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日常の医療ですらトリアージが必要なのか

カナダの医療が、日本に比べると大変アクセスしにくく、受診、検査がスローだということを書き続けてきた。

今日、クライアントのお祖母様(80歳代)と話をしていて、昨年秋にエコー検査を受けた時に腹部にそこそこ大きめのmassが見つかって、精密検査のためにCTを受けることになっていたのだけれど、まだ受けていないということが発覚。流石にこれはショックだ。CT検査のオーダーがあってからもう3ヶ月以上になる。

うーん。
普通に「がん」じゃないの?って思う。
血液検査は、異常なしだそうだが、年齢的に大腸がんとか子宮がんとかがあってもおかしくない。しかも、ここのところ、腰痛がひどいようだ。
お祖母様に、一体何でCT検査するのにそんなに待たなければならないのか?と聞いてみた。
するとやはり、
「私は年寄だし、検査機器や、スタッフ不足なので、若い人の検査が優先的に行われるのでしょう」
との返答。
なんとも、やりきれない。
命の重さに、軽重はない。高齢だから、検査は後回し・・・若くて将来がある人が優先的に治療を受けられる、っていうのはモヤモヤする。
つまりは、高齢で先がない人の治療は後回しになり、余命が長い若い人が優先。これって、一種のトリアージじゃないの?
カナダ、そこまで医療資源が不足しているのか。

そもそも、カナダではがん検診が74歳以上だと推奨されない。
というより、彼女は今まで一度もがん検診を受けたことがないそう。
(がん検診も、日本のように手軽には受けられない。定期健康診断や人間ドックもないし)
74歳以上ががん検診を推奨されない理由は、何か異常が発見された際、追加検査が身体的に負担になるので検査を受けるベネフィットとデメリットを考慮して推奨しないということらしい。(Cancer BCのwebsiteより)例えば、大腸がん検査で、便潜血が出たら次に大腸内視鏡検査を受けることになる。それが、高齢者だと負担だと・・・
その論理から行くと、仮に大腸内視鏡検査を受けてがんが発見されたとしても、治療するのは体に負担になるからなおさら治療も推奨されない・・・と読み取れる。だったら、最初からがん検診を受ける必要はない・・・と。

ちなみに、日本は、上限なし。
私は日本で、80歳代90歳代でがんが発見されて、手術や抗癌剤治療をする人をたくさん見てきた。完治した人もいた。早期発見で内視鏡切除した場合はかなりの確率で完治していた。大腸内視鏡検査、負担かもしれないけれど痛みはあまりない。下剤を飲むのが辛いぐらいだ。私の叔父や知人は80歳代で大腸がんが見つかって転移もあったが手術や抗がん剤を使ってそれから数年生きた。治療は辛かったかもしれないが、本人も家族もやってよかったと思っているはずだ。
超高齢患者に対する、過剰とも言える検査、治療には賛否あるし、本人が治療を希望しなかったり、治療効果に対して負担の方が大きいときなどは私も治療は勧めたくない。

調べてみると、カナダだけでなく多くの国で、がん検診の上限年齢は74歳のようだ。そこまで、医療にかける資源に限りがあるのか・・・日本が特別医療に関しては手厚いということは理解しているとはいえ、カナダはなんとかしようという気にはならないのだろうか・・・
日本みたいに、国民みんなが不老不死を願うっていうのもいかがなものかと思うが、他の先進国みたいに高齢者は癌になったら一律治療しないっていうのは倫理的にどうなのかな。あ、中国も70歳以上は手術適応じゃないって聞いたな。それで、知人の親が日本に来て手術受けて治ってた!保険効かないからすごい大金払ったらしいけど、がんさえ治れば普通に生活できる人だったから治ってよかった。日本だと、応召義務っていうのがあるからドクターは治療拒否なんて発想なかったけどなぁ。てっきり、世界的に普遍的な倫理だと思ってたけどどうやら日本だけだったのかも・・・

カナダでは、エコー1ヶ月、CT3ヶ月、MRI半年待ちなんて聞くことがある。
私自身は、80歳代まで生きようとは思わないけれど、今現在元気で、車も運転し、ひ孫の世話もし、うちの息子に英語も教えてくれるおばあさまのような人が検査も治療も受けられないというのがモヤモヤする。年齢で切られる姥捨て山みたいなものだ。

さらに、こういう話題になったときお祖母様にどう言葉をかけたらいいのか。これもモヤモヤする。
大丈夫ですよ、
心配です、
年齢に関わらず平等に検査を受ける権利があるのでは?
なかなか、いい言葉が出てこない。
しかも、カナダの現状は変わらないし、日本に近づくことは今後もないであろう・・・
なので、日本だったらその日のうちにCT検査受けられるのに・・・などといいたくなるけど、言葉を飲み込んだ。

友人のお母さんが、脳出血後に一時危篤になったが奇跡的に回復、しかし追い打ちをかけるように交通事故にあって意識障害状態になってしまった。胃ろうを増設し、長期療養病棟に入院(ほぼ全員寝たきりの患者さんばかりの病棟)。コロナのパンデミックが起きて、面会もできなくなり意思疎通もできず、もうダメかと思ったが、リハビリの担当者が積極的に関わってくれて奇跡的に意識が徐々に回復。コロナ後、面会可能となり家族と話ができるまでになった。これ、カナダだったらとっくに亡くなってたわ。

私の座右の銘は
あきらめない看護」なんだが、
カナダだと
「あきらめる看護」になりそう。




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