小説じゃない本読書会/本編#4

9月の読書会のテーマは「小説以外」。小説形式でないおすすめ書籍を各自持ち寄り、紹介しあう会となりました。以下、当日話題にのぼった本(+α)の記録です。

●『TRANSITトランジット(2019年の砂漠特集)』,雑誌

砂漠の地政学的紹介から始まり、最先端企業が目をつける未来の砂漠の在り方なども。

TRANSIT→ひとつの国をテーマに毎号文化など紹介。″オシャレ雑誌感″がよい。文字の置き方や写真の配置がかっこいい。

(パフェは映画と一緒、フルーツならデニーズ、ちょっと大人めならロイホ)

●『中川エリカ 建築スタディ集 2007-2020』,建築スタディ集

図面を描いて作らずにデカい模型を作って設計する珍しい作風のひと。模型なのに本物に見えて面白い。ぼーっと見て「かわいいなぁ」とか思うのがいい。お皿とか、本とかソファとかとにかく細かい。

道とか集落で見つけた面白そうなものを実際に作る、なんてことも。

●『ゆるキャン△』,マンガ

女子高生5人がキャンプする。インターハイ優勝!とかじゃなくてただキャンプするだけ。キャンプの知識も。連載に伴う作風の変化も面白い。
あんまり考えずに読める。

●『伊藤潤二自選傑作集』,マンガ

夏に読みたいホラー漫画。絵も不気味でストーリーも怖いけど、どこか笑えるところがある。ホラーと笑いは紙一重。

伊藤潤二作品は来年ぐらいにネトフリでアニメ化も決定。いま読むべき。家に一人でいる時に夜とか怖がりながら読むのがイイのでは。

● レイ・オルデンバーグ『サードプレイス』,人文書

スタバの基本理念に影響を与えたアメリカの本。サードプレイス:家でも会社でもない第3の居場所。軽視されがちだけど、社会生活を円滑にしたりストレスを発散したりするのに欠かせない。

アメリカにはヨーロッパと違ってそういう場所が少なく、筆者「ご近所付き合いチックなのがないのがまずい」。
不真面目で風俗を乱す場所として排除されてきた背景も。

●Anne Lemay Burke『fauxliage』,写真集

fauxliage:風景に馴染むようにヤシの木っぽく変装した電波塔。景観保護を目的とした工夫であると同時に、アメリカ国家が監視する視線の隠蔽とも解釈できる。
cf.)エドワード・スノーデンの告発

1周目はどこに隠れてるのか見つける面白さ、2周目はいかに巧妙に隠されているかの不気味さを味わう。

●菊竹清訓『代謝建築論』,人文書

第1章デザインの方法論要約↓

〈か〉:本質的段階であり、思考や原理、構想。
〈かた〉:実体論的段階であり、理解や法則性、技術。
〈かたち〉:現象的段階であり、感覚や形態。
認識のプロセス
か→かた→かたち
逆にすると設計のプロセス

後半ではメタボリズム建築との関連も。(説明用にスライドを用意してくれてました。謝謝。)

●ヴィクトール・フランクル『夜と霧』,人文書

アウシュビッツから生還した心理学者の話。極限状態における人間の在り方。淡々とした筆致に引き込まれる。

まともな人間も、狂ってしまう人間もいた。その違いはあまり多くないのかもしれない。自分がそうなる可能性にも思いを馳せる。

●高内寿夫『人権の精神』,人文書

人権の話。いじめが起こるのは閉鎖的空間。筆者「人間には元々向いていない空間だから、ストレスで負荷がかかるのでは」。
立場が少し変わってしまうだけで、権力構造が生まれてしまう。
cf.)ミルグラムの実験

●鈴木忠志『演劇とはなにか』,人文書

演劇の定義、歴史を紹介。筆者はアングラ演劇の時代の人。

演劇の本はどれもこれも初学者は読みにくい→演出家とか俳優の文章は学者に比べると感覚的な文章で現場主義すぎ、批評家の文章は抽象的すぎて空理空論すぎetc…。その中でこれは納得感があるし、演劇わからなくても読みやすい。

学者としてのメタ視点に立った分析も、現場の人間としての実感もある。

●『水戸旅行で貰ってきたチラシ・パンフレット』,チラシ

観光案内所でGET。てんまさの納豆チャーハン美味い。メニューの大部分が納豆もの。

水戸バス1日フリーきっぷに潜む偕楽園トラップ。地元の人しか知らない楽な道。本質情報:2個前で降りた方がいい、坂をショートカットでき、アツい。

●内田樹『寝ながら学べる構造主義』,人文書

構造主義は学際的な思想でとっつきにくいけど、この本はさらっと最後まで読める。おもしろい。

●『芥川龍之介随筆集』,随筆集

関東大震災で被災した芥川龍之介が書いたやつ。
おすすめ→荒れ野となった東京を見て絶望した芥川が、それでも生きていくんだ、と力強い文章で書いたもの。(文体のアジみがよい。)

「僕は」というタイトルのも印象的。思いついたことを一行とかで書いてく形式。

●ジェリー・トナー『奴隷のしつけ方』,人文書

古代ギリシャ人になりきって、奴隷のしつけ方を解説。現代の社畜(問題)につながるところも。たくましい生き方の奴隷。普通の人から奴隷になるひともいた。


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参加いただいたみなさん(特に書記をお願いしたお2人)ありがとうございました。

次回予告→次のテーマは「冷たい」。雪山の小説、かき氷の歴史本、などなど、冷たさから連想される本を持ち寄って話します。

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