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暮らしや営みの中で零れ落ちそうなことを掬い上げたり、心や脳に浮かんだ閃きを忘れないよう書き留めたりする、思考や思想の直売所のようなものです。
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#ニューヨーク

「自衛」や「予防」って、しんどいものでしょう

「最近、移動どうしてる?」 ニューヨークに暮らす東アジア系の友人と会えば、こんな会話から始まる。 この豊かな街の地中を走る地下鉄は元来治安の悪い場所だったが、近年は日本人デザイナーによる施策が効いたことなどもあり、その治安は年々向上していた。が、疫病を経て、残念ながら安全とは言えない場所に逆戻りしてしまったらしい。特に、我々アジア人にとっては。 いつもこの街で起きる象徴的な出来事を反映している『THE NEW YORKER』ではこの春、こんな表紙が採用された。 THE

ニューヨークの規制解除、曖昧な疫病の終わり

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続・ニューヨークで暮らすということ

ちょうど3年前の今頃、木枯らし吹くニューヨークに片足を突っ込んだのだった。そして即、出発前まで舞い上がっていた気持ちを床に投げつけるような、最悪な日々が始まった。 金もなく、土地勘もなく、人脈もない。最安値の宿をめがけて突進した我々がまず泊まることになった部屋は、口を開けてられないほどに悪臭が漂い、バスルームは見知らぬ人と共用なのに鍵がかからない。Uberなんて使ったこともなかった当初は、移動だけでも恐ろしかった。どこかに連れて行こうとする違法ドライバー、地下鉄の通路で放尿

お金で新たな文化は買えない

引っ越し作業に忙しい。 2018年の夏から2年間、私たちはブルックリンの西側にあるウィリアムズバーグという町の高層住宅に住んでいたのだけれども、そこはべらぼうに家賃が高い。東京でいえば代官山の雰囲気と豊洲の立地をかけ合わせたような場所で、街には話題のショップが次々とオープンしているような、イーストリバー沿いのイケイケのエリアである。イケイケのエリアにあるイケイケの高層ビルで、あらマンハッタンの夜景がキレイ♡ と脳が正常な判断を出来ていない状態で契約した。その後、身分不相応な

移民と故郷と、心の中のリトル・ジャパン

去年の夏の終わり、1ヶ月ほど十和田湖のほとりの宿で過ごしていました。そこで出会った編集者の中野和香奈さんとのご縁で、Discover Japanにエッセイを寄稿させていただくことに。タイトルは「移民と故郷と、心の中のリトル・ジャパン」。 (Kindle unlimitedでも読むことができますよ) 心優しき編集部の方に許可をいただき、ここ『視点』にも転載させていただくことになりました。「そんな、もう買っちゃったよ!」という方、本誌の特集はとても充実しているので、どうかお許

ロックダウンされたニューヨーク。それでも人々は営みを続ける

隔離生活をしている。 もう何ヶ月もこの日々が続いていいるような気さえするのだが、事実上の外出禁止令が出されてから、まだ5日しか経っていないのだ。 日頃からかなりの時間を自宅で過ごしているはずなのに「好きだから家にいる」と「家にいなければならない」では、体感時間が随分違うものだなぁと思ったけど、望まぬ待ち時間って、だいたいそういうもんだ。 18日後に個展開催、というミッションインポッシブルな目的を失った我が家はしぼんだ風船同様になり、夫は確定申告を始めつつ、料理や掃除にも

私と夫の18日間。ニューヨークで暮らす日本人として、目の当たりにしている景色

3月2日。 私は跳び上がって歓喜していた。夫のプレゼンが通り、ニューヨークで初個展を開催できる権利を得たのだ。しかもSohoにある大きなギャラリーで。最高の立地だ。順風満帆とは言えなかった2年間の末に掴んだこの好機はあまりにも大きく、この出来不出来で今後の進退が決まってくると言っても過言ではない。 ということで、今回はニューヨーク初個展パンデミック物語について語っていきたいのだけれども、家族にまつわる文章を書くにも個人的なルールがある(ややこしい)。 まず、家族として過