家の中、ほぼぜんぶ #ルームツアー
見出し画像

家の中、ほぼぜんぶ #ルームツアー



世界の中でどこよりも好きな場所は、やっぱり家である。


ついこの間まで他人の空間だったというのに、そこに住むと決めた日から、巣作りする親鳥のごとくせっせと好むものだけを運んでいく。並べたり、悩んだりしながら、自分そのものを映していくことが許されるような場所は、世界のどこを探しても家しかない。


子どもの頃から、自分に割り当てられた勉強机側の壁を隙間なく飾るのが好きだった。はじめて一人暮らしをしたときは、胡麻や片栗粉をいれる瓶すら選べることに小躍りした。直近の数年は仕事が忙しすぎて家の中はゴミ溜め同然だったけれども、異国で暮らし、自分が美しいと思うものを美しいと感じることをようやく肯定できるようになった……というのは先日コラムで書いたばかり


その蓋を開けてしまった今、すっかり家というものの魅力に取り憑かれている。

家は飽きない。育てられるし、時刻によってまるで面構えを変えてくれるのだから、飽きようもない。




たとえば、リビングは朝がいい。

画像6

思い入れのある原稿であれば、終わりが見える頃にはだいたい朝の光が入ってくる。だから夜と朝のグラデーションは、「あぁ、頑張ったぞ、ちゃんと生まれたぞ」という達成感の証でもある。眠たいのに、まぶしいやら、興奮しているやらでちっとも眠れないのだけど、とても嬉しい。

画像8

もちろん、寝室からのそのそ出てきて、すっかり日の登ったリビングでぼーっと1日のことを考える朝もいい。


画像1

もし昨日の自分がしっかり片付けを終えていれば、朝のリビングは気持ちをしゃんとさせてくれる。もし散らかっていれば、昨日の自分をけなしながらそこかしこに落ちているものを片付けていく。


──

風呂場は、どうせならば昼下がりがいいい。

画像7

我が風呂場に常備してある網のようなものは、稀にこうなる。


画像2


完全な読書空間、これほどギルティな状況があるだろうか。

そういえば、日本の風呂には蓋があるが、アメリカの風呂には蓋がない。風呂を次の人のために溜めておくという文化がないので、いらないのである。蓋がないので、何か置くとなるとこのバスブックスタンドなるものの出番になる。(もちろん追い焚き機能もなければ、洗い場もないし、だいたいユニットバスなので、誰かが入浴中にトイレに行きたいときはすごく困る)


白昼堂々お湯につかりながら、とくべつ必要でもない本を読む。冷めていくお湯の中にときどき熱湯を注ぎながら、最高だ、追い焚き機能があればもっと最高だ、としみじみしているうちに本がふやける。



──


寝室は、夕方がいい。

画像3


暗くなってきたからといって、気安く電気をつけてはいけない。友人の呟きを見てから、そう思うようになった。

休日家でだらだら過ごして気づかないうちに暗くなってて、電気つけないと何も見えなくなる一歩手前の暗さすごく好き、途端に休日が終わる感じがして切ない



画像4


「ベッド本体はなんでもいい。けど、マットレスとシーツだけはこだわれ。生活が変わるぞ」……ということもツイッターで知らない人から学んだ。学びを活かし、マットレスはCasper、シーツはフレンチリネンの長く使えるものを使っているのだが、これがもう誰からも星5である。

Casperはすごい。コンドミニアムに新しい住人が来るたび、荷物置き場には必ずCasperの箱が置かれている。人に家を貸したときもきまって「人生で最高の眠りだった」というレビューをされるくらいに、人類を虜にしている。それでいてお値段も家計に優しいから、どんどんCasper人口が増え、どんどん人類が駄目になってしまう。

そんなCasperは最近「D2Cユニコーン初の上場」を成し遂げたらしい。上場の勢いそのまま、日本市場も攻めてくれないかと切に願っている。実家にも仕入れたい。


画像5



なぜ寝室に急須があるのか。

この続きをみるには

この続き: 4,644文字 / 画像20枚
この記事が含まれているマガジンを購読する
月に3、4本お届け予定です。購読していただくと、過去のコラム(11月2日現在だと、44本)もすべて読めるようになっています。

視点

月額500円

暮らしや営みの中で零れ落ちそうなことを掬い上げたり、心や脳に浮かんだ閃きを忘れないよう書き留めたりする、思考や思想の直売所のようなものです。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
塩谷舞(mai shiotani)

初の著書『ここじゃない世界に行きたかった』が文藝春秋から発売中です。noteやmilieuには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。

インターネットの中で出会えるってすごい確率ですよね
1988年大阪・千里生まれ。京都市立芸術大学卒業。ニューヨーク、ニュージャージを拠点に活動。大学時代にSHAKE ART!を創刊。会社員を経て、2015年に独立。milieu、noteマガジン『視点』にてエッセイを更新中。著書『ここじゃない世界に行きたかった』が文藝春秋より発売