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最近観た映画:マリア 怒りの娘

昨日渋谷のユーロスペースで上映が始まったニカラグア映画。監督舞台挨拶・アフタートークもあるというので、行ってみました。ニカラグアは長編映画がほとんどないということで、この作品もニカラグア出身の女性監督が作った映画では初めてとのこと。いやー、すごくパワフルかつ芸術的な完成度も高い、長編デビュー作とは思えない感じの作品でした。

公式ウェッブサイトからのあらすじの引用:11歳のマリア(アラ・アレハンドラ・メダル)は、ニカラグアのマナグア湖に隣接する広大なゴミ集積場の近くで、母親のリリベス(バージニア・セビリア)と共にゴミ収集をしながら暮らしている。ある日、政府はゴミ収集事業の民営化を決定し、これに対してゴミ収集で生計を立てていた人々が反発。大きな抗議活動へと発展し、政府と住民との衝突が続いていた。(中略)
「すぐに戻る」という母の言葉を信じて待つマリアだったが、母は何日経っても戻らない。マリアは戸惑い、混乱し、言葉にならない怒りを募らせていく。周囲に馴染もうとせず孤立するが、マリアを心配し気にかけてくれる少年タデオ(カルロス・グティエレス)に少しずつ心を許し仲良くなる。しかし、母への思いは日増しに募り、タデオの助けを得て施設から抜け出し、母を捜す旅に出る――

私がこの映画を観ながら何度も思い出したのが、同じく中米コロンビア出身のピラール・キンタナさんの小説「雌犬」のいろいろなシーンでした。中米の特徴なのかわかりませんが、自然とものすごく近いところに人間の生活がある感じ。そして沢山の不条理、特に女性としての生きにくさ。一方で、女性性の持つ原始的なパワーの表出。ガルシア=マルケスを思い起こさせるような異次元が交錯してくる不思議な感じも、共通していたと思いました。

オーディションで選んだという、実際にゴミの山の近くで住んでいた(そして監督によれば、この映画に相応しい「怒り」を持っていた)主人公役のアラの演技もすごかったです。現実にああいう体験をしていなかったら生まれなかったであろう目や立ち居振る舞いの力強さに圧倒されました。

監督からのトークの最後で、彼女は「ニカラグアのこのような悲惨な状況は、遠くの国のエキゾチックな話と見えるかもしれません。でも、このような状況の国は世界中に沢山あります。皆さんの生活も、さまざまな国と繋がっていることに想いを馳せて下さい」というようなことをおっしゃっていました。まさにそうで、だからこそ、たくさんの方々に観て欲しい映画です。


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