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大林宣彦監督を悼む〜緊急事態宣言Day4


本来なら新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』の公開日だった2020年4月10日に、大林宣彦監督が亡くなった。朝からこのニュースを目にし、ついにこの時が来てしまったのかという寂しさでいっぱいになった。前作『花筐/HANAGATAMI』では肺ガンで余命宣告を受け、撮影を一時中断したというが、出来上がったその作品は情熱がほとばしり、デビュー作『HOUSE/ハウス』を彷彿とさせる遊び心も満載。大林監督流の見事な厭戦映画に胸が熱くなったことを思い出す。

2018年1月に大阪で行われた舞台挨拶では、杖をついて上映後の舞台挨拶に登壇。手にしているステッキから往年のミュージカルスター、フレッド・アステアを引き合いにだし、「フレッド・アステアのようにタップダンスが踊れればいいが、さすがに今日は踊る訳にはいかないので」と場を和ませた後、映画と戦争との関係から、軍国少年時代の話、敗戦後8ミリで映画を撮るに至った経緯など、まさに自らの半生を『花筐/HANAGATAMI』の話につなげ、そして最後は「私も地球の中でのガンだった」とガンと闘っている今の心境を明かされた。次々と大林監督の訃報を報じるニュースが出るものの、若い頃の代表作や「映像の魔術師」という言葉が散見されるが、大林監督が生涯をかけて伝えていたのは、まさに戦争の愚かさと、表現の自由を享受する平和の尊さではないか。特に晩年の『この空の花 -長岡花火物語』『野のなななのか』『花筐/HANAGATAMI』は、その思いが貫かれている。

『海辺の映画館―キネマの玉手箱』は、故郷尾道で久しぶりに撮影した作品。尾道三部作、新尾道三部作と尾道を舞台にした青春映画を送り出してきた大林監督にとっても、地元のみなさんにとっても、公開を待ち望んでいたに違いない。予告編を観るだけでも、本当にワクワクさせられる大林ワールドが全開。大林監督のラストメッセージを早く受け止めることのできる日が来ますようにと願ってやまない。ありあまる映画愛、映画館愛で、私たちに光を与えてくれた大林監督、心からありがとうございました。そして、安らかにお眠りください。

『海辺の映画館―キネマの玉手箱』

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