サロメはファム・ファタールなのかという話

サロメが面白い。
先日読んでからずっと反芻している。
何が面白いって、挿絵のエロドの顔が面白い。

「エロドの眼」と題されている挿絵。

サロメのことを見つめているところが描かれているのだと思うが白目である。この目といい口といい、非常に趣があって好きだ。ビアズレー、琴線に触れまくりである。

ところでサロメはファム・ファタールの代表格としてその名を聞くが、私はいまいちファム・ファタールという概念が腑に落ちてないのでホントにそうなのかなんだかよく分からない。

調べてみれば「男性にとって運命の女」というのが元々の意味であるが「男を破滅させる魔性の女」という意味合いが現在では強いようだ。

ではファム・ファタールだとして、サロメは誰を破滅させたのか。

ヨナカーンの首を取っているがヨナカーンは破滅させられたという感じはしない。なんというか、ただ殺されているだけである。
勝手に惚れられて勝手に殺されている。ヨナカーンも大概クセが強く、さらに預言者ということで死ぬ覚悟も決まっており、サロメの魔性性によって破滅したというよりはサロメが運んできた運命を受け取ったように見える。

なのでファム・ファタールとした場合、対ヨナカーンについては人生を終わらせにきているだけなので本来の意味の「運命の女」と位置付けるべきだろう。こうみえて予定調和なのである。随分過激ではあるが。

エロドの場合はどうか。彼も破滅させられた、という感じはないと思う。ただすんごい恥をかかされている感はあるので、それを破滅と言うのであればそうかもしれない。
最後にサロメを殺してみせたとはいえ、男女の位置付けに格差があった時代である。嫁の娘にいいように翻弄される一部始終を従者たちに見られたというのはなかなかキツい。
エロドはサロメの魔性性に惑わされた描写もあるので長い目で見れば「男を破滅させる魔性の女」という定義にも当てはまるかも知れない。

あと作中、サロメに翻弄されたのは親衛軍の隊長になったばかりだという若きシリア人だ。
サロメの美しさに目を離せなくなり、サロメの願いを叶え、自害する。
この件はしっかりとサロメがファム・ファタールである、と言い切れるケースであろう。サロメきっかけで、サロメの意思とは関係なく魔性性で破滅している。なるほど、こういうのがファム・ファタールか。

ということで私なりに「サロメはファム・ファタールなのか」ということを考えてみた。

令和に中年として生きる女性である私がサロメを読み、ファム・ファタールを定義するとしたら、「全然言うことを聞かない、欲しいものは欲しい美人」かな、と思う。サロメに限らずごまんといるわ、そんな女。
でも確かに勝手に美人に入れ込んで勝手に身を滅ぼしていく男もごまんといるので、ファム・ファタールというのは特別なものではなく、やられた男性が勝手に「アイツは俺のファム・ファタールだったな」とか言って特別な女にするワードとして考えればいいのかもしれない。非常に男性目線の言葉だなぁと思う。

みんな誰かの特別!ファム・ファタールなんだよ!だからみんなサロメなんだ!

え?こんな雑なシメで大丈夫?

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