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暮らしや営みの中で零れ落ちそうなことを掬い上げたり、心や脳に浮かんだ閃きを忘れないよう書き留めたりする、思考や思想の直売所のようなものです。
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2021年7月の記事一覧

それ、背表紙に書いといてよ

大阪にある実家のそこかしこには、私が生まれる随分前から母の本が所狭しと積み上がっていた。背表紙がずらりと並ぶさまは、大人の世界を、というか母の思考を垣間見るようでドキドキするものだが、とはいえ概ねタイトルの漢字で挫折する。しかし七歳の頃である。そうした難読文字列の群れの中に、断固として気に入らない新入りがやってきた。 『ふつうがえらい』 ふ・つ・う・が・え・ら・い。その七文字が目に入ると、私はいつも「んなことあるか!」と舌打ちをした。小学校低学年でもやさしく読めるその背表

私の、同性に対する厳しい目線

先日ブルックリンの友人宅で食事をしたあと、遅い時間になってしまったので電車に乗るのはおっかないな、とLyftを配車したところ、すぐにHONDAのclarityがドコドコとやってきてくれた。 ドアを開けると、強めの香りがマスクを通り越してドッと鼻孔に突き刺さってくる。カーステレオからは大音量のビートミュージックが鳴り響き、車内ミラーからはピンクのドリームキャッチャーが吊り下げられ、ぶわんぶわんと揺れている。ハンドルを握る手もピンクの爪。運転手はギャルだった。 なぜか知らんが

がんばろ、ニッポン。

五輪が始まってしまった。 過去最悪だと言われている感染病棟の病床率や、悲惨な現状を訴えかける医療従事者や専門家の声、そして若いアスリートの輝かしい活躍やメダルラッシュの明るいニュースが同時に流れてくる。もしかして、地球の中に東京は2つあるんやったか? と思わされるような日々である。 そんな中浮かび上がってくる様々な問題、その多くは「世代での価値観の違い」として語られる。 世代論を語るほどにマジョリティな感覚を持っている自覚はないが、1988年生まれの30代である私にとっ

謙虚な人、って褒め言葉だと思っていたけれど

(SNSに投稿した長文を、転載させていただきます。有料ゾーンは特に何もありません🙏🏻) 子どもの頃、存在感の薄かった私が珍しく褒められることと言えば、誰かに大切なものを譲ったときのこと。友人が遊びに来て、自分の椅子を譲るとか、ずっと待ってたけど順番を譲るとか……。 そんな時に「えらい!」と褒められるもんだから、えらいと思って、そうしていたのです。我慢すること。それが美徳だというのはきっとどこの家庭でも似たようなもので、「謙虚な人」と言われて、悪い気持ちになる人はいないんじ