見出し画像

来週の相場見通し(8/26~8/30)

1.はじめに

今週は簡易版です。米国だけ取り上げる。今週は注目されていたジャクソンホール会合を無事に通過した。9月から利下げサイクルに入ること、FRBが一段の労働市場の悪化を望んでいないことを確認しただけで、特段に目新しいことはなかった。しかし、それだけで今の米国株式市場には十分であり、株式市場は今週も大きく上昇して引けた。
市場を大きく俯瞰するなら、株式市場は7月後半から8月の健全な調整局面を経て、再び上昇トレンドに回帰している。いったんは落ち込んでいたラッセル2000のような小型株も再び上昇しており、米国経済の景気後退懸念というテーマから離れ、純粋に「利下げモード」のセクターローテーションモードに移行している。ここに今後は大統領選選挙に絡む思惑と半導体関連の回復が加わり、米国株式市場は幅広く上昇基調となりそうだ。米国債券市場はレンジ内で安定した動きだ。ジャクソンホール会合後も、米国長期金利は僅かに低下したに過ぎない。既に市場の利下げ織り込みは進んでおり、ソフトランディング下におけるFRBの利下げサイクルでは追加材料にならない。景気後退懸念が再び台頭して緊急利下げを織り込むような展開にならないと、当面は米国債券市場に大きな動きは見られないだろう。但し、米国が利下げサイクルに入ることで、世界の中央銀行は一段と利下げを進めやすくなっている。ECBもカナダも英国も、世界の中央銀行は追加利下げに踏み込んでいくだろう。こうした世界的な金融緩和も、結局はグローバルな金余りから、米国株式市場にはサポート要因になる。為替市場では、広範囲なドル安が進行している。足元の為替市場の動きは「ドル安」であり、「円高」が主因ではない。従ってドル円では円高が進行しやすいものの、クロス円では円高が進みにくいため、結果としてドル円の動きも8月前半のような無秩序な円高ドル安にはならない。まだ、為替市場の値動きは激しいものの、ドル安も相当に進んでいることや、世界の中央銀行が追加利下げを一段と進めることから、一方的なドル安基調にはなりにくく、為替市場も徐々に安定する見込みだ。新興国もドル安とFRBの利下げサイクル入りの恩恵を受けることから、世界的に市場フレンドリーな環境となりそうである。来週はエヌビディアの決算を迎えるが、私は改めて同社の好調さと強さを確認する決算になると考えている。この夏は色々と乱高下したが、終わってみたらサマーラリーになっていそうだ。

2.米国の各種市場

(債券市場)

ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演を受けた後の、市場の利下げ織り込みは、下の通りだ。年末までに4回の利下げを完全に織り込んでいる。9月の初回利下げは25bpを100%織り込んでおり、50bp利下げが3割ほど見込まれている。再来週の雇用統計の結果次第では、初回50bp利下げが織り込まれる可能性は十分あるだろう。ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の「必要に応じて何でもやる」という姿勢は、50bpの利下げがあり得ることを示したものだ。

(市場の利下げ織り込み)

とはいえ、米国の金利は既に先行きの利下げを相当に織り込んでおり、当面は膠着感を強めそうだ。下のチャートは10年金利の推移だ。これまでは、FF金利の利下げの織り込みを基準に米金利の居所を考える必要があった。つまり、下のチャートで言えば青い矢印だ。FF金利の水準、利下げを織り込む2年金利の水準、5年金利の水準から10年金利の居所を模索してきたわけだ。

しかし、米10年金利が3.8%近辺まで低下してくると、今度は中立金利をベースに考えていく必要が出てくる。FRBの短期のロンガーランは、今後3%程度まで上昇していくと仮定すると、上のチャートの赤い線が3%ラインだ。FF金利がこの赤いラインへ向けて下がっていくなかで、2年金利とと10年金利の逆イールドがこの間のどこかで恒常的に解消する。例えば、FF金利が3%、2年金利が3.2%、長期金利が3.5%とかになるわけだ。景気後退が発生しないことを前提とすれば、どこかで順イールドが復活するはずだ。私は、2年金利と10年金利は3.5%近辺では順イールドになると考えているが、そうなると米国の長期金利はここから先は、大きくは低下しないということになる。つまり、米金利はハードランディングシナリオにならない限りは、膠着感を強めながら、ゆっくりと金利が低下するのがメインシナリオだ。セカンドシナリオは、長期金利が3%を割れるような景気後退シナリオではなく、私は長期金利が再び4%台に戻るようなインフレ再加速を想定している。
債券市場の変動率を示すMOVE指数は、一段と低下していくだろう。但し、米国大統領選において、トリプルレッドになったり、トリプルブルーになるような状況になれば、再び市場のボラティリティは急上昇することは間違いない。

(MOVE指数)

(株式市場)

米国株式市場は堅調だ。下のチャートは、年初からの日経平均とS&P500のパフォーマンスを比較したものだ。今年は年初から日経平均株価が急騰し、3月頃には米国株よりも10%も上回るような状況であった。私は、日本株は徐々に伸び悩み、米国株が追い上げる結果、年末までには日米株価のパフォーマンスは逆転すると見込んできたが、8月の調整局面を経て、既に米国株のパフォーマンスは、日本株を追い越した。

今年は、自民党総裁選と米国大統領選があるため、再び日本株が米国株を逆転する可能性もあるが、私はこのまま米国株優位な状態で年末を迎えると想定している。いずれにしても、株式市場にとっては昨年に続いて良い年となりそうだ。(油断は禁物ですが・・)

さて、米国株式市場は、景気後退モードを離れて、純粋な利下げサイクルモードに移行している。まずラッセル2000のチャートは下の通りであり、利下げの恩恵を受けやすい中小型株が力強く反発している。これは明るい材料だ。

(ラッセル2000)

ダウ輸送株も景気後退に敏感であるが、下のチャートのように復活している。

(ダウ輸送株20)

中小金融機関も景気後退時には影響を受けるが、下のチャートのように巻き戻している。

(KBW銀行指数)

IPO銘柄も景気後退時には脆弱なはずだが、下のチャートのようにV字回復していることが分かる。

(ルネサンスIPO)

このように米国株式市場から、景気後退懸念は一掃された状況が確認できるだろう。一方でマグニフィセント7は冴えない。戻してはいるものの、市場を牽引するパワーは見えない。

(マグニフィセント7指数)

フィラデルフィア半導体指数も同様に完全復活には至っていない。

(SOX指数)

しかし、SOX指数については、楽観的に捉えている。下のチャートはエヌビディアである、来週の最大の注目はエヌビディアの決算であるが、決算で好調さが再確認されれば、史上最高値を更新するだろう。ブラックウエルの開発遅延報道なので、過剰に決算が不安視されたことで良いガス抜きになった。最近のTSMCの7月の月次収益の好調さ、スーパーマイクロの25年1Qの売上高ガイダンスの強さや、ここまでのHBM関連の需要の強さ、ハイパースケーラーのデータセンター設備投資の旺盛さを鑑みれば、エヌビディアの決算が弱いとは思えない。むしろ、エヌビディアがGB200などのより高価な製品に生産能力を集中している状況が示されると、ブラックウエルの遅延の話は吹っ飛び、爆上げする可能性すらあるだろう。
金利低下モードにおける幅広い物色に加えて、遅れていた半導体関連が回復してくると、米国株はまた一段と加速すると思われる。

(エヌビディア株価)


今週のS&P500のベスト銘柄、ワースト銘柄と年初来のランキングを掲載しておこう。

(今週のベスト銘柄 S&P500)


(今週のワースト銘柄 S&P500)
(S&P500 年初来ベスト10)


(S&P500 年初来ワースト)

(為替市場)

為替市場では広範囲なドル安が巻き起こっている。8月のドル円相場の急激な円高進行のイメージが強くて、なんとなく円高基調が継続しているように見えるが、そうではない。既に「円高」から広範囲な「ドル安」に転換している。例えばAUD円を見てほしい。7月後半から8月前半の局面は強烈な円高であったが、足元では膠着している。ドル安基調のために、ドル円では円高となるものの、AUD対ドルではAUD高となるため、クロス円は大きな値動きが出ないのだ。

(AUD円推移)

この広範囲なドル安は、新興国に恩恵を与える。下のチャートはドルインデックスがオレンジ色、青色が新興国スプレッドを示している。このところ、新興国スプレッドは緩やかな拡大基調にあったが、ドル安によりスプレッドの拡大は既に止まっている。地政学リスクは色々あるものの、経済の観点ではFRBの利下げ、ドル安は新興国に恩恵となる。

但し、このまま一方向にドル安が進むとは思えない。先に債券市場のパートで記載したように、米金利が大きく低下しないとすれば、ドル安も限界があるだろう。下のチャートのように、ドル安はかなり進んでおり、一段のドル安が進むのは簡単ではないだろう。

(DXY 推移)

さて、米国では民主党大会が終わった。テレビをずっと流して聞いていたが、かなり盛り上がっていた。これでひとまず、カマラ・ハリス陣営に吹いていたハネムーン期間の追い風は終わる。民主党の経済政策も色々と出てきた。9月以降の支持率の状況が真の大統領選の姿であり、ここまでは参考にならない。自民党総裁選は小泉進次郎氏が先頭を走る展開になりそうだ。しかし、ここから色々なスキャンダルや悪材料も出てくるのが選挙だ。引き続き、ウオッチしていきたい。今週は以上です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?