見出し画像

戻ってきた生取材はやっぱりいい!渡辺いっけい×大山晃一郎監督『いつくしみふかき』

 4月、5月の緊急事態宣言発令期間は、多くの方がオンラインミーティングやオンライントークをされていたのではないだろうか。映画公開前の各種取材ももちろんオンライン。ズームインタビューを何度か行った。幸いなことに、『精神0』の想田和弘監督、『はるかのとびら』松本大樹監督、『許された子どもたち』の内藤瑛亮監督、『島にて』の大宮浩一監督と、みなさんかつてリアルで取材をさせていただいたことがある監督だったので、まだ「お久しぶりです」というところから始まることができたのだが、オンラインで初めましてとなると、やや腰が引けてしまっていたかもしれない。

 大山晃一郎監督の初長編監督作であり、意外にも渡辺いっけいさんの初主演作の『いつくしみふかき』も、元々はズームインタビューを打診されていた。関西には舞台挨拶で俳優が来阪しても、有名どころはすぐにテレビ局の生番組や収録番組出演にまわり、大手メディアではない私はあまり取材をする機会がなのだが、今回はインディペンデント映画だということ、そしてきっと渡辺いっけいさんも自身のターニングポイントになる「代表作」と思って、精力的に動いていらっしゃることなどから、宣伝活動にも積極的に参加してくださっていたのだろう。今週になって急に渡辺さんの来阪が決定、取材する劇場に行くと、大阪出身の大山監督もいらっしゃっている!『いつくしみふかき』はとても骨太な作品で、不器用な父と息子が最後にはなんだか愛おしくなるような作品だ。特に渡辺さん演じる父親は本当にクズな男で、でもクズの色気があるというか、腹の底では「助けてほしい」と人一倍思っているような男のように思えた。久しぶりの生取材、渡辺さんの俳優としての歩みやつまづき、朝ドラ出演秘話からはじまり、自身の体験も反映させたという大山監督の初長編にかけた思い、信州飯田でのロケや、方言が持つ柔らかさの中に潜む怖さなど、次々合いの手が入りながらあっという間の1時間。そうそう、これだよ。漫才もそうだと思うけど、やはり掛け合いは生でないと。一緒に笑ったり、驚いたりするその場の空気、そして苦手だけれど、なんとかいい写真を撮ろうと撮影場所を探したり、逆光でないかを確かめたりする瞬間、そんなこと一つ一つが、妙に新鮮だった。

 東京ではもう公開されているが、まだ舞台挨拶はできないので、劇場で帰り際のお客様に「ありがとうございました」と声をかけたり、感想を聞いたりしているというお二人。7月に関西で公開される頃には、故郷に錦で舞台挨拶ができるようになっているといいなと思いながら、さあ、記事がんばって書かねば!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?