新型コロナウイルス感染症における妥当な水際対策とは?外国人のみを対象としたPCR検査は必要か?

※Disclaimer:筆者は感染症の専門家や医師ではなく、PCR検査の正確性や科学的性質等に関し、正しくない情報を発信している可能性があります。公的機関や感染症専門家の発信する情報をまず確認頂きますようお願い致します。

先日、外国人にのみ入国時に「出発72時間前のPCR検査」を求めている事の不当さについてエントリを書いた。その後、以下のような報道が立て続けにあった。

ひとつめの読売新聞の記事はジャカルタ発関空着便の乗客17名が、出発前検査では陰性だったが、到着後の空港検査時に陽性と判明したというものだ。ふたつめのNHKの報道は、海外から入国する人に対して日本政府はバスや電車等の公共交通機関を使用せず、自家用車等で帰宅する事を求めているが、その要請に従わない人がいるというものだ。この2件の報道を受け、何を感じるだろうか?私は以下の2点をまず考えた。

① 出発72時間前のPCR検査の有効性に疑義があること

② 入国後の行動に関する政府からの要請が守られていない事例があること

一点目についてだが、PCR検査による陰性の確認は時系列上のある一点における感染状態の確認でしかない。72時間前に検査を受けたとしても、その後出発までの3日の間に新型コロナウイルスに感染する可能性があるということだ。また、ある時点で陰性であったことは「非感染の証明」ではない。感染していても感染初期のため陰性と出てしまう可能性や、偽陰性の可能性があるからだ(※1、2)。また、検査証明書については所定のフォーマットを使うよう求めているが、Wordのファイルを紙に印刷して、医師に記入してもらうという仕組みなので、お世辞にも偽造防止策が取られているとは言い難い。

二点目について、現状日本への入国者に対しては国籍問わず(そこは良い点だ)、14日間の待機要請と、公共交通機関を使わずにその隔離場所まで行く事を政府は求めている。しかし、これはあくまで「要請」であって、法律に基づく罰則や強制性は無い。特に自宅が首都圏では無い人や、独身の人に対し「公共交通機関を使わずに自宅に帰って下さい」というのはかなりハードルが高いのではないか。空港からの送迎をやってくれる専門のタクシー業者はあるようだが、成田から都内までは2~3万円とかなりの金額がかかるし、この事例のように東北地方在住の人はそもそもタクシーでは帰れないだろう。送迎してくれる家族がいなければ、駄目だと分かっていても公共交通機関を使ってしまう人も出てくるのは止むを得ないのではないか。

勿論ルールを守らない人が悪い事は言うまでも無いのだが、モラル的な観点はさておき、ではどうすればより実効性のある水際対策を行う事ができるのだろうか。水際対策の重要性については厚労省も政府分科会も強調しており、私個人もそこに見解の相違は無い。となると、実効性の高い水際対策とは、恐らく以下のような方法がより現実的なのではないだろうか。

① 出国前の検査証明は求めない

② 入国時に空港でPCR検査を実施

③ 上記検査で陽性が判明した人は医療機関や指定ホテル等に隔離

④ 陰性の人も空港周辺のホテルに隔離し、14日間外出禁止

⑤ 自宅隔離を認めるのであれば在宅確認のための何らかの監視方法を導入

「いや、非感染証明としての実効性に多少疑義があっても、やらないよりは効果があるのだから、出発72時間前のPCR検査は廃止すべきではない」という意見もあるかもしれない。それならば、日本人だって感染を広める可能性があるわけなのだから、日本人入国者に対しても一律に検査を求める事が重要だろう。

前回のエントリにも書いたが、私はなにも「外国人に対する入国措置を緩和せよ」と言っているわけではない。外国人に対して「のみ」検査証明書の提出を求めるのは差別ではないか?公衆衛生の観点から果たして意味があるのか?という事を問うているのだ。公衆衛生の観点からは入国する人の「国籍」が問題なのではなく「どこから来たのか」が問題なのではないだろうか?これに異論のある人がいるだろうか?

足元の10月における外国人の日本への入国者数は27,000人だった。日本人「入国者」の数字は遂に発見する事ができなかったが、10月の日本人出国者数は31,000人だった。仮に同数の日本人が入国しているとすれば、外国人よりも日本人の方が多いのだ。私は早く新型コロナウイルス感染症が落ち着いて欲しい。であるからこそ、外国人に対してだけではなく、日本人入国者に対しても、実効性のある水際対策を講じて欲しいと思うのだ。

※1:「抗体検査・抗原検査・PCR検査 どう使い分ける?(忽那賢志)」

※2:「COVID-19 Testing in Asymptomatic HCW FAQs(Santa Clara Valley medical center)」


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