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22年の株式市場の注目(特別版)

 今回は、22年注目の株式市場の「TIGER」だ。これは、先般(1/6)のモーサテの朝活オンラインでも紹介したものだ。

無理やり感も強いのだが(笑)、TIGERとして以下の5つの項目を取り上げた。

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最初の「T」はテスラだ。2020年を代表する株を1つ挙げろと言われたら、テスラだ。同社は2020年に5四半期連続黒字を達成、納車台数は50万台弱まで急成長し、ついにS&P500に採用された。では、2021年を代表する株は何か?私は、やはりテスラを挙げる。21年にテスラの時価総額は一時1.2兆ドルを越えた。トヨタやVWなど2位から5位までの自動車メーカーの時価総額の合計を遥かに上回っている。CEOのイーロン・マスクは21年の「今年のヒト」に選ばれ、世界一の大富豪にもなった。こういうテスラのような銘柄を「象徴銘柄」と呼ぶ。その動向は、同社だけでなく、株式市場全体の状況を示す。今年の株式市場が、テスラが更に上値を伸ばすような地合いなのか、あるいはテスラが伸び悩むマーケットとなるかは、株式市場全体の流れを示すだろう。それにしても、テスラの19年末の株価は84㌦、現在は1000ドルを超えている。そして、テスラの株はアナリストの目標株価は、「400㌦~1,400㌦」とプロの間でもそのレンジはめちゃくちゃ広い。同社をどう評価するのは難しいのだ。すなわち、面白い株価なのだ。

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 次の「I」は、イノベーション。まず、非常に重要な認識は、イノベーション分野には自由で公正な競争は、もはや存在しないということだ。この大前提を間違えてはいけない。つまり、最先端分野は、今や「経済安全保障」という大義名分のもと、大国間競争が展開されており、国が民間に対して、補助金を集中的に投与する産業政策が日常化している。通常の産業政策は、弱い産業を保護するものだ。しかし、イノベーション分野は、もともと強い産業であるが、それを更に強化しようという戦いであり、はっきり言って半導体分野に新規参入はもはや不可能だ。ちなみみ、以前はWTOがこうした大国間競争を防いでいたが、今は機能していない。WTOの紛争処理の上級員会は、定員7名だが、現在は全員任期満了して、ゼロ名という異常な状況だ。
半導体業界の好調を示す非常に分かりやすい例は、オランダのASMLだ。同社は高度な光技術で極小回路をシリコンウエハーに印刷するEUV(極端紫外線リソグラフィ)装置の企業だが、同社が昨年公表した長期見通しでは、2025年の売上高を大幅に上方修正し、更に2030年まで11%の平均成長率が継続すると示した。従来の3年~4年の半導体サイクルなんて、ほとんど関係ないということだ。半導体分野の株価は、押し目があればしっかり買う。そして、簡単に手放してはいけないということだろう。日本でもレーザーテックの株はコロナショックの20年3月に直近のピークから3割下落した。しかし、なんと僅か1ヶ月後には下落分を全て取り戻した。そして、年末にはそこから2倍に上昇した。こういう株価を上手に売って、上手に買い戻すことは難しい。保有して手放さない投資手法が最もワークしている。


さて、 既に数兆円単位の補助金が決定している米中に比較すると規模感は小さいものの、日本でも最先端分野保護の動きは始まっている。(下図)経済安全保障は岸田政権の3大テーマの一つだ。先般の補正予算では6170億円が半導体の基金に計上された。通常国会では経済安全保障推進法が審議されるほか、6月頃の成長戦略、いわゆる骨太方針では、具体的な政策や方針が示されるため注目したい。

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次の「G」はゲームだ。先ほどのイノベーションと関連するが、ゲーム市場こそは、新たなテクノロジーの見本市、実験場なのだ。実社会に実装されるにはリスクがあるが、ゲームの中なら何でもきる。また、規制や法律も必要としない。ゲーム分野を見ておけば、新たなテクノロジーの段階や広がりが理解できるだろう。ポケモンGoが拡張現実(AR)を見せたのが2016年。2017年には現在も大人気のフォートナイトが、仮想空間でのバトルロワイヤルを提供した。このゲームでは、エヌビディアの技術によりAIを活用して、ゲームのクオリティ(没入感)を高めている。最近話題のメタバースやNFT、WEB3.0なども、まずはゲーム内で実験的に始まっている。「集まれ動物の森」なども、メタバースみたいなものだ。

ゲーム分野で重要なポイントは、ゲーム空間という捉え方。ゲームは今やリビングのテレビで子供が夢中になる遊びではない。約3000万~4000万人がプレイするモバイルゲームアプリ市場で500万~1000万人はプレイではなく、他人のプレイを視聴して、それをチャットしてゲーム空間で遊んでいる。ゲームプレイというライブ空間を楽しんでいる。巨大なエンターテイメントだ。フォートナイトなどのゲーム内でコンサートが行われたり、ゲーム内で人気アニメのキャラクターとコラボしたり、あるいは今やゲームが出会いの場となり、リアルライフにも関与している。荒野行動というゲームでは、1年間で約86万組のカップルが誕生したと発表されている。
ゲーム業界の再編も注目だろう。2019年にGoogleとアップルがゲームに参入、2020年にはアマゾンとフェイスブック、2021年にはネットフリックスも参入を表明した。大手プラットフォーマーの参入は、今後の業界再編を加速させそうだ。余談だが、大手プラットフォーマーが参入している分野は、EV、ヘルスケア、そしてゲームだ。それだけ有望な市場なのだ。また、今年はアジア競技大会で、eスポーツが初のメダル種目となることが決まっている。ゲーム株は今年大きなブームが来る可能性がある。

次は教育分野だ。日本の人口減少、それを補うための労働生産性の上昇の必要性などの議論が盛んに聞かれるが、結局は必ず「教育分野」の重要性に辿り着く。岸田政権も「教育未来創造会議」を設置し、リカレント教育やデジタルなどの成長分野の人材育成などについて議論している。これも骨太方針に盛り込まれる予定だ。経産省が2018年にDXレポートを公表したが、その中で「2025年の崖」というキーワードを出した。その中の1つにIT人材不足が43万人まで拡大し、日本は年間で12兆円の経済損失となる可能性を警告した。岸田政権は、デジタル田園都市構想において5年間で230万人のデジタル人材の育成を掲げている。こうした中で、教育とテクノロジーによるエドテック関連が注目されている。コロナの影響もあり、世界的にもエドテックは注目分野であり、2025年には35兆円を超える市場(下図)となる見通しだ。
しかしながら、ここ最近はエドテック関連の企業の株価は大きく下落している。(下図)今年の骨太方針で政府から具体的なエドテックを活用した社会が提示されるのに合わせて再び評価される可能性は高く、チェックしても面白いと思われる。

(エドテック市場規模)

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(エドテック銘柄)

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最後はレベニュー。2021年のマーケットでは、20年と大きな違いが生じた。それをよく示すのが、この下のグラフだ。フィスカー、ニコラ、カヌー、ローズタウン・モーターズという新興の電気自動車メーカーの株価の騰落率だ。20年は大きく上昇したが、21年はその大半が大きく低迷している。これは、20年の市場では将来に夢があるEV関連銘柄はストーリーだけで上昇した。これらの企業は、もちろん全て赤字企業だが、カヌーなどは1台の車も生産していない。こうした、将来性はあるものの、売上すらない企業の株価が調整されたのが、2021年の市場の特徴だ。スタートアップは赤字企業であることは普通だが、まだ売上目途もかなり先で、黒字化も相当に先になるという企業に対して、21年の市場は厳しい評価をしたのである。すなわち、市場は健全化が進行したのだ。米国株は、バブルとは程遠い状況にあると考える。

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今年のマーケットでは、これらの健全化が進んだ銘柄について、具体的な収入や収益に結び付く動きが出てくると、急速に買い戻される可能性があるだろう。今年は、マーケットが、レベニューに対して良くも悪くも敏感になっている点に注目して、銘柄選びに役立てるといいだろう。


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