『越後つついし親不知』(1964年)

2012年4月18日(水) 銀座シネパトス

三國連太郎がこわい…
性欲がギラついている感じ。
もてあましている人の感じがよく出ている。

酒蔵の仕事が丁寧に描かれる。

三國は『夜の鼓』では寝取られる役で、今度は寝取る役。
小沢昭一のマジメくんもハマっている。

三國と小沢は同じ村から出稼ぎ(?)で京都の酒蔵に働きに来ている。
小沢は真面目に働き、三國はテキトーに働いている。
三國の母親が危篤だという電報が入り、三國は一時故郷に帰る。
出がけに小沢の昇進話を聞き、小沢が美しい嫁をもらった上に昇進、ということが面白くない。

帰る途中にひなびた酒場に入って安酒を飲む三國。
たまたま居合わせた東野英治郎が、戦争でロシアに行っていたときのロシア女の生々しい話をする。
ごくりと唾を飲む三國。
三國の中にどんどん性欲がたかぶってくる。
うまい展開。

故郷の親不知に着くや、雪の中を歩く小沢の嫁・佐久間良子を見つける。
三國は佐久間を犯す。
このシーンは、昆虫でも撮るように引きになる。
冷酷なカメラ。
観念した佐久間が三國によってモンペを脱がされ、白いふとももが見えたところでシーンが切り替わる。

三國が酒をくらったり、佐久間を犯したりしている間に、三國の母は死ぬ。
三國のきょうだいに殿山泰司。
死に対して型どおりの悲しみを演じる大人たち。
それに対し、わりにけろっとして、死体ごっこなどをして大人を怒らせる子どもたち。

村の人々が集まっての葬式。
裸にされ、清められた母親の死体が桶の中に入れられる。                                                                                                                                            
その母親の細くしなびたふともものあたりを三國が見る。
三國は、佐久間の白いふともも連想する。
このシーンには度肝を抜かれた。
たしかにこれは成人映画だわ、と思う。

構成としては、三國→佐久間→小沢と視点が移っていく感じも面白い。
寝取る男→犯された女→寝取られた男。

佐久間の比重が一番多く、三國の子どもを妊娠し苦悩する佐久間に、佐久間の過去のフラッシュバックが重なる。
幼くして身寄りを失い、小さなころから働き続けた佐久間。
ごぜの手引きをしたり、子守をしたり。
大きな屋敷で女中として働いたときは、そこの坊ちゃん(石橋蓮司!)のなぐさみ者になったが、石橋が佐久間の初恋の人だった。
主人の松村達雄が佐久間に夜這いをかけようとして妻の沢村貞子に見つかり、逆ギレされた佐久間は屋敷を出される…

小沢との結婚のシーンが秀逸。
豪華な婚礼のシーンがあり、これが小沢と佐久間の?と見ていると、それは全く他人の婚礼で、その華やかさをチラリと横目で見ながらすれ違い、簡素すぎる婚礼の儀をささやかにやる小沢と佐久間。

佐久間の回想シーンがかなり多いので、すっかり佐久間を中心として見てしまう。
しかし、佐久間は「腹の子は誰の子だ」と責める小沢の折檻によって、あっけなく死ぬ。
ここにはびっくりした。
なんか、『サイコ』のような唐突さ。

ここから話の中心は、殺人者になった小沢にスライドする。
山小屋のようなところで佐久間の死体と共に過ごす小沢。
『人妻集団暴行致死事件』を思い出す。
田中登はこの映画を見たのだろうか。

佐久間の死体を愛撫したりキスしたりするが、佐久間の身体には虫がわき始め、こうやって過ごせる時間も終わりだということを悟る小沢。
小沢は山小屋に火を放つ。

小沢が放心状態でとぼとぼと歩いていると、赤紙がきて、これから戦地に行く三國の行列に出くわす。
ふらふらとその列に交じり、崖のところで三國もろともまっさかさまに落ちる。
不意の出来事にあわてふためく殿山泰司たち。
映画はここでパッタリと終わる。


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