見出し画像

「即上げ」がタブー視されている理由

TwitterなどのSNSにおいて、試運転列車や臨時列車などのネタ列車を撮影後すぐアップロードする行為、いわゆる「即上げ」は非難の対象とされてきました。

撮り鉄界隈ではもはや常識となっている「即上げ禁止」ですが、参入されたばかりの方々を中心に理解が追いついていないように感じています。そこで、即上げすることによって何が起きるのか、即上げ禁止がもたらす効果についてお話していきます。

即上げは他人事ではない

当たり前ですが、鉄道は決まったダイヤに沿って走るものです。
言い換えれば、走行位置と時刻さえ分かれば列車がこの後どのような経路を辿っていくのかが容易に想像できてしまいます。
不定期列車や臨時列車の類で即上げを行うと、その先の区間で同業者が多数集まり予期せぬトラブルを誘発することになります。
余程のロングラン列車でもない限り、即上げによって集まった同業者は通過直前に焦って到着するケースが大半です。通過直前に構図を組むことは直前乱入、一般的には直乱と呼ばれていますが、直乱行為こそが最もトラブルへと発展しやすい行為に他ならないのです。
事前に情報を入手し集まった方々は、遅くとも通過数十分前には現地に到着し、入念な交渉のもと最適な立ち位置・構図を組んで目的の列車が来るまでその体制を維持し待機しています。
ところが、通過直前になって同業者が押し寄せるとそれまでに組んだ体制が台無しになり、場合によっては直乱した人間が構図内に写り込んでしまうなどで目的の列車が撮影できなくなるといった事態になりかねません。
そうなると待っているのが罵声大会や暴力といった行為で、これらの行為がメディアによって取り上げられれば撮影地の封鎖といった最悪の事態に繋がる可能性があります。最悪の事態に繋がらなくとも、一度非常識な行動をしてしまえば当人への評価や印象は急落してしまい、今後の活動において「即上げをした人間」という不名誉なレッテルを貼られてしまう可能性が大いにあります。つまるところ、即上げは自らの首を絞めるも同然の行為に等しいのです。
即上げによって大問題へと発展した実例としては、今年3月末に新秋津駅で起きた罵声大会及び暴力行為が挙げられるでしょう。
当日、列車の始発駅である小金井駅や途中の小山駅などで即上げが行われた結果、その先の区間である武蔵野線内に撮り鉄が多数集結することとなり、最終的には新秋津駅で暴力・流血沙汰へと発展してしまいました。これらの様子はメディアで連日取り上げられ、世間を騒がせることとなりました。あの日現地にいた撮り鉄のうち、前日までに情報を仕入れていた方は全体の何割だったでしょうか。あくまでも感覚になりますが、少なくとも3割は即上げによって押し寄せた方だったのではないでしょうか。即上げの危険性と無責任さが大きく表面化した出来事だったように思います。

即上げ禁止によって守られる未来

こういった最悪の事態へと発展することを見かねて制定されたのが、他でもない「即上げ禁止」というルールです。
即上げを行わなければ、その先の区間に同業者が集中することを防ぐことができ無用なトラブルの抑止に繋がりますし、何より撮影地の保全にもなります。即上げ禁止は撮り鉄界隈における自浄作用なのです。
即上げをしたところで自分は撮れたし関係ない、という極めて自己中心的な考え方は危険です。即上げをして結果的にトラブルを誘発してしまえば猛烈な非難の対象になる上に、前述の通り撮影地の封鎖を招くなど撮り鉄全体に不利益をもたらすことになり、今後の活動にも大きく影響してきます。
別に即上げしても人なんて集まらないだろう、といった意見も見かけますが、TwitterというSNSの影響力・拡散力は莫大で、インプレッション数を見れば明らかですが、軽い気持ちで投稿したつもりのツイートが十数万PVにまで膨れ上がる可能性を孕んでいます。自分が思う以上に多くの人が投稿を見ているということを忘れてはなりません。
目的の列車が撮れたからと言って盲目的に即上げするのではなく、最低限の配慮を行うことが絶対条件であり、常識でもあるのです。
ただし一口に即上げ禁止とは言っても、数日に渡って運転される列車や施行後に返却回送がある列車など、列車の運行形態は千差万別であるため、投稿するタイミングについては臨機応変に変更することでより一層自浄作用としての効果を期待できることかと思います。
個人的な意見としては、1週間ほど時間を空けてから投稿するか、そもそも不特定多数に向けて投稿しないといった選択を推奨します。
(後者については、今回の記事を書くにあたって参考にさせて頂いたこちらの記事を見て頂くとより理解が深まるかと思います)
加えて、万が一即上げに当たるような投稿を見つけた際には、無闇矢鱈に引用RTで批判をするなどの不用意に拡散してしまうような行為はせずに、無視またはせめて不特定多数の目に触れない場所で批判するなど、「触らぬ神に祟りなし」的な対応がベストでしょう。即上げに関する出来事に触れる際には、「即上げ禁止」の本質的な意味を理解した上での行動が重要です。
(但し、このルールはあくまでも鉄道界隈の中で適用されるものに過ぎないため、このルール自体を知らない一般人に向かって突っかかるのは完全に筋違いです)

おわりに

撮り鉄界隈は初心者に厳しい界隈と思われがちですが、即上げ禁止こそ初心者が成長するための機会を守るルールでもあります。
撮り鉄という趣味を将来に渡って続けていきたいならば、即上げ禁止や現地での挨拶を始めとしたマナーを遵守した上で、当たり前ではありますが他人のことや未来のことを考えた行動をとることが賢明でしょう。

最後までお読み頂きありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?