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「新人力」という再生する武器


昨日、関わっているプロジェクトがお披露目となった。代表、杉浦さんの熱いnoteをぜひ読んで欲しい。


このサービスに関することは、また別途書きたいのだけれど……

今日は、少し裏側の話。このチームに入ってくれた、一人の女性について書いておきたい。



Inspire Highの運営会社である株式会社CINRAは、私が新卒で働いた会社でもある。辞めて5年も経つのだけれども、当時と変わらぬオフィスに何度か出勤するのはこそばかった。馴染みの顔ぶれに「あれ、出戻りですか〜」と言われつつ、飛び出した後にも出戻れる環境があることは、なかなかハッピーなことだ。

それに、過去の戦力でも関係なく呼びかけていく、という社長の姿勢は、純粋に嬉しい。


いざチーム編成をしていく上で、SNS担当者が必須になっていた。私はSNSは得意だけれども、東京には滅多にいないし、YouTubeなども守備範囲になってくるのでそこはちょっと不得意だ。誰か適任は……と探していたところ、「はなちゃんが良いじゃない!」と頭に浮かんだ。


はなちゃんのことを知ったのは、2018年のこのツイート。



私が毎年企画している #BuzzCamp南三陸 というクリエイター合宿があるのだけれど、その会場は南三陸。彼女は隣町である気仙沼出身だと書いてある。

その後、はなちゃんはクリエイティブスクールSHEでデザインや写真の技術を磨いていったらしく、私も何度かWeb上で彼女の成果物を目にしいていた。そこで、2019年の開催時にはぜひ参加してもらいたいな、と、突然ながらDMを送らせてもらった。

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(許可を得て掲載しております)


…という感じで、トントン拍子に参加決定。バリバリ活躍する同世代の中で最初は緊張していたはなちゃんだけど、故郷と対峙する彼女の姿勢はじわりと熱かった。

聞けば彼女は新卒時、大手航空会社の客室乗務員として日々国際線に添乗していたらしい。いわゆる花形の仕事ではあるけれど、体力的には本当にヘビーで、長く続ける人は少ない。そこで、数年前にずっと夢だったクリエイティブ業界で働きたいと決心し、まずは事務職に転職。土日はクリエイティブスクールに通う日々だったそう。

Buzzcampが終わってからも、参加していた別のメンバーからバナー制作を頼まれたりと、着々と実績も増やしていた。




そしていざ、クリエイティブ会社に転職活動! と張り切っていたものの、「29歳 / 既婚者 / 女性 / 業界未経験」というのは、なかなか厳しいものがあったらしい。

まず、会社側としては、新人として教育しなければいけない。けれど年齢的にも、子どもを産んですぐ産休に入るかもしれない。面接では「お子様のご予定は……?」と聞かれることもあったらしい。そうした面接の実態を聞き、開いた口が塞がらなかったが、それが今の現実なのだ。

ちなみに、これまで差別が激しかったアメリカでは、その反動もあり、面接時にそのようなことを聞くのは絶対にタブーとされている。


もちろん企業側が長く働いて欲しい気持ちはわかる。わかるけれども、既婚者でも男性だったら「お子様のご予定は……?」とは聞かれないかもしれない、と想像してしまう。

はなちゃんは本当にポテンシャルがあるし、貪欲だ。しかも、厳しいCAの世界で働いていたからこそ、「なんとなく」で流してしまうようなことがない(私はすごくある)。

そんな彼女が、もう転職ではなくフリーでやっていきます!と教えてくれたので、これはぜひCINRAの新事業をがっつり手伝って欲しい、とお願いしたところ二つ返事で参加してくれることに。


そうしてチームに参加。それがもう、凄かった。アウトプットのスピードの速さもあるけれど、日々「こんな楽しい仕事が出来るなんて!」「夢が叶って本当に嬉しい、でもまだまだ至らないからもっと頑張る!」とポジティブな空気を放ってくれる。そんな人がチームにいるということは、どれほど周囲にとっても良い効果をもたらしてくれるか。

(実際、私は8割リモートワークなので物理的な空気には触れられないのだけれど、チャットルームに流れる空気だけでも伝わるものはある)


そうだ、私たちが今当たり前のように働いているこの場所は、誰かにとっての夢なのだ。そんなことを客観視させられ、「よし、この仕事をもっと楽しもう!」と思わずにはいられなかった。スキルや経験ではない、圧倒的な風通しの良さをもたらしてくれる。


──


私はこうした力を「新人力」と呼んでいる。


ふと思い返せば、25歳で独立してフリーランスになった頃。ドキドキして退職ブログをえいっ……と公開するやいなや、驚くほど沢山の仕事の相談をいただいた。嬉しくて飛び跳ねた。自分が指名されたこと、自分に出来ることがあることが嬉しくて、どんなオファーにも目を輝かせ、毎日毎日生き甲斐を感じながら打ち合わせに臨んでいた。


25歳から3年間務めたTHE BAKE MAGAZINEの編集長業務も、自由にやらせてもらえる毎日が楽しくて仕方なかった。

読み返すと、本当に「ワクワク!楽しい!」みたいな気持ちが溢れ出ている(あと、めっちゃ若いな……)。

取材もたくさん受けたし、いっぱい登壇もした。フリーランス1年目だというのに。今思えば、周囲は私に、スキルやノウハウと共に、新人力を求めてくれていたのかもしれない。人のワクワクは、組織や社会のエンジンだ。


しかし同時に、新人力は1、2年くらいで穏やかに消えていく。


新人力が消えた先にある道は、大きく3つあるだろう。「慣れ」「変化」「成熟」だ。


慣れというのは想像しやすいと思う。単純に職場に慣れ、仕事に慣れ、挑むというよりも「こなす」感じになってくる。それはなだらかな下り坂でもあるので、割と危険だ。


ゆえに、変化している人や組織のほうがずっといい。ワクワクを吹き込んでくれる「新人力」を毎年迎え入れたり、環境を変えてみたり、付き合う会社を変えてみたり。氷川きよしの変化は美しかった。私がニューヨークに移住したことで得られるワクワクも、大きな変化だ。それにたとえば、前澤さんとか、堀江さんとか、なんと日々変化に満ちたダイナミックな人生なんだろうと思わされる。


けれども、


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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。