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新世紀の寺子屋 第18回

今回のテーマは政治です。政治というと、なんか難しそうな感じがするけど、本当はシンプルです。政治は、「今日より明日をよくする」ために、皆が守るべきルールや仕組みを作ることです。社内政治って言うと、なんか嫌らしい響きのある言葉に聞こえますが、政治という言葉は本来は悪い意味ではないですよ。

さて、誰が政治をするのか?生徒さんに質問したら、「政治家!」と答えてくれました。政治家はその名の通り、政治を職業にしている人たちですね。でも、政治は政治家だけのものではありません。下の図のように、あらゆる人々が関与しているのです。もちろん、日本においては主役は国民です。

学校にも政治はありますよ。クラスを良くするために、これまでなかったルールを提案することは政治活動です。提案だけでも大事ですが、それが皆に受け入れられて、クラスのルールになれば政治的な成果を出したことになります。

政治家の仕事は、法律を作ることです。日本では昨年は通常国会と臨時国会をあわせて約170件弱の法案が提出され、その内の86件が成立しました。どのくらいの法律が成立するかは、その時々の政権のパワーで変化します。例えば平成26年度は200件以上が提案され、130件弱の法案が成立しました。
ちなみに、米国の議員はこのことをよく理解しています。年間に提出される法案は下院で多ければ1万件を超え、上院でも数千件が提出されます。どの政治家も法律をどんどん提出するのです。バイデン大統領が米国大統領に就任した際によく言われていた悪口は、バイデン氏は数十年も政治家をやっているのに、「バイデン法」のような自分が成立させた重要法案がないことでした。政治家は「法を作ること」で評価されるのです。

法律が重要なのは、日本が法で国を治める「法治国家」だからです。世界は、そういう法治国家ばかりではありません。法律の上に独裁者が君臨している国もあれば、法律よりも宗教(神)が重視される国々もあります。例えば厳格なイスラームの国では、窃盗をすると手首を切り落とされたり、同性愛が見つかると死刑になる事例が今でもあることを話しました。生徒さんは、目を丸くして驚いていました。我々の常識では、厳しすぎるように感じるわけですが、敬虔なイスラム教徒にとっては、神が定めたルールであるので、厳し過ぎるとか、甘いとかの問題ではないのです。

ところで、クラスで何かを決めるときは、全員で話し合いをしますよね。それが理想です。民主主義の起源は、古代ギリシャですが、やはり全員の話し合いが重視されました。しかし、この「全員」が曲者です。女性、外国人、奴隷などは含まれません。人類の歴史では、女性が参政権を持つようになったのは近代のことです。世界で初めて公式に女性の参政権が認められたのは、1893年のニュージーランドです。日本では25歳以上の男子かつ、たくさん税金を払っているお金持ちしか選挙権はありませんでした。その当時は人口の1%しか選挙権がなかったと言われています。それが第二次世界大戦に負けて、米国が日本を支配するようになり、女性の参政権が認められるようになったのです。それから100年も経過していません。7月7日に東京都知事選挙が実施されますが、有力候補は小池百合子現職と、蓮舫氏です。有力候補のお二人が女性なのです。時代は大きく進化したものですね。

クラスの学級委員長に2人が立候補した場合に、どのように決めるのかを生徒さんに質問したところ、各立候補者がスピーチを行うとのことです。「自分が学級委員長になったら、どういうクラスにしたいのか」を語るようです。びっくりしました。これは立派な選挙です。政治家も自分が当選した時に実現したい政治を語ります。これを公約と言いますね。

次に政治家は大きくは保守とリベラルに分類されることを説明しました。実は政治家だけでなく、我々も保守的な傾向のある人間か、リベラル的な価値観を持つ人間かに分かれます。
ところで保守とは何でしょうか?保守とは、人間は完璧ではない。よく間違いを起こす。だからこそ、長い年月を経ても、なお残っている伝統には価値があるはずだという考え方です。一方のリベラルとは、人間は学び成長し、進化することを信じます。ゆえに社会の変化に合わせて、制度や文化をどんどん変化すべきという価値観です。

それでは、保守・リベラルのチェックをしてみましょう。保守・リベラルのどちらかが正しいとか間違っているということではありません。立場が違うというだけです。

上の質問では、生徒さんの大半がお正月などの文化は残したいと回答してくれました。意外に保守でした。しかし、問題2については、どっちでも良いとの回答が多かったです。そうです。保守的な考え方の人も、リベラルな考え方の人も、譲れない部分とあまり関心のない項目があるということです。

問題3も極端ですが、保守の考え方では、困っている人を助けるのは否定しないが、全員に強制すべきではないと考える人が多いでしょう。保守は個人の自由を尊重します。一方でリベラルでは、困っている人の痛みを社会で共有することを重視します。問題4では、保守の人は決められた約束事は、必ず守りたいと考えます。リベラルの人は、もう少し柔軟にケースバイケースとなることが多いようです。

このような保守・リベラルのチェックの問題を続けました。生徒さんには、それを選んだ理由も聞きましたが、いろいろと面白い回答もありました。

小学生には、保守とリベラルは少し難しいかもしれませんが、何となく理解してくれたようでした。小学生はまだ柔軟なので、問題ごとに保守とリベラルが変化しているようでした。保守もリベラルもそれほど色合いが強くないと「中道」と言われるグループとなります。今後、成長していくと、その環境によって極右的な傾向、極左的な考え方になる生徒さんもいるかもしれませんが、それは個人の思想なので自由です。第18回は、こんな授業を行いました。

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