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来週の相場見通し(9/6~9/10)

 今週は株式市場にとっては衝撃の展開となった。週明け27,700円台でスタートした日経平均は、火曜日に月末を迎えたが、ここで昨年9月から継続していた月末安アノマリーを打ち砕いて、2万8千円台を回復した。日本株は8月末の株価と年末の株価を比較すると、2010年以降の11回のケースで9回上昇しており、秋から年末にかけてもともと強い傾向があるが、その8月末に月末安アノマリーの呪縛から脱したことは、心理的にも意味があるだろう。そこからは、政局が一気に動いていく。総裁選に出馬宣言をしている岸田氏が、実質的に「二階幹事長切り」となる「党役員は1期1年、連続で3期まで」という公約をぶちかました。これで、岸田氏に対する評価は上昇し、世論の流れが岸田氏に傾きそうな気配が出た。そして毎日新聞が、菅総理が自民党総裁選の前に衆院を解散し、総裁選は先送りする方針を固めるとの報道を出した。これは、かなり衝撃的なもので、市場でも「総裁選の日程が決定した今更、衆院解散なんかあり得るのか?」と驚ろかされた。しかし、菅総理自身が、会見で「衆院解散ができる状況ではない。総裁選を先送りする気は全くない」と明言し、この報道を打ち消した。ただ、来週の9/6にも党役員の人事を変えるとのことだった。これについても、市場では「総裁選が1カ月以内に行われるのに、人事なんて代えられるのか?受ける人はいるのか?」と疑問符だらけの展開が継続していた。しかし、株式市場は、こんな出鱈目な状態では菅総理は自民党総裁選で勝てないとの思惑、とりあえず二階幹事長は退くとの期待感から堅調な展開が継続していた。そして迎えた金曜日に、11時ころから株式市場がおかしな上昇となり、その後に「菅総理が自民党総裁選に不出馬を決めた」との報道が出ると、一気に2万9千円を回復して爆騰する展開になった。政局の1週間であったが、コロナ禍で総理が交代する事態に、株高で沸くというのは、なんとも株式市場は残酷で正直だと感じさせるものだ。菅総理が総裁選不出馬となれば、現閣僚からも総裁選出馬が可能になる。現在、正式に出馬を表明しているのは岸田氏だけだが、高市早苗氏も推薦人の20票は獲得できるだろう。そして河野太郎氏も出馬を固めそうだ。野田聖子氏も出馬を決めたようだ。石破氏は。菅総理を支持していたが、菅総理の不出馬で状況が変わったことから、現在は熟考していることだろう。現段階でも、これだけの候補者が登場する乱戦となる。これは、面白いと言わざるを得ない。自民党総裁は、色々な歴史を作ってきた。熾烈な戦いとして語られるのは、1956年12月の総裁選だ。鳩山一郎首相が後継指名をしないまま、総裁選に突入し、本命の岸信介と石井運輸相と石橋湛山が組んで対抗した結果、なんと「7票差」という僅差で石橋湛山が勝利した。名言を残したのは1978年の福田首相と大平幹事長の戦いで、敗れた福田首相は「天の声にも、たまに変な声がある」と名言を残した。記憶に新しいところでは、2001年の小泉純一郎氏が橋本首相に圧勝した総裁選だ。「自民党をぶっ潰す」と叫び、泡沫候補から一気に勝利に突き進んだ。こうした長い歴史のある自民党総裁選だが、これまで党員投票で勝利して、本選で負けてしまった候補者は1人しかいない。それは石破茂氏である。それだけ、党員投票は重要であり、今後の展開が注目される。コロナのために地方遊説は行われない。告示日である17日に演説会と共同記者会見が行われ、9/23~9/26に政策討論会が中継される。かなり楽しみだ。

日経平均株価は、ここまで一気に上昇してきたので、上値が重くなる可能性はあるものの、まだこの相場は始まったばかりであり、一気に3万円台を回復する展開も想定される。日経平均株価は、2万9千円を回復したとはいえ、まだ年初来で6%程度しか上昇していない。欧米株は15%~20%上昇しており、たとえば日経平均が年初来で欧米並みの17%上昇となると、3万2千円である。しかも日経平均の予想PERはまだ13.5倍程度と割安である。それだけ日本企業の業績が強いということだが、これが1倍上昇するだけで、日経平均は3万1千円を回復する。バリュエーションの切り上がりだけで、ここまで簡単に上がるのだ。来週からは、総裁選の候補者たちから、どんどん目指すべき日本の未来やコロナ対策が発信されるだろう。いずれも、明るいものであり、PERを1倍程度押し上げるには十分である気がする。スピード調整はあり得るが、押し目はかなり浅いと思われるため、今は高値掴みになるよりも、買えないままどんどん水準が上がってしまいやすい局面と思われる。

金曜日は日経平均が爆騰する一方で、マザーズは下落した点は面白い。こういう展開になると、やはり大きなフローが動き始めるため、大型株が強いのだろう。半導体関連は総じて堅調だった。レーザーテックは連日の高値更新である。東京応化工業も5%の上昇だ。

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機械も軒並み堅調だった。コマツは特にアークキャピタルのキャシー・ウッド氏が連日購入しているとの報道で、最近は特に堅調だ。ハイテクの女王と呼ばれるウッド氏がコマツを買っているのだ。コマツは最先端テクノロジー企業であり、それを既に実践している強みがある。

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週末の米国雇用統計では、非農業部門の雇用者数が23.5万人と予想の75万人を大きく下回る結果となった。前月の雇用者数は上方修正されて105万人となった。すなわち、前月から今月で雇用の伸びは5分の1になってしまった。これでは、FRBはテーパリングの判断をできない。しかし、これだけ数字が大きくぶれると、市場では逆に単月の数字は無意味として切り捨てられる。従って、米金利などは指標の発表後に低下したが、すぐに上昇に転じるなど妙な動きをしている。平均時給は予想の+0.3%に対して、+0.6%に上昇したが、これは賃金インフレの高まりではない。低賃金の雇用者が職につけないと、このような動きになるのだ。典型的なのは昨年の4月、この時は非農業部門の雇用者数は▲2千万人となった。この時の平均賃金の前月比は+4.6%!である。従って、あまり重要視しなくていいだろう。


それにしても、 米中の経済指標が減速している点は気がかりだ。ミシガン大学消費者マインドに続き、8月のカンファレンスボード消費者信頼感指数も予想を大きく下回った。中国の非製造業PMIは節目の50を割り込み景況感の一段の悪化を示した。米中ともに大きく懸念される状況でないものの、9月に公表される経済指標も大きく下振れるようだと要注意だ。

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バイデン大統領の支持率が低下している(下図)。アフガニスタンから米軍は撤退を完了したものの、ISによるカブール空港へのテロ攻撃により米兵13名が犠牲になったことで、米国内では共和党はもちろんのこと、民主党からも批判が相次いでいる。バイデン政権の早急なアフガン撤退は「世紀の大失策」とも言われており、今後のバイデン政権の運営に大きなマイナス要因となる。

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さて、来週はどういう展開だろうか?マーケットでは流石にスピード調整から日経平均の上値は重くなるとの見方と、一気に3万円を超えるという見方と分かれるだろう。しかし、重要なことはこの総裁選によるお祭り騒ぎはまだ開始したばかりということ。そして、こういう厳しい自民党総裁選を勝ち抜いた新総裁のもとでの衆院解散では、野党の政権交代実現リスクは低下することだ。すなわち、日本株は来週がどうこうよりも、年末にかけて上昇する可能性が高くなったということだ。昨年の菅政権の誕生の際も、日本株は欧米株とデカップリングして上昇した。昨年の11月は単月で海外投資家は3兆円超も日本株を買い越した。つまり、高値を掴むリスクより、買い遅れるリスクのほうが高いと思われる。もちろん、9月は米国株が冴えない月であり、債務上限問題等もあり、米国株の調整局面で日本株が連安になるリスクは常にあるが、今は日本株は強気でいいと考える。来週のレンジは2万9千円から3万3百円を予想する。












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