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『突然炎のごとく』

『突然炎のごとく』

公開:1994年
監督:井筒和幸
脚本:井筒和幸 木田紀生
撮影:篠田昇

まず、坂上香織の尻をアップで映し出す謎のカメラワーク。そして、ゲリラ的に発生する暴力からの「人のオンナ、チャラチャラ見てんじゃねえ」という山本太郎の台詞。掴みで完全にヤられたわけなんですが、開始30秒たらずでクラクラしてしまうような映画に久々に出会えた気がする。これが井筒監督の復帰作なのか。
90年代の街並みとモノクロの相性が良く、スタンダードサイズの画面もまた渋い。全編、キスシーンの応酬で、カメラがこれでもかと役者の顔に寄りまくる。

この映画で一番輝いていたのは山本太郎で、生き生きした演技が見てて心地良かった。やくざの女に手を出してボコボコにされるラストも、良い蹴られっぷりで堪らない。

良い映画の条件としては、ストーリーなんかより、記憶に残るシーンやカットがあるということが余程重要だと思ってる。役者をどう動かし、どのように撮るか。そしてそれをどう切り貼りしてゆくか。そこに映画としての魅力が詰まっており、ストーリーはあくまでも付随にすぎない。だから映画的な物語り方を無視した、お話至上主義的な批評はいまいち説得力に欠ける。

他者の批評を批評してもしょうがないが、この映画にはストーリーを超えた良さがある。

たしかフィルムセンターとかで上映されてた気がするがまさかDVDがでてるとは思わなかった。この類いの映画は名作が山ほど眠っていると思うので、上映なりソフト化なりして観る機会を与えてほしいなと思う。