「化粧したほうの私」だけが存在を許される世界で
随分と化粧をしていない。
正しくは、週に1度スーパーに行くときにはアイブロウとアイラインだけ引くのだけれども、あとはマスクで隠れるのでまぁ意味がない。マスクがすぐに汚れてしまうので、ファンデーションもはたかなくなった。
これまで、自分の脳裏に存在している自分の顔は、いつも「化粧したほうの私」だった。人と会うときの顔こそが、自分。グーグルの検索窓に自分の名前をほおりこんでも「化粧したほうの私」しか出てこない。検索結果が物体のイメージを形作るのだとすれば、「化粧しないほうの私