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【映画祭の今】東京国際映画祭、部門を統合したショーケース「東京プレミア2020」に注目!

 5月に開催予定だったカンヌ国際映画祭が開催を断念し、部門の区別をせずにオフィシャルセレクション「カンヌ2020」を50作品発表。秋以降に開催される映画祭と連携し、上映されることになったのは記憶に新しいところだが、そのカンヌのセレクションの方法を取り入れながら、あくまでリアルでの開催にこだわり準備を進めているのが、日本国内で最大級の映画祭となる第33回東京国際映画祭(TIFF)だ。

 同じアジア圏でありながら、若手作家の発掘、育成、さらには企画の助成に力を注ぎ、まだ世に知られていない才能を大胆にクロージング上映に抜擢するなど、映画祭本来の役割を十二分に果たしている韓国の釜山国際映画祭と比べれば、予算規模はかなりのものでありながら、その思想に欠けている。実はコンペティション部門や、日本映画スプラッシュ部門、アジアの未来部門には、注目すべき作品が集まっているのに、ニュース映えしないがために、その良さがなかなか広がらない。いずれ公開される話題作をオープニングやクロージングにもってくる話題性ありきのセレクトに乗り切れない映画ファンも多いだろう。一方、東京フィルメックスといえば、数週間後に開催されるほぼ同時期開催ながら、映画ファンから圧倒的な支持を得ている。アジア映画中心のセレクトだが、映画ファンが注目している新しい才能、インディペンデントスピリットを持つ作家の最新作を、きちんと届けてくれる場なのだ。

 コンペティション部門のプログラミングディレクターである矢田部さん(東京国際映画祭シニア・プログラマー)は、コロナ禍でも定期的にTIFFチャンネルというYoutubeでの配信番組を続けておられ、いち早く立ち上がった「We Are One: A Global Film Festival」にも参加、オファーの裏側を教えてくださった。


 その流れから、今年のTIFFの話になると、リアルでの開催に強いこだわりを持っておられたのが伺えたが、最新リリースから読み取るに、Q&Aやトークショーでオンライン活用の方向性だが、上映はあくまでも従来通り劇場で、予定通り10 月 31 日(土)から11 月 9 日(月)の開催となる。肝心のプログララムの方向性については、

●部門を統合、コンペティション部門や、日本映画スプラッシュ部門、アジアの未来部門は「東京プレミア2020」に。

●各部門別に審査員、賞の授与が行われていたが、「東京プレミア2020」での観客が選ぶ観客賞に統一。

●東京フィルメックス映画祭と連携し、同時期開催で「カンヌ監督週間」のような位置付けに。

●「東京プレミア2020」(30本程度を予定)は委員会制の合議の下で選定。

委員会制というのは、今までの各部門のプログラミングディレクター(安藤紘平氏、石坂健治氏、矢田部吉彦氏)、東京フィルメックスプログラミングディレクターの市山尚三氏に加え、外部から映画ジャーナリストの金原由佳氏、、関口裕子氏を交えている。通常は各プログラミングディレクターが世界の映画祭を廻り、予備選考を通過した作品や、各人の人脈から最終決定していくのだが、今回は委員会制で、しかも女性が二人加わるということで、今までにはないタイプの作品が現れる可能性大だ。

正式のプログラム発表は9月末となるが、コロナ禍で今までの枠組みを取り外し、新しい歴史に一歩踏み出した東京国際映画祭の試みは、他の映画祭への指針になるはずだ。今だからできる連帯や相互協力が、映画祭の地盤を引き上げあることを期待したい。

©2020 TIFF

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