見出し画像

第5話 怒れ!熱血自由団!!-前編


僕 ……さて、困ったぞ。


 GMこと僕は、困り果てていた。
 トーリのプレイヤーであるDさんが、諸事情でしばらく参加が難しいということになってしまったのである。かく言う僕自身、半年のモラトリアムを経て仕事が決まったので、あんまり延び延びにはしたくない。


僕 ……とゆーわけで、M先輩。シーフキャラで参戦してもらえませんかね?

M先輩 いいけど、急だなオイ。


 相談した時間、セッション予定日の深夜0:00。
 無茶振りにも程がある。


M先輩 (PCのキャラデータを見て)……てか、なんつう前のめりなPT。

僕 ハハハ!(乾笑)

M先輩 まあサポート系で行くかなあ。でもコイツらサポの基本をそれぞれおさえてやがるから微妙に被るなぁ。

僕 そうだ、キャラ設定なのですが、嫌じゃなければ○○という設定でお願いできますかね?

M先輩 いいよ。メンタル部分も○○でいいのか?

僕 そ、それは困る……。つまり現在の状況はですね……。

M先輩 ……ふむ。まあ把握した。とりあえず作ってみるさ。

僕 よろしくお願いしまっす。


■■■ Preplay ■■■


GM さて、成長報告ですが。

アッシュ って、トーリがいないけど?

GM  実はトーリのPLがしばらく参加が難しくなってしまったのです。

一同 あらら。

GM ま、都合よく(?)前回の終わりにトーリはばっさり斬られてしまったし、大怪我療養中ということで、急遽、M先輩がPCとして参加してくれることになりました。

M先輩 相談されたの昨日の夜0:00位なんだけど。(笑)

GM そして現在14:30。いろいろスンマセン。ま、とにかく新キャラが出てくるときになったら紹介しますので、よろしく! ……では、アッシュから成長報告どぞー。


アッシュ 今回は、一気に2Lvあがって6vになりました。【2ハンドアタック】が4Lvになって、【エンラージリミット】と【レイジ】を取得。伯爵のところでもらったマジックアイテムは【ボルテクスアタック】の威力をあげる[テーゲベックの鎧]です。

【エンラージリミット】……所持可能な装備の重量を拡張するウォーリアのスキル。
【レイジ】……減少したHP分のダメージを攻撃に加えるサムライのスキル。

GM むふー、デフォで6D、最大16Dか。大分強くなったなあ。

チロル 次私。戦闘不能を回復する【レイズ】と、ダメージを肩代わりする【フェイス:ダナン】をとったよ。

【レイズ】【フェイス:ダナン】……チロルの言ってる通りのスキル。

GM 久しぶりにアコ系だね。

チロル 血がいっぱい流れてるトーリ姉ちゃんを見てアコライト的に覚醒したの。

アッシュ あかん、トーリ死んだみたいな流れになっとる。(笑)

トーリ(GM) こらー! あたしはまだ死んでなーい!

GM ま、【スキルマスター:アコライト】持ってるニクネヴェンもいますし、トーリのことは心配いらないですよ。

チロル ニクネヴェンの婆ちゃんに教えてもらったのかも。それから、マジックアイテムは、[セレスチャルシールド]が欲しかったんだけど……。

GM そんな(魔族的に)呪いのアイテム無かろう。

チロル ……って言われたから、ポーションの効果があがる[酔いどれの斧]をもらったよ。

GM じゃあ、最後ミーファ。

ミーファ 私も5Lvになりました。【ファイアボルト】が遂にMAXになったので、念願の【リゼントメント】を取得しました!

GM うへー。

【リゼントメント】……は、MPを全て消費する代わりに最大MPと同点のダメージを魔法に乗せるという投げや……もとい、強力なスキル。

ミーファ いいでしょ! 使ってみたかったのよ!

GM いやいいですがね。……ミーファを怒らせたら町のひとつふたつは焼け野原になりそうだな、と。

ミーファ 装備は命の危険を感じたので[フォースワンド]から[フレイムスタッフ]に変えました。あと、伯爵からは魔法防御があがる[オリハルコンの髪飾り]をもらいました。

GM ギルドスキルもあがったようだけど?

アッシュ 犯罪者になっちゃったので、【偽装情報】にしました。

GM そりゃGM的にもありがたい。んまーそんなこんなで、はりきって第5回、いってみましょーか!


Opening Phase
■■■ 新メンバー加入! ■■■


――ルク王の罠にかかり、神器の欠片と聖剣を奪われてしまった一行。
 腹の虫が治まらない一行に、クレイブ伯爵が言う。

 「ありゃ聖剣じゃねーよ」

 真の聖剣はどこにあるのか?
 救島の手柄はルク王に奪われてしまうのか?
 一行の冒険はどんな結末を迎えるのか?

 全ての謎が、今、解き明かされる。

 ……かも?


GM てなわけで、前回、イグニスに裏切られて聖剣(偽?)を奪われちゃった君達は、色々問いただそうと骸骨騎士の元へ向かおうとして……いていいのかな?

アッシュ その前に伯爵に真の聖剣の見た目を聞いておいていいですか?

ミーファ やっぱり趣味悪いのかな?

アッシュ 趣味が悪かったら、僕がカスタマイズするから大丈夫だよ。

チロル アッシュ兄ちゃんのカスタマイズじゃあ……。(苦笑)

GM まあ、シンプルだが洗練されたデザイン、ということで。

アッシュ ガーン!

GM って、ガーン言うタイミング遅いだろ。(笑)

アッシュ ゴールドとシルバーはいるだろ……?(笑)

一同 ……………。

アッシュ とりあえず外見を教えてもらった。もうだまされないぜ!

ミーファ でも村に戻るにしてもトーリちゃんが重体のままだから、色々困るわよね……。

GM トーリはしばらく伯爵のところで静養することになりました。

クレイブ伯爵(GM) 「でもまあ、ちょっとお前ら心配だからなー。おい、誰かヴァレンティンの奴を呼んでこいや」

GM ということで、超絶美形な魔族の方が呼ばれてきました。

M先輩→ヴァレンティン んじゃ登場、少しウェーブの掛かったプラチナブロンドに切れ長の二重の目、細面ですが何か?

アッシュ 村で見たことのないような美人だ、と内心ドキドキしていよう。

チロル うわー、きれいな人だね。ミーファ姉ちゃん!

クレイブ伯爵(GM) 「こいつはヴァレンティン、うちの若いのの中で一番見込 みある奴だ。おい、ヴァレ。お前、こいつらについてってやれ」

ヴァレンティン 私、どの程度事情を把握してます?

GM アッシュ達が『神器』の欠片を使って島を元に戻してること、島の王様のルク王とイグニスに裏切られて、最後の欠片と『聖剣(仮)』を奪われてしまったことくらいは当然知っているでしょうね。

ヴァレンティン (眉を顰めて)何か面倒な話になってますねえ……。

クレイブ伯爵(GM) 「ルク王のやり口は俺も気に食わねえ。こいつらこれから一泡吹かせるらしいし、ついていってやってくれや」

ヴァレンティン わかりました。彼らに同行すれば良いのですね。……どうぞよろしくお願いします。(優雅に一礼)

アッシュ よ、よろしくおねがいします。

ミーファ こちらこそよろしくお願いしますね~と握手。

GM ちなみに、ヴァレンティンさんは《天上の美》という特徴を持っているので、マジで超絶美人です。

ヴァレンティン ゴーレムだろうがゾンビだろうが見とれてください。(笑)


 マジです。
 シナリオ中1回、敵が見とれて回避しやすくなる特徴です。
 精神無効とかそういう制限ないです。
 すごいね! 《天上の美》!


ヴァレンティン では遅ればせながら自己紹介をば。名前はヴァレンティン。外見ヒューリン中身は魔族。シーフ/フォーキャスター(軍師)の支援型で、得意技は【ポーションピッチ】と【チェックメイト】です。

【ポーションピッチ】……ポーションを投擲し、離れた場所のPCにも使用できるアルケミストのスキル。
【チェックメイト】……指揮によって他のPCの攻撃ダメージを高めるフォーキャスターのスキル。


チロル ヴァル姉ちゃんって呼べばいいのかな?

ヴァレンティン それ、口に出して言うのですか?(にっこり)


 ヴァレンティンさんは、女と見紛うばかりの男性なのだそうですよ。


チロル な、なんか恐いから、後でこっそり聞く。(笑)

ミーファ ヴァレンティンさんかな、いきなり愛称というか略称というのもなんですよね?

ヴァレンティン まあ好きに呼んで下さって結構ですよ。

ミーファ じゃあヴァレさんで。

クレイブ伯爵(GM) 「とりあえず、骸骨騎士とやらに会うなら、馬車とか変装用具とか用意してやるよ」

チロル 【偽装情報】の演出だね。

GM まあ、そんなとこ。

クレイブ伯爵(GM) 「あと、さっき村の者から情報が入った。ルク王の奴、次の週末に『王家の墓』で最後の欠片を祭壇に捧げる儀式を行うそうだ」

ミーファ じゃあ、それまでに骸骨騎士さんに会って戻って来ないといけないのね。

クレイブ伯爵(GM) 「ちなみに『王家の墓』ってのは、その名の通り歴代のファウゼン王家が祀られている墓所だ。都の郊外にあって、常から厳重な警備がされている」

ヴァレンティン 正面から向かうのは自殺行為ですね。

クレイブ伯爵(GM) 「さしあたって、墓所に侵入する経路がないか調べておいてやるから、安心して行ってこい」

ミーファ じゃあそんなに時間の余裕もないみたいだし、ささっと行きましょうか。

アッシュ よっし、じゃあ行くぞ熱血自由団!

チロル&ミーファ おー!

ヴァレンティン 「このギルドって熱血じゃないと駄目なんですか?」

GM 低血圧っぽい台詞だな。(笑)

ミーファ まぁ、うちの子たちってそういう子たちばっかりですからねぇ。

チロル だいじょうぶ、熱血なのはアッシュ兄ちゃんだけだよ。

アッシュ 魔族の人も伯爵とか結構熱血じゃない?

ヴァレンティン 伯爵は超例外です、というか一緒にしないで下さい。あの威厳の無さは異常ですよ……あれさえ無ければ立派なのに。

GM しどい。

ミーファ アッシュ君が熱血。チロルちゃんが自由。

チロル ミーファ姉ちゃんは団だね♪(笑)

GM どこの日本興和損保やねん。


 古いCMネタでした。


アッシュ もちろん、ヴァレさんは僕らの自由と熱血を高めてくれるので(その容姿で)OKです。

ヴァレンティン はあ……。(微妙に納得してない顔)

ミーファ まあ、そのうちこのノリに慣れますよ。(笑)

GM とにかく、ここでオープニングフェイズは終了ー。


Middle Phase-01
■■■ 帰郷 ■■■


■ ミーファ、帰る。 ■

GM えー。馬車を頑張って走らせまして……。

チロル え? 馬鹿を頑張って走らせた?(笑)

ヴァレンティン 何故でしょう。ミーファさんがアッシュ君をムチで叩いて走らせている光景が目に浮かんだのですが。(笑)

ミーファ びしっ! さあアッシュ! 頑張んなさーい! って、何言わせるの!(笑)

アッシュ そうか、それで【エンラージリミット】を覚えたんだな。(笑)

GM 何馬鹿なこと言ってんだよこの人達は……。とにかく、鉱山町を経て故郷のオーレリア村に帰ってきましたよ。

アッシュ 懐かしき故郷、しかしトーリがいっしょじゃないのが悔しいわ。

ミーファ とりあえず……有給延長申請をマスターにしておこうかな。(笑)

マスター(GM) 「あれ、ミーファじゃないか」

ミーファ ただ今戻りました、マスター。で、また有給使わせてください~。1年分くらいたまってましたよね?(笑)

マスター(GM) 「いや、つうかお前指名手配されてたんだけど」

一同 えええ、もう伝わってるのぉ!?

マスター(GM) 「兵隊さんがやってきて島中に言いふらしてるよ」

ミーファ 人生っていろいろあるものですよね……。

ヴァレンティン ははあ、さすがに手が早いですね。

アッシュ ぐぬぬ!

マスター(GM) 「でも王様も大人げないよなー。子供の冗談を間に受けちゃってさー。ハハハ」(一同爆笑)

ミーファ ……まったくそうですよね、ウフフ!(笑)

アッシュ 冗談って言われるのもちょっと傷つく……。

マスター(GM) 「アッシュやトーリの話なんてホラ話に決まってるのになあ?」

ミーファ ということで濡れ衣を晴らしに行こうかと思いまして。(ギラリ)

マスター(GM) 「まだ勇者ごっこ続けんのか? ほどほどにしとけよー」

ヴァレンティン あまりの暢気さに少し呆気に取られてしまった。(笑)

アッシュ まあ、指名手配を真に受けられるよりいいか……。

GM てか、この調子でみんなの家のロールプレイすんの?(笑)


■ チロル、帰る。 ■

チロル じゃあ私も帰ってみよー。(笑)

チロルパパ(GM) 「なにぃ、チロルが勇者ァ? んなわけねーだろ! グラデュエーターもウォーリアもレベルが全然上がってないのにチャンピオンになれるわけがねえ!」(爆笑)

チロル 私、わかる! この人、私のおとーさんだ!(笑)

ヴァレンティン なんですかこのメタ台詞。(笑)

チロルパパ(GM) 「バカ言ってないで【クランベルスタイル】のレベルをあげろ!」(笑)

チロル そんな使えないスキルいらないもん!(笑)

チロルパパ(GM) 「いいから肉食え、肉! 気合入れろー!」(笑)

チロル 町のお菓子になれちゃったから、お肉よりクッキーがいいんだもーん。(笑)


■ アッシュ、帰る。 ■

アッシュ 僕も帰ってちょっとだけ顔見せてこよう。

アッシュ父(GM) 「お、アッシュ、いつ帰ってきたんだ? てか出かけてたんだ?」(笑)

アッシュ 気づけよ! 帰ってきたのは今日だよ! いつ出たかは忘れたけど! そしてすぐ出かけなきゃいけないけど!

アッシュ父(GM) 「ハハハ、そういきりたつなよ。冗談、冗談」

アッシュ とにかく心配しないでくれよ! 心配ないから!

アッシュ父(GM) 「いやしかし、アッシュも都まで行ってホラ吹いてくるとはなかなかやるじゃねーか。さすが俺の息子」(笑)

アッシュ ホラじゃないよ!

アッシュ父(GM) 「俺も昔はこの界隈じゃ知らぬ者のないホラ吹きでな!……ああいや、今もこの界隈一のホラ吹きですじょ? ナハハハハ」(笑)

アッシュ 自分でホラだと言い切るなよ父さん……。

アッシュ父(GM) 「いやいや、ホラは人を喜ばせるためのウソだから、ついてもいいんだよ?」

アッシュ (満面の笑みで)お父さん随分かっこよくなったね!(笑)

アッシュ父(GM) 「本当のこと言ってもホラにはならんぞ☆」(笑)

アッシュ て、手強い。(笑)

ミーファ 仲いいね、この親子。(笑)

ヴァレンティン この村の人、どいつもこいつも暢気過ぎませんか!?(机ばんばん)

アッシュ父(GM) 「だがなーアッシュ。人を悲しませるウソはついちゃいかんぞ」

アッシュ なんか含蓄があるようなないような……。

アッシュ父(GM) 「そういう意味じゃ、王様をガッカリさせてるようじゃーホラ吹きとしちゃー二流だな」

アッシュ うーん、最後には納得させられてしまうなー。(笑)

チロル 納得しちゃうんだ。(笑)

アッシュ よし、僕も立派なホラ吹きになるぞ!(笑)

ヴァレンティン ホラ吹きの軍師ですか、私。数年後に情報操作の達人になっていそう……。

ミーファ ああ、この父親だからアッシュがこんなキャラになっちゃったのか……。(笑)

アッシュ母(GM) 「あらあら、二人とも楽しそうねえ。父さんが今朝とってきた魚でフィッシュパイ作ったけど、食べてく?」

アッシュ んもう、急いでるんだよ! 食べてくよ!(爆笑)

GM&ヴァレンティン 食べてくのかよ!?

アッシュ カルシウムを補給した!

チロル 漁村だから、お魚なんだね。

ヴァレンティン そのままくわえて「遅刻遅刻!」とか言いながら曲がり角ダッシュでもしてなさい!(笑)

アッシュ はー里帰り最高ー。(笑)

ミーファ 完全に盆休みの気分ねえ。(笑)

アッシュ 家を出てから我に返ります。……あれ? 父さん、何ウソを美化してんだ……?(笑)

ヴァレンティン 冷静じゃないですか。(笑)

アッシュ やっぱり世論に流されちゃだめだな。(笑)

GM アッシュの父さんと言えばホラ吹きボッシュと呼ばれて、巧みなホラ話で沈鬱な雰囲気の村々を元気付けていたステキな父さんなんですよ!?

ヴァレンティン:なんか凄い頑張ってなんとかイイ話にしようとしてますよ、GM。

GM シドイ。

アッシュ 娯楽のない小さな村で、一服の清涼剤になっているんですね。わかります。

ミーファ 絶対そんな深いこと考えてなかったよね、あのお父さん……。

GM おかしいな、このシーン、シナリオでは華麗にスルーしてるんだけど。(笑)

チロル 妙にキャラ立ってたね。(笑)

GM ロールプレイし過ぎた。(笑)


Middle Phase-02
■■■ 骸骨騎士、再び ■■■


GM さ、そろそろ出発しましょーか?

ミーファ そうね、有給延長もすんなり通ったし。

GM (通ったのか……)

チロル チロルはまた置き手紙を置いてきました。

アッシュ ミーファはさあ、何で休んでるのにお給料もらえるの?

ミーファ それはね。秘密。(笑)

GM いやあ、僕もさあ、失業保険もらって思ったよ。仕事しないでお金もらうのって、人間を駄目にするよねー。

ヴァレンティン ひどいリアル話だ。(笑)


 ちなみに。
 満額もらった頃に仕事は決まりました。
 やれやれ。


GM まあいいや。例の遺跡に着きました。通路に入ると、がしょん、がしょん、と甲冑をつけた人の足音が響きます。

骸骨騎士(GM) 「わ~れ~の~ね~む~り~を~、さ~ま~す~の~は~……」

ミーファ やかましいっ! スパーン!(笑)

骸骨騎士(GM) 「いてて。なんだお前らか」

アッシュ ミーファの反応が早い!(笑)

ヴァレンティン ミーファさん、そのスリッパはどこから……というかもう何からつっこんでいいのか。

ミーファ そんなことはどうでもいいんです!

チロル じーちゃんだー♪ ぶらさがろー♪

骸骨騎士(GM) 「あれれ? どーしたお前達、しょぼくれた顔しちゃったりなんかしちゃってからに。あ、しょぼくれてるのは元からか? ムホホホホホ」(笑)

ミーファ ていうか騎士さん! 本当のこと話してもらいましょうか!

骸骨騎士(GM) 「はてなんのことやら」

ヴァレンティン 『聖剣』のことですよ。

アッシュ あなた、伝説の戦士とか呼ばれてましたよ!

チロル そーだよー、ミーファ姉ちゃんを怒らせると恐いんだぞー。

骸骨騎士(GM) 「待て待て、わしもう死んでるんだからいっぺんに喋らんといて!」

チロル わーわーぎゃーぎゃー。

アッシュ ぴーぴーぴー。

ミーファ ていうか生きてる死んでる関係ないでしょ!

骸骨騎士(GM) 「いやーそんなこともないですじょ? わしだって生きてた頃はそりゃあもう、ピンピンしてましたよ?」(笑)

チロル そりゃそうだよ、生きてたんだから!

骸骨騎士(GM) 「色艶よかったですよ!?」

ミーファ そんな大昔のことは知りません。

GM スョボーン。

ヴァレンティン まあ、脱線するのはそこまでにして、そろそろ真面目に行きましょう。

骸骨騎士(GM) 「というか、本当のことと言われても、何から話せばいいもんか?」

アッシュ 僕にくれた剣、あれ『聖剣』とは違うの?

骸骨騎士 「あー、あれな。うん。『聖剣』じゃないよ」(あっさり)

ミーファ 怒りゲージ1/3。

チロル それ私のスキル。(笑)

骸骨騎士(GM) 「いや、わし、『聖剣』だなんて一言も言ってないじゃん! 勝手に勘違いして怒んなよ! 理不尽じゃ! 謝罪と賠償を要求する!」

アッシュ ていうか、結局僕達、ほとんど何も知らされないままだったよ。島のためになるから……って思ったけど、あまり信頼してなかったの?

骸骨騎士(GM) 「お前らがどれだけ信頼できるか、解らんかったからな。あえて多くは語らなかったのは確かだな……」

アッシュ がーん……。

骸骨騎士(GM) 「そんな顔をするな。……解った、全部話すとしよう。……少しばかり、長くなるがな――」


■ 骸骨騎士の追憶 ■

骸骨騎士(GM) 「そもそも、ことの始まりは100年前。当時、島では突然嵐や地震が起こったり、怪物が出没したりするような事件が相次いでいた。時の国王は、事件の真相が『神器』の異変にあると考え、王宮付きの『魔導師』に調査を命じた」

ヴァレンティン あー、話には聞いてます。ちょうどその頃生まれたんですよね、私。

骸骨騎士(GM) 「む、お前、クレイブのとこの若いのか。ならば知っていよう――『魔導師』の名はグリゼルダ。若くして神器研究の第一人者として将来を嘱望される学者であり、天才的な『魔導師』じゃった」

チロル ちょっと待って! 『魔導師』って、女の人だったの!?

ミーファ 皺くちゃのお爺さんを想像してた……。

ヴァレンティン おや、知らなかったんですか。……という顔をしておきましょう。(笑)

GM ヴァレンティンさんは実際知ってたんですがね。……ま、続けます。

骸骨騎士(GM) 「近衛騎士だったわしは、彼女の護衛を任され、島の遺跡や文献を調査しながら、各地に出没する怪物を退治してまわっていた。……ま、中にはクレイブみたいな気の良い連中もいたんで、人間の社会に溶け込めるように根回ししてやったりもしたけどな」

アッシュ 伯爵も恩人だって言ってたっけ。

ミーファ でも、悪い『魔導師』って言う言い伝えとかなり印象違うね。

骸骨騎士(GM) 「そうじゃな。彼女は――」

一同 ふむふむ?

骸骨騎士(GM) 「色白の別嬪じゃった」

一同 だ~~~!

骸骨騎士(GM) 「ぱっと見は垢抜けない感じなんじゃが、サラサラの黒髪をこう後ろでまとめててな。ちょっぴり覗いてるうなじが色っぽいんじゃ」

ヴァレンティン いや、その話は結構。(きっぱり)

ミーファ 聞いてませんから。(笑)

GM あと5行位台詞書いたのに。(笑)

ヴァレンティン 目も無いのに遠くを見るフリとかしなくても結構。(どきっぱり)

GM 身も蓋もないなぁ。

ミーファ あれ? でもそんな人をあなたが倒したんですか?

骸骨騎士(GM) 「……ゼルダは、ことの原因が『神器』の暴走にあることを突き止め、『神器』を制御するための魔導器の制作に取り掛かった。――それが『聖剣ネクスザール』じゃ」

アッシュ 『ネクスザール』……。

骸骨騎士(GM) 「『聖剣』は武具としても一級の品じゃった。わしはゼルダから『聖剣』を預けられ、彼女とともに『神器』が安置されていた『王家の墓所』へ向かった」

ヴァレンティン 『王家の墓』――ルク王が最後の儀式をしに向かった場所でしたね。

アッシュ もともと『神器』があった場所だったんだ。

骸骨騎士(GM) 「『王家の墓』を守る数多のガーディアンを打ち倒し、わしらはどうにか『神器』の元にたどり着いた。ところが――」

ミーファ ところが?

骸骨騎士(GM) 「最後のガーディアンを倒したそのとき、ゼルダはわしの手から『聖剣』を奪い取り、いきなり『神器』を切りつけた」

チロル えー!?

ミーファ 目の前で、『神器』を壊されちゃったの?

骸骨騎士(GM) 「――ガーディアンとの戦いで負傷していたわしには、彼女を止める術は無かった。『神器』は粉々に砕かれ、ゼルダはわしを置いて『聖剣』と共に姿をくらまし、二度と人前に現れることはなかった」

アッシュ 『聖剣』で『神器』を……。

骸骨騎士(GM) 「……わしの報告を聞いて、時の国王は『失器の大罪』を殊更にゼルダの責任であると宣伝した。混乱を治めるためでもあったろうが、ゼルダに研究を任せた自身の失態を隠すためでもあったと思う。……もっとも、彼女が『神器』を破壊して逐電してしまったことも、事実ではあるが」

一同 むー……。

骸骨騎士(GM) 「……後のことは以前も話した通りじゃ。彼女の足跡を追いつつ、島中に散らばった『神器』の欠片を集め、それを各地の祭壇に安置することで島を元に戻せる、という方法に行き着いた時には、わしはもう年老いており、力尽きてしまったのじゃ――」


■ 苦悩の骸骨騎士 ■

ミーファ グリゼルダさんが何故そんなことをしたのか。それに『聖剣』が何処にいったのかは、判らないの?

骸骨騎士(GM) 「うむ」

チロル ねえねえ、じーちゃん。アッシュ兄ちゃんに渡した剣はなんなの?

骸骨騎士(GM) 「ああ、あれはわしがゼルダの残した研究を元に、見よう見真似で作った紛い物じゃ。じゃから、ほれ、こんなものは幾らでもある」

ミーファ 幾らでも!?

GM ええ。骸骨騎士はアッシュにまったく同じ剣を放り投げますよ。

アッシュ うわ、柄の模様まで同じだ。

ヴァレンティン やっぱり趣味悪いんですね。(笑)

GM 言われてみれば、センスが悪いというよりも造型技術が低いせいのようにも思えますね。

ミーファ 技術低いと緑と紫になるの?

アッシュ そして高い技術だとゴールドとシルバーに……。

GM まあそこはなんかこう、焼きムラとかで。

アッシュ 紛い物でも僕にはかなり役に立ったけど。

骸骨騎士(GM) 「島を救うつもりが、逆に島から『神器』の加護を奪ってしまった。その無念が、わしを死して後もここに留まらせたのかも知れん。それに――」

アッシュ それに?

骸骨騎士(GM) 「……わしは未だ、ゼルダが何故あのような暴挙に出たのか、答えを出せないでいる。長い旅の中、わしとゼルダは苦楽を共にし、互いを支え合い心を通い合わせていたたのだから。……いや、そう思い込んでいただけだったということを、認めたくないだけなのかも知れんな」

ミーファ (ぼそっと)でも告白はできなかった、と。

骸骨騎士(GM) 「ぐさー!」(爆笑) 


 何故でしょう? GMのハートにも突き刺さります。


ヴァレンティン いやミルファさん、そのツッコミはさすがに……。(笑)

骸骨騎士(GM) 「うるさいな! プラトニックだったんだよ! ヘタレで悪かったな!」

ミーファ ヘタレの言い訳にプラトニックって……。

ヴァレンティン プラトニックは「うなじがそそる」とか言いません。(きっぱり)

アッシュ ……騎士って、つらいですね。

チロル 元気だしなよ、爺ちゃん。(肩ポン)

骸骨騎士(GM) 「めそめそ」

ヴァレンティン とはいえ、何か理由があった可能性もあるでしょうね。そういった資料などは残っていないのでしょうか。

骸骨騎士(GM) 「ゼルダと別れてから何十年と島中を歩き回り、時に大陸へも渡って探し回ったが、結局彼女の足跡をたどることはできんかった」

ヴァレンティン うわ、ストーカークラスの執念深さ。

GM ……ツッコミ厳しいなあ。

ミーファ ほら、純愛と思ってあげようよ。ヘタレだけど。(笑)

ヴァレンティン いや、口にして言ったわけじゃないですよ? プレイヤーが思っただけで。(笑)

GM 恋心もあったかも知れんけど、それ以上に目の前で『神器』を壊されちゃったのがトラウマだったわけですよ。勇者気取りで「美人と島を救っちゃるぜー」と浮かれてたのに、終わってみればその美人に裏切られて島ピンチですからねえ。

チロル なんかそう聞くと、悲惨だね。

GM たとえるなら、泥棒に惚れて知らずに犯罪の片棒担いじゃった警官みてーなもんです。(笑)

ヴァレンティン 理解できなかった、という寂しさもあるんでしょうね。

ミーファ ……でも、アッシュ君の剣の問題は解決したけど、本物はどこにあるか解らないんだねえ。

アッシュ 祭壇に欠片を捧げるのに剣が必要だったわけじゃないですよね?

GM ないね。

ミーファ 『聖剣』、探す必要あるのかな?

ヴァレンティン あのー、ちょっと疑問なんですけど。

GM はいはい?

ヴァレンティン そもそも『神器』って何なんでしょう?

骸骨騎士(GM) 「400年前、この島に王朝を築いた英雄王ファージアスが島に持ち込んだとされる宝玉だ」

ヴァレンティン いや、欠片だけで島中が豊かになるような代物で、失われるとここまで荒廃するって、何か不自然じゃありません?

骸骨騎士(GM) 「古代文明の遺産だとも言われるが、島に持ち込まれる以前の来歴は判らん。強大な魔力を秘めた魔導器だったことは確かだな」

アッシュ そういえば、欠片は見ているけど、もともとどんな形だったのか、全然知らなかったね。

ミーファ うーん。プレイヤー的には島民の生命力をうばってたとか、他の土地がひどくなってたとか、無理やりな生命力の活性化で将来的にやばくなるのではとか、まぁ、色々考えるよね。……というか、最後の欠片を戻すのに『聖剣』って必要なの?

アッシュ そうだ、王様は偽の『聖剣』を持ってったんだもんな。

骸骨騎士(GM) 「欠片を戻すだけならば、『聖剣』は必要ないだろう。……だが、『聖剣』があれば、神器を制御することが可能なはずじゃ。100年前に起こっていた地震雷火事親父も防ぐことができよう」

ミーファ それはまずいね。特に親父。

ヴァレンティン ホラ吹き位は許容ですかね?(笑)

チロル アッシュのおじさんがホラ吹きながら襲ってきたら厄介だね。

GM 鬱陶しいなあ。(笑) 切り殺すわけにもいかんし。

アッシュ それはやだなぁ。指名手配されて欲しいよ。(笑)

ヴァレンティン アッシュ……! 恐ろしい子……!

ミーファ じゃあとりあえず神器を元に戻させるのはいったん止めた方がいいのかも。3つで十分回復したわけでもあるし。……あ、そっか! それで騎士さんは3つしか欠片をくれなかったのね!?

骸骨騎士(GM) 「……えっ?」(ぽかん)

ミーファ ……騎士さん?(にっこり)

チロル ミーファ姉の怒りゲージがまた貯まったよ?(笑)

骸骨騎士(GM) 「いやまあ欠片は4つしか見つけられなかったのじゃが……いや、そうか。お前達はそう考えるのが当たり前なのかも知れん……」

ミーファ どういう意味?

骸骨騎士(GM) 「わしは……『神器』が失われたことで多くの人々が苦しみ、多くの命が失われていくのをこの目で見ていた。たとえ多少の天災が起ころうとも、『神器』が失われたことによる被害に比べれば、遥かにましに思える。だが、お前達にとっては、『神器』がないことが当たり前――」

アッシュ ……もう100年も、貧しい中くらしてきてるからね。今の島の人にとっては、貧しいほうが自然ではあったよな。

骸骨騎士(GM) 「……ならば、わしはお前達に望まれていない豊かさを押し付けてようとしていたのかも知れん……」

ヴァレンティン ……それは仕方ないことでしょう。島が豊かだった頃を知っていて、それを取り戻そうと一生をかけて追い求めた人を、我々が今の価値観で否定することはできませんよ。

ミーファ だけど、豊かになるかもしれない、危険になるかもしれないって言うのなら……。

アッシュ 危険かもしれない、のほうが重要だよな。

ヴァレンティン ええ、それで良いと思いますよ。酷い言い方になりますがいつまでも死人に頼ったりするのも問題です。

ミーファ とにかく、王様はそうなるかも知れないってことを知らないわけよね?

GM ですね。

ミーファ ならせめてそれを伝えるべきじゃない?

GM まったくその通り。……ですが、問題が一つ。

ミーファ え?

GM 島の人達は、既に実感してしまっているんですよ――欠片を捧げることで、島が豊かになっていくのを、ね。

ヴァレンティン ……もう、誰も納得しないでしょうね。何か良く分からないから豊かになっちゃ駄目、と言われても。

ミーファ ……最悪悪人と言われても、安全ってことが解るまでは止めたほうがいいと思う。

一同 ……だね。

アッシュ じゃ、やることは決まったな。王様を止めにいこう!

チロル よーし、熱血自由団、出撃だあ!

骸骨騎士(GM) 「……わしの時代の王も責任を全部ゼルダにおっかぶせるような人だった。或いは、あの天災自体、我欲に満ちた王への警鐘だったのかも知れん」

アッシュ 王様に仕返しする真っ当な理由ができたような気がする。

ミーファ あの王様、明らかに邪まな考えで私たちから奪ったしね。

骸骨騎士(GM) 「わしは、お前達に余計なことを押し付けてしまったのかも知れんが……それでも、死して後まで案じてきたこの島の行く末を見ぬまま、消えていきたくはない……」

アッシュ 一度請け負ったことだしね、力を尽くすよ。

チロル そうだよじーちゃん、私達にまかせとけば大丈夫!

ミーファ 元々やられっ放しで黙ってる気もなかったしね。(笑)

骸骨騎士(GM) 「……すまん」

GM 話してすっきりしたのか、骸骨騎士の姿は大分薄れてきてます。

一同 なんか成仏しようとしてるー!?

骸骨騎士(GM) 「ハハハ、ま、心残りだったことを全部言えたんで、気が晴れたのかもなー」(笑)

ヴァレンティン おや、騎士殿……何か背後が透けてきてますがそろそろ存在の耐えられない軽さに?

GM ひどい! さっきから骸骨騎士への当たりが強いなあ。

ヴァレンティン いやまだ台詞終わってないから!(苦笑) ――それは残念、過去よりも豊かになった島を見せて地団駄を踏ませたかったのですが。

GM ああ、そうくるのね。(苦笑) 骸骨騎士は力無く笑いを返しますよ。

アッシュ 100年もこの遺跡で頑張ってたんだから、もう少し待ってよ!

ミーファ まだ元に戻った島を見てないでしょ!? それが見れるまで、消えてなんかられませんよ!

チロル そーだよ! わたしまだじーちゃんと遊び足りないもん!

骸骨騎士(GM) 「ハハハ、じゃあお前達の活躍に期待して、もう少しだけ頑張ってみるとするよ……」

アッシュ じ、自在なの?

GM 突っ込まないで。(笑) きっと気合抜くと成仏しちゃうんだよ。

ミーファ じゃあ風呂上がり寝酒寝タバコしないようにね。(笑)

ヴァレンティン ミーファさん、もう死んでますから……それは大丈夫ではないかと。

GM まあ、このオバケから聞けるのはこんなとこだよ。


 遂に、島の伝説にまつわる真実を知ったPCたち。
 はたして『神器』の復活を止めることはできるのか――?
 その結末は、後編にて!


to be continued......


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?