続的に繰り返し繰り返し、
感じていくことは、やがて、

「自分で感じ、自分で考える」ことに

繋がっていくように思います。

来週は、音を描いたら、その絵を踊ります。
今週と来週の絵には、どんな違いがあるかしら?
子どもたちから、どんなダンスが生まれるかしら?

来週のクラスも楽しみです!

Sayaka


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