それ、背表紙に書いといてよ
大阪にある実家のそこかしこには、私が生まれる随分前から母の本が所狭しと積み上がっていた。背表紙がずらりと並ぶさまは、大人の世界を、というか母の思考を垣間見るようでドキドキするものだが、とはいえ概ねタイトルの漢字で挫折する。しかし七歳の頃である。そうした難読文字列の群れの中に、断固として気に入らない新入りがやってきた。
『ふつうがえらい』
ふ・つ・う・が・え・ら・い。その七文字が目に入ると、私はいつも「んなことあるか!」と舌打ちをした。小学校低学年でもやさしく読めるその背表