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生物多様性はなぜ大切なんだろう?

「人類は、野生生物の絶滅を食い止めなければならない。さもなければ、人類が絶滅の危機に瀕するだろう」- 国連報告書

100万種もの動植物が絶滅の危機に瀕している今、地球全体の安全性はかつてないほど高いリスクにさらされています。

「生物多様性」は、地球上の生命の総称ですが、現在の種が絶滅している早さは、地球全体の安定性を損なうほど危機的な状況です。

「人間が生き物を絶滅させている!?」/身近な環境問題 生き物の絶滅

環境省HP

生物多様性は、人類にとってどれほど重要なのでしょうか?

なぜ、地球の安定に生物多様性が必要なのでしょう?

以下に5つの理由を紹介します。


1.生物は、人類の生活基盤である自然生態系を支えている一つ一つである

1980年代、保全学者のポール・R博士.とアン・エールリッヒ博士は、種と生態系の関係を、鋲(ビョウ)と飛行機のウイングのようなものだと例えました。つまり、鋲の一つを失っても、すぐに大きな被害にはならないかもしれないが、その数が増えてくると、飛行機が墜落するほど深刻な問題を引き起こす、というものです。

アマゾンの奥地であろうと、東京のような大都市であろうと、人は水や、農業においての虫による受粉作業、土壌の肥沃さや安定した気候、医療など、自然生態系が提供する生態系のサービスに大きく依存しています。生物多様性が失われることで、地球の健全度が弱体化してしまうと、増え続ける人口の需要に反して、生態系サービスが産みだせるものはどんどん低くなります。

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その一例が、世界最大の砂漠の湖であるケニアのトゥルカナ湖です。植物性プランクトンが豊富で美しい緑色をした湖は、別名「翡翠の海」と称され、鳥たちやナイルワニ、カバなど、さまざまな野生生物の生息地であり、そして約30万人の食糧と収入の源でもあります。しかし、上流域の開発の影響で水が流れなくなり、周期的な干ばつ、降雨パターンの変化、乱獲など、湖は大きな圧力を受けています。こうした環境の変化は、生物多様性の喪失だけでなく、漁獲量を低下させ、人間生活の基盤を支える自然機能の低下につながりました。 保全対策を適切に実行しなければ、トゥルカナ湖だけでなく、さらに多くの生態系が同様の運命になってしまう可能性があります。

2. 生物多様性が豊かな生態系システムを保つことは、人びとの健康につながる

ウイルスの発生と自然の劣化は、実は密接につながっていることが様々な研究から分かっています。

新たに発生したウイルス性疾患の70%は、野生動物から人間に広がったものです。世界的な野生動物の取引や、開発の手が熱帯エリアへと拡大していくに従い、人間は野生動物や彼らが持っている可能性のある病気によりさらされやすくなっているのです。例えば、コロナウイルスのパンデミックは中国武漢市の家畜・家禽および海鮮市場が発生源であった可能性があります。

新型コロナウイルスのようなパンデミックを防ぐためには、「自然を大切にすること」

CIジャパンスタッフブログより

病原菌を抱えている蚊のような生き物が行動範囲を広げ、今まで感染することが無かった人々にまで病気を広げる原因になっています。

新型コロナウイルスのパンデミックを経験したことで、私たちは、病気によるダメージが人の健康だけでなく、世界経済にまで及ぶということを目の当たりにしました。地球の生態系システム織りなすひとつひとつの生物多様性を守る事で、世界各国は人の生活と経済を保ちながら、未来のパンデミックを防ぐことができるのです。

3. 生物多様性は、気候変動対策の重要な要素

地球の平均気温上昇を2℃以下に抑えるために必要とされる、大気中の炭素除去において、自然は解決に必要とされる排出量全体の30%以上を担うことができます。そして、生物多様性は「自然の力を活用した気候変動対策」の中で重要な位置を占めています。

世界の温室効果ガス排出量のうち、「森林減少」は、人間によって引き起こされる排出量の11パーセントを占めています。森林を維持すること、また再生することは、そのような温室効果ガスの放出を防ぐことになります。

木々や植物はまた、自らに炭素を貯蔵することができるので、植物全体を守ることはとても重要です。マングローブのようないくつかの自然生態系は、炭素を保持する機能が特別優れているという点で、気候変動に大きく貢献しています。 森林や湿地生態系は、気候変動によって引き起こされる極端な暴風雨や洪水に対して、大きな緩衝剤ともなりえるのです。

これらの生態系は非常に複雑なので、生態系すべての部分が適切に配置されていれば、最もうまく機能し、気候の変化に対してより回復力がある状態です。それは、つまり生物多様性も損なわれていないということです。

比較的小規模な投資でさえ、生物多様性の高い森林やその他の生態系を保全し、修復することができます。同時に、暴風雨や洪水、その他の影響にも地域コミュニティが対処できるようになります。


4.生物多様性には、経済効果もある


世界経済の少なくとも40パーセント、貧困層のニーズの80パーセントが生物資源から生まれています。

生物多様性の喪失が、現在のペースで続くとすれば、食品、商業林業、エコツーリズムの各産業は、年間3,380億ドルの価値を失う可能性があります。

一方で、「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」イニシアチブでは、天然資源への投資により、世界で持続可能なビジネスチャンスは2050年までの間に2兆から6兆米ドルの価値があると見積もっています。

何百万もの人々が、日常生活を送る上で自然や種に依存しています。 食料や燃料、医薬品、その他の天然素材から作られた製品を自分たちの生活に利用し、そして収入源にもなっている、発展途上国のコミュニティに特に当てはまります。 自然観光も多くの人々にとって重要な収入源です。


5. 生物多様性は、文化やアイデンティティと密接につながっている

種は、多くの場合、宗教的、文化的、そして国家的アイデンティティにとって不可欠なものです。 すべての主要な宗教には自然の要素が含まれており、231の種が142か国で国のシンボルとして正式に使用されています。 しかし残念なことに、これらの3分の1以上は、絶滅の危機にあります。例えば、ハクトウワシとアメリカバイソンは米国の象徴として、その役割のために保護された成功事例です。公園やその他の保護地域などの生態系も観光客にリフレッシュの機会と知識資源を提供し、生物多様性は芸術家やデザイナーたちにインスピレーションを与え続けています。



※クリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金
日本政府、世界銀行、地球環境ファシリティ、フランス開発庁、欧州委員会、コンサべーション・インターナショナルが共同で出資・運営する、生物多様性ホットスポット保全のための国際基金

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