![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139279894/rectangle_large_type_2_a84e5888b4c64473fd27f7b5eef7f880.jpeg?width=800)
フアン・ソト(Juan Soto)は大谷翔平を超える契約を得られるのか?
結論
7億ドル越えは不可能。
現在価値換算の約4億6千万ドル超えは可能。
という結論になります。
まず大谷選手の契約はすごく特殊なものとなっています。
10年7億ドル契約のうち、6億8,000万ドルを10年契約の終了後に後払いしているわけですから。
そのため後払い分を今の価値に置き換えて計算しなおすと、約4億6千万ドルとなるのです。
7億ドルという額は、契約額の97%を後払いにするという規格外の契約形態だからこそ成り立っています。逆に言えば、これほどの後払いがなかったら、7億ドルもの契約が成立することはなかったでしょう。
現在価値などのより分かりやすい説明に関しては、MNsportsさんのこちらの動画をご覧ください。
4億6,000万ドル超えが可能だと考える理由
ソトが大谷選手と比べて明確に勝っているのが、若さです。
大谷選手は29歳でFAになりましたが、ソトは26歳でFAになる予定です。
ソトのほうが3歳も若くFAになるのです。
これによって、
①契約期間が延びるため、その分AAVが下がる
②20代後半の全盛期を買い取ることができる
といった点で契約面での上積みの余地があるのです。
①契約期間が延びるため、その分AAVが下がる
今のMLBでは、金満球団が有利になりすぎないような施策として、選手に使う予算が一定額を超えると、ぜいたく税と呼ばれる罰金を支払う必要があります。
ぜいたく税の計算に使用するのが、AAVであり総年俸の現在価値総額÷契約年数で求められます。
そして、このAAV計算において、ソトは有利なのです。
大谷選手は39歳までの10年契約となっています。
もしソトが同様に39歳まで契約するとなれば、13年契約となりぜいたく税の対象額であるAAVをより小さくすることができるのです。
例えば、大谷選手のAAVは、現在価値である4億6,000万ドル÷10年=約4,600万ドルとなります。 一方で、ソトの契約を13年5億ドル(後払いなし)と仮定した場合、AAVは5億ドル÷13年=約3,850万ドルにしかなりません。
このAAVは大谷選手はもちろん、野手最高のAAVを記録するアーロン・ジャッジ(Aaron Judge)の4,000万ドルよりも低いのです。
以上から、契約期間が長くなるがためにAAVの面で、球団にとっては契約総額が大きくなっても、ぜいたく税のダメージが過大になりすぎないのです。
(負担が大きいことには変わりないです。大谷選手やジャッジよりは少ないということです。)
②20代後半の全盛期を買い取ることができる
これに関しては、いたってシンプルです。
選手として脂が乗った時期である27歳~29歳を自分のチームで過ごしてくれるわけです。
契約する側としてもかなりおいしいのではないでしょうか。
大谷選手の契約がそもそも少し安かったのではないか
そもそもとして、大谷選手の事前の契約予想は、どれほどだったのでしょうか?
肘のケガを負った後でさえ、契約は5億ドルを超えるという予想がそれなりにあったような気がします。
例えば、以下のような予想がありました。
MLB Trade Rumors:12年5億2,800万ドル
ESPN :10年5億2,000万ドル
The Athletic :10年4億7,700万ドル+出来高(総額で5億ドル以上)
(引用:
2023-24 Top 50 Free Agents With Predictions - MLB Trade Rumors
Rankings, contract projections for top 50 MLB free agents - ESPN
Top 40 MLB free agents for 2023-24: Contract predictions, team fits for Ohtani, Yamamoto, more - The Athletic)
やはり、5億ドル超えの予想が多いですね。当然これらの予想は後払いによる割引きは考慮されていないでしょう。
そして何度も書きますが、大谷選手の契約総額の割引現在価値は約4億6,000万ドルです。
こうしてみると大谷選手の契約は、事前の予想と比較すれば少し安くなっていると言えるのではないでしょうか。
このこと自体は、ソトの契約とそんなに絡めて話せることは無いのですが、気になっていたことなので一応書きました。
フアン・ソトはどんな選手なのか。
さてやはり、契約額の大きさを話すうえで、ソトの選手としての凄さを話さないわけにはいかないでしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1714647049836-95ghbRCyVp.png?width=800)
baseball reference より参照
やはり打撃面での安定感には目を見張るものがあります。
メジャーデビューからすべての年で、OPS+が140を下回ったことがありません。
不調の年でもハイレベルで打てていることは大きな魅力でしょう。
加えて耐久面も優秀であり、シーズン途中でデビューした2018年と、コロナによる短縮シーズンであった2020年を除いた、4年間全ての年で150試合以上出場している点も、球団にとっては非常にありがたいのではないかと思います。
それだけ素晴らしい選手であるフアン・ソトですが、彼が4億6,000万ドル越えの契約を結ぶ上で障害となるのはどのようなことでしょうか。
私が思いついたのは以下の4つです。
Ⅰショートをやっていたり、投手をやっていたりなどの打撃以外での付加価値がない。
Ⅱ守備力が悪い。
Ⅲネームバリューが少し劣るのでは?
Ⅳこれだけの大金を出すチームはあるのか?
これらに対する私の考えを話すうえで、まずは過去の選手と比較をしてみましょう。
過去を振り返る
折角なので、過去10年をさかのぼって、ソトと近い状況でFAになった選手を何人か挙げていきたいと思います。
条件としては、
①FA時に26歳~27歳
②打撃面でトップクラス
ざっくりとこの2条件で絞り込みましょう。
すると、主に以下の3選手が挙げられるかと思います。
2018年オフ
マニー・マチャド(Manny Machado, 26歳):
10年3億ドル(当時FA契約史上最高額、数日後にハーパーが更新)
キャリア通算OPS+(FA時点):121
FAイヤーOPS+ :145
キャリア通算bWAR(FA時点):34.4
FAイヤーbWAR :6.1
ブライス・ハーパー(Bryce Harper, 26歳):
13年3億3,000万ドル(当時MLB史上最高額)
キャリア通算OPS+(FA時点):139
FAイヤーOPS+ :133
キャリア通算bWAR(FA時点):27.8
FAイヤーbWAR :1.8(!)
2021年オフ
コーリー・シーガー(Corey Seager, 27歳):
10年3億2,500万ドル
キャリア通算OPS+(FA時点):131
FAイヤーOPS+ :142
キャリア通算bWAR(FA時点):21.2
FAイヤーbWAR :3.6
2024年オフ
フアン・ソト(Juan Soto, 26歳):
?ドル
キャリア通算OPS+(2023年まで):157
キャリア通算bWAR(2023年まで):28.5
これら3選手うちマチャドは守備力が高く、打撃だけでの評価ではないと考えられる点、シーガーは、ショートであるというプレミアムがある点で、打撃以外での付加価値がありました。
したがってソトと最も類似点が多いのはハーパーであると考えられます。
ではハーパーの成績を見てみましょう。明らかな違和感に気づくかと思います。
ハーパーのFAイヤー WAR低すぎないか?
マチャドのFAイヤーは、間違いなく十分なアピールとなったはずです。
シーガーの場合は、出場試合数が98試合と少なく、そのためWARがやや低いですが、打撃面ではキャリアハイに近い数字を記録しました。
一方で、ハーパーは159試合に出場しており、試合数が少ないからWARが低くなったわけではありません。
WARが低い最大の理由は、守備が壊滅的に悪かったためです。
bWARの算出において、守備指標はDRSを用いているのですが、2018年のDRSは-21という、ワーストクラスの守備力を発揮しました。
これだけ守備力が悪かったのは、ハーパーがダイビングキャッチなどのアウトを奪うための積極的なプレーを意図的にしていなかったためであると考えられます。
誤解を与えないように述べておきますが、もともとハーパーは積極果敢に打球に飛び込んでいく守備スタイルであり、守備指標的にも優秀なシーズンが多い選手でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1714646812438-dRAg2dwTLf.png?width=800)
メインポジションは、その年最も多くのイニングを守ったポジションを記載
2012年~2015年まではDefensive Run Valueが計測されていなかった
ナショナルズ時代のハーパーはケガでそれなりに離脱していました。その要因として、積極果敢な守備スタイルが災いしていた可能性もあります。
したがってそういった守備スタイルを変えたことで、守備指標が大きく悪化したと考えられます。
(結果論だが、翌年以降の守備指標は改善されている)
また打撃面では2018年のハーパーのOPS+133は、2018年までの通算OPS+139と比較すると、やや物足りない数字ではあります。
しかし、スタットキャストでは圧倒的な数字が並んでおり、将来的に問題はないと判断されたのでしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1714639152752-uaHN9cWH3O.png?width=800)
(baseball savantより)
加えて、ハーパーは2015年のOPS1.109, OPS+198, 史上最年少での満票MVPを記録したシーズンがあります。
2017年にもOPS1.008と、OPS1越えのシーズンがあります。
こういった過去の実績も反映された結果として、ハーパーは当時のMLB史上最高額の契約を結ぶことができたのだと考えられます。
少し長くなりましたが、ハーパーのFAイヤーがあまり良くなくとも、当時のMLB史上最高額の契約を勝ち取ることができた理由として
①FAイヤー以前の成績がずば抜けていれば、FAイヤーが多少不調でも問題ない。
②打撃が売りなので、守備はそれほど重視されない。
③スタットキャストの数値が優秀だった
というのが私の推測になります。
話がそれてしまった気がしますが、先ほど挙げた4つの疑問に私なりの考えを述べたいと思います。
Ⅰショートをやっていたり、投手をやっていたりなどの打撃以外での付加価値がない。
Ⅱ守備力が悪い。
Ⅲネームバリューが少し劣るのでは?
Ⅳこれだけの大金を出すチームはあるのか?
疑問への考察
Ⅰショートをやっていたり、投手をやっていたりなどの打撃以外での付加価値がない。
先ほどのハーパーの話から、打撃面で突出した成績を残しているソトにとって特段問題にはならないと考えます。
2018年~2023年までのwRC+は、トラウト、ジャッジ、アルバレスに次ぐ4位の154です。これだけ突出していれば十分であると考えます。
Ⅱ守備力が悪い
もちろん、ソトの守備が優れていると言うつもりはありません。
ただ、ソトの守備は言われるほど悪いわけではないと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1714641673461-Jgz4THZrmG.png?width=800)
メインポジションは、その年最も多くのイニングを守ったポジションを記載
このように悪い年はとことん悪いですが、2019年や2021年のように指標が良い年もあるのです。
そして、今シーズンの守備指標ですが、Fielding Run Valueは+2、DRSも+2となかなか優秀な結果となっています。
もちろん、ここまでがたまたま良かっただけという可能性もありますが、少なくとも守備が足を引っ張るとまではあまり言えないかと思います。
Ⅲネームバリューが少し劣るのでは?
これに関しては、否定できない事実だと思います。
大谷選手やハーパーほどのネームバリューがあるとはあまり思えませんし、ジャッジやトラウトのように、チームのフランチャイズプレイヤーという付加価値があるわけでもありません。
一方で、今シーズンはヤンキース(Yankees)に居ることもあってか、「MLB Shop」におけるユニフォームの販売数では5位となっています。(5月2日時点)
ヤンキースというネームバリューと今シーズンのパフォーマンスによって、「Juan Soto」のネームバリューが向上することに期待しましょう。
Ⅳこれだけの大金を出すチームはあるのか?
これに関しても、完全に予想になってしまいますが、何チームかいるのではないでしょうか。
本命:①New York Mets
やはり、コーエンオーナーによる圧倒的な資金力がバックにあるメッツは、ソト獲得の筆頭候補ではないでしょうか。
昨年のマックス・シャーザー(Max Scherzer)の話によれば、メッツは2025年または2026年を見据えているらしいです。
今シーズンオフ、コンテンダー返り咲きに向けてソトを獲得するという展開はあり得るのではないでしょうか。
対抗:②San Francisco Giants
かつて、ジャッジやコレアを獲得寸前まで行っていたジャイアンツにとって、チームの顔となるスーパースターは是が非でもほしいところでしょう。
大谷選手に、10年7億ドルに近い契約を出していたこともあり、チームの顔となれるフランチャイズプレイヤーを今もなお欲しているはずです。
懸念点としては、本拠地のOracle Parkが左打者にとって鬼門であることでしょうか。この懸念点はもはやどうしようもないため、メッツと札束で殴り合わないといけません。
獲得は一筋縄ではいかなそうですがどうでしょうか。
大穴:③Toront Blue Jays, Detroit Tigers
ブルージェイズは、打線をけん引するはずの、ブラディミール・ゲレーロ・ジュニア(Vladimir Guerrero Jr.)やボー・ビシェット(Bo Bichette)らが2021年のような打力をいまだに取り戻せていない状態が続いています。
ドルトン・バーショ(Daulton Varsho)やデービス・シュナイダー(Davis Schneider)など、打力を発揮している若手もいますが、全体として迫力不足は否めません。
今後もコンテンダーであり続けるためには、長期的な打線の軸となる選手が必要不可欠です。
現在ライトを守るジョージ・スプリンガー(George Springer)も、全盛期ほどの力は残っていないことから、彼をレフトにコンバートさせることで、ライトのポジションを開けることはできます。
問題は、ソトへの契約額を払えるかどうかです。
ブルージェイズはすでに、今シーズンのぜいたく税ラインは超えており、今シーズンで契約が切れる選手も、ジャスティン・ターナー(Justin Turner)や、ケビン・キアマイヤー(Kevin Kiermaier)、菊池雄星など、合わせて4,000万~5,000万ドルほどしか空きません。
契約延長なども踏まえると財政面の問題で、ソト獲得はかなり厳しいでしょう。
タイガースは、今シーズンのペイロールが1億ドルちょっとであり、金銭面での余裕はあると思います。
また、今シーズンは悪くない滑り出しであることから、未来への確かな手ごたえを感じることができれば、バイエズのリベンジとしてソト獲得に動くかもしれません。
ただし、タイガースはどこまでお金を出せるかは不透明です。昨年のダイヤモンド・スポーツ・グループ(DSG)の破産により、タイガース戦を中継するDSG傘下のBally Sports Detroitからの放映権料がどうなるのか、現状わからないままです。
この問題がある以上、タイガースも財政面での障害がありそうです。
以上より、ソト獲得にはメッツとジャイアンツが獲得候補であると考えられます。
もちろん、思わぬダークホースがソトをかっさらう可能性もあるので、そこに関しては読めませんが。
まとめ
以上、ソトが4億6,000万ドルを超える契約を得る可能性について、考察しました。最初に述べましたが、若さというのは非常に大きな価値を持っていると思います。またそれ以外の、ソトの契約に関する疑問について私なりの意見を述べさせていただきました。
ソトが4億6,000万ドルを超える契約を得られるように、代理人であるスコット・ボラス(Scott Boras)には頑張ってほしいものです。
ここまで、読んでいただきありがとうございました。
この考察が少しでも、お役に立てれば幸いです。
参考文献
成績
当時のメッツGMビリー・エプラーとの会話の内容について語るシャーザー
ジャイアンツの大谷選手へのオファー
各チームのペイロール状況
ユニフォームの販売数ランキング
ヘッダー画像:MLB公式より
すべて2024年5月2日(日本時間)参照
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?