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嘘をついていた。嘘の中でのびのび生きる娘を見ていたかった。

皆さまは美容院どうされているのだろう…?

こちらは生え際が黒く、いわゆるプリン頭になってしまっている。
前髪は流石に我慢ならず、自分で切った。
暑いので後ろで一つに結んでいるが、集めた髪の束が太くてびっくりした。


美容院からこの間、直筆のメッセージ入りの葉書をいただいた。
要約すると再開したし対策はばっちりするので是非ともご来店ください、という内容。


本当はもう少し自粛していようかな、と思ったけれど。
だんだん暑くなってきたこの頃を思うといったん髪の毛を梳いてしまわねば、とも思う。


美容院に行く

そう思うとほんの少し気持ちが重い。

私は嘘をついている。それを訂正しなければ。と最近はずっと思っているから。


私はここ数年、ずっと同じ人に髪の毛を任せている。
担当の美容師さんは小さい頃から一緒に遊んだ、近所のお姉ちゃんである。仮にA子さん。
A子さんは気安い態度すぎず、気を遣いすぎずな空気でとても助かる。
無理に会話を繋げなくても良いと思わせてくれる人で、店でも大変人気がある。


だがしかしそれが変わったのはここ最近のこと。
娘が1歳を過ぎた頃、私が嘘をついてしまったために微妙に居心地が悪い(完全なる自己責任)


結婚を機に引っ越したA子さんだが、私に娘がいて、その頃にもう1歳になることも知ってくれていた。

だから、「そろそろ歩く?」と聞いてくれた。

私は美容院のおしゃれな椅子に座って、一瞬だけ時が止まったような気がしていた。
たった数秒で、いろんなことを考えた。
その頃もう娘には脳に疾患があることは分かっていた。一生歩けないかもしれないこと、一生話せないかもしれないことも。
鏡に映ったA子さんから、目をそらした。
雑誌に気をとられたふりをして、「まだですね~」とだけしか言えなかった。


最初に言えなかったので、去年の12月に行った時もやっぱり言えないままになった。
「おしゃべりする?」の質問も、「まだですね~」としか言えず。
この時には、娘が歩いていて当然、という空気だったのも口を重くさせた。

最初に言っておけばよかったなあ。

後悔しても遅い。
たまたまお隣に座った年若いパパが、おしゃべり上手な子どもの話をしているのが聞こえてきた。
偶然にも娘と同じ年の子がいるらしかった。


おしゃべりしないことを気にしている、そう気遣ってくれたのかA子さんは「おしゃべりできるようになる日が待ち遠しいね」と会話を結んでくれた。

カラーの待ち時間。
私は罪悪感とともにほんのりと嬉しくなってしまっていた。

嘘をついてしまったのは悪いことだが
そのおかげで嘘の世界では娘がよちよち歩きするのだ。
このまま嘘をつき続ければ、おしゃべりもするようになる。

次だ。と思った。
次に来た時にはきちんと訂正しよう。嘘をついたことを詫びよう。

それまでは
嘘の世界でよちよち歩いて私をママと呼ぶ娘を、見つめていたい。

そしてその”次”が近づいてきている今日この頃。ちょっとばかり憂鬱だ。
嘘なんてつかなきゃよかった。

いただいたサポートは、車で往復4時間弱のところにある娘の病院に通う際のガソリン代や駐車場代に使わせていただきたく思います