私を評価する神様なんていない
「最近、(仕事とか)どう?」
そう聞かれたとき、私は「最近、前よりもすごく良い文章が書けるようになったんだよね」と答えている。
相手によっては(えっ、そこ?)という反応をいただいてしまう。きっと、何かしらのプロジェクトをローンチしたとか、組織や社会での立場が変わったとか、誰かとコラボレーションしたとか、ビジネスモデルを刷新したとか、そういう話をすべきなのだろう。これまで、ずっとそういう話をしてきた自分がいるのだし。
けれども、そうした社会的評価がたくさんあるからこそ、私は最近もうずっと「良い文章が書けるようになったんだよね」という「状態」の話をするようにしている。一種の自己暗示でもある。
これが、とてもいいのだ。
私は文章を書くという営みが楽しくて、それを最大値まで純化させていきたい。手段として書き始めた文章ではあったけれども、今はその一文字ひともじがただただ愛おしく、ふるえるような気持ちを与えてもらっている。生きる喜びそのものだ。
だから、何かしらのラッキーパンチで10億円稼げていたとしても、憧れの人と仕事出来たとしても、そのときに「最近、あまり良い文章が書けないんだよね」という状態だと、まったく幸せじゃないのだ。
大切にしたいのは「ポイント」か、「状態」か?
先日夫と、「ポイント」を目標にするのか「状態」を目標にするのか? ということについて、話していた。
頑張るためにポイントを設定するのは、ある種とてもわかりやすいし、第三者とも共有しやすい。
○○さんと仕事をしたい
○○という組織に所属したい
○○賞を受賞したい
……けれども、この○○がとつぜん消えて無くなってしまうこともあるし、○○が憧れられるだけのシロモノではなくなってしまうこともある。
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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。