見出し画像

おっとりと川上未映子の新訳 「ピーターラビット」シリーズの世界へ

※感想は追記するか、別に書きます

6/25、川上未映子さん(作家)と河野芳英さん(大東文化大学 英米文学科教授)の対談講演会 『おっとりと川上未映子の新訳 「ピーターラビット」シリーズの世界へ』に行ってきました。会場は大東文化大学 板橋キャンパスの、多目的ホール。

以下、覚えていることのみになりますが、内容を簡単に書きます。いま(病気で)疲れているので、読みにくかったり分かりにくいところがありましたら申し訳ありません。


◆最初に河野教授から簡単なピーターラビットの歴史の説明がありました。イギリスで1901年にビクトリアス・ポターが自費出版したものが、日本では1905年に訳されていた、と。2006年に教授らが発見したことなどを、スライドで紹介していました。国立国会図書館で発見した時は同行者が涙していたそうです。

◆説明は10分ほどで終わり、拍手とともに川上未映子さんが登壇。

◆河野教授が質問を川上さんに投げかけて行く形式で進みました。

どんな子どもでしたか?との河野教授の質問に、川上さんは、小さいころは感受性の強い子どもだったこと、1歳ずつ歳をとって死に近づいていくのに、どうしてハッピーバースデーを歌うのか分からず歌えなかった。そういうことを夜空を見ながら考えていました・・・と答えていました。


好きな絵本については、川上さんは、ねこのジョンとの答え。絵のタッチが好き、と仰り、NHKのあさイチでも紹介したことも話されていました。

大人になってから読んだ文学で、好きなものは何ですか?という河野教授の質問には、太宰治ですとの答え。村上春樹さんも好きだったんですけれど、太宰をよく読みました。初めて東京に行った時に、太宰の自殺した場所に行きました。暗いでしょう 笑?と。


◆ここからは、ピーターラビットについて。

ポターには不思議なエンジンが積まれていると思います。世界に対して丁寧に接することを意識しました。原作はリズムによって進んでいきます。丁寧な言葉でやさしく訳そうと心がけたと川上さん。

河野教授が、文と絵が補完しあっていることを説明すると、川上さんは同意されていました。また、聴衆に語りかけるように、あと驚いたことは動物の経済状態によって毛の具合が違うんですよ!!動物園に行って色々な動物の毛を見ました、とも。

すると河野教授のところに蜂🐝が飛んで来ました。本にも出てきますね、と仰る河野教授でした。



◆ここからは今回の訳をするにあたって

川上さんは、ピーターラビットカフェによく行くんですが、ものすごいファンの方たちがいるので、無理です、という気持ちだったそうです。ノラ・ジョーンズ(歌手)の訳詞をしているので、早川書房の方はそれを読んで私のところに来て下さったのだろうと考えたと。訳の違いについて、石井桃子訳は素晴らしいです。だけど、古典はいろんな人の訳と時代によって読まれていくもの。いま、(全23巻のうち13巻まで刊行されたが)どっちも良いと言われる、それが嬉しいです、と。ピーターラビットは、やさしいけど厳しくてやさしい。ポターが読書家だったことも関係しているかもしれない。河野教授が、(ポイントは)終わり方ですよねと指摘。ハッピーエンドでもバッドエンドでもない。ちょうど真ん中くらい。曖昧であればあるほど人生を描いている。川上さんは同意して、はちまき巻いたピーターラビットが夢に出てくるんです(『黄色い家』の的屋と関連して)!とも。

擬声語 擬態語についてどう感じたかの質問には、川上さんは、おもしろいと思ったのは感嘆の部分だということでした。

漢字が多いですね?と教授に投げかけられると、川上さんは、好きな漢字・・・思う、とか。目でも楽しんでもらえるようにということを意識したということでした。

本の良さについて。ここで自分が味わっている感触。それが大切だと。今回のピーターラビットは、サラサラしたカバーが素敵、と本を手に取って話していました。


◆このあたりから会場の方から質問

これから文章を仕事にしたい人についてのメッセージ。文章を書きな〜、とサイン会でも話すのですが(つらい場面を書いている本を読んでくれるような読者なので、泣いてしまう方も多い、とも)、大事な本を何度も読んで下さい。なんでこの場面に感動するのか。そこを大事にしてほしい。それが自分の書いた文章に表れる。自分を信じて。今はインターネットで文章を公開できて、それに対する反応もすぐ返ってくるけれど、私はそうではなく、自分の書いたものを、完成するまで自分のなかで取っておいてほしい。その時間はとても贅沢で、大切なもの。完成したら、自分だけの部屋で書いたものを、文芸誌に応募して下さい。日本はたくさんの文芸誌があります。がんばってくださいね。このように仰っていました。

河野教授から、ジェームズ・ジョイスの話を控え室でしましたね。猫と悪魔、など、と話がありました。

若い方へのメッセージを下さいとの声に川上さんは、キャリアを重なると、助言をくれる人も減る。だんだん一人になっていくんです。新人であることはとても貴重なこと。挑戦すること、一歩踏み出すことは怖い。若い頃いっぱい失敗したから今回の翻訳に挑めた。若い時は、つらいですよね。生きてることはしんどい。恐れず、でも気をつけて。沢木耕太郎さんの言葉だったかな。いま感じていることを大切に。いまを積み重ねて下さい。そのように答えていました。

対談講演会の終了後には花束贈呈がありました。去り際に、書くことを仕事にしたいと仰っていた学生さんに、(がんばってね)とガッツポーズを送っていた川上さんが印象的でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?