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唐突に言われた「もう会わない」の言葉

「もう会わない」と言われた。
「もう会えない」ではなかった。

バイト終わりの夜だった。
貰いもののチョコレートを食べながら、大学の敷地内を歩いていた。明かりのついた研究室を見て、こんな時間までよくやってるなーと思いながら歩いているときだった。

前方から歩いてくる人影。
見慣れた人だ。
向こうも私を見てあっ、と声を出す。
片思いの彼だった。

「何してるの?」
「今バイト終わったとこ」

「そういえば、この前の期末どうだった?」
「簡単だったよね」

他愛ない会話をしていた、はずだった。

「もう会わないから」


どんな話のつながりだったかは覚えてない。
唐突にそう言われて、思考が停止した。
でも、なんとか頭を回転させて、私は咄嗟に「何で!?」と聞いた。
会わないなんて嫌だ。会う機会が無いのは分かってる。それでも、理由が無くても会える関係になりたかった。

何で、と聞いたことに対する彼の回答は「来年は授業で会うことがないから」だそうで、やっぱり私は彼にとって会っても会わなくてもいい存在なんだと確信した。

一年前の今日、久しぶりに会い、話して、君のことをたくさん知れたことを私は覚えている。

もうあの日々は戻ってこない。
わかっているけど辛い。

「会えない」のではなく「会わない」のなら、私も、「君にはもう会わない」と言い切ってしまっていいのだろうか。

そんなこと、言えるはずもないけど。

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