見出し画像

倒産抑制でひずみ蓄積 21年、政府支援で57年ぶり低水準

 2021年の企業倒産は6000件超と1964年以来57年ぶりの少なさになったもようです。

 企業倒産が歴史的な低水準となっており、新型コロナウイルス禍2年目の2021年は6000件超と1964年以来57年ぶりの少なさになったようです。
 政府や金融機関が約55兆円の融資で資金繰りをつないでしますが、その半面、中小企業の返済能力は約10年ぶりの水準に低下し、返済の本格化で息切れする懸念も強まっています。
 そうなって当然でしょう。
 政府は、お金のバラマキだけを勧め、経済向上のための政策を何一つして来なかったことが、てき面に表れているのですから。
 オミクロン型が流行すれば倒産を抑え込むひずみがさらに蓄積しかねない。
 21年の倒産件数はコロナ禍が始まった20年に続いて2年連続で減ったもようです。
 1964年の4212件に次ぐ低水準。東京五輪に向けた建設需要や消費拡大で倒産が少なかった当時とは異なり、政府の資金繰り支援で倒産を抑制しています。

 政府は20年5月に、政府系金融機関のみだった実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の担い手を民間金融機関に広げています。
 債権が焦げ付いても信用保証協会が代わりに弁済するため、金融機関が積極的に融資に乗り出し、20年1月から21年12月下旬までの中小企業向けコロナ融資の承諾額は政府系と民間合わせて約55兆円に達しています。

 月次の支援金や雇用調整助成金、飲食店向けの時短協力金などの補助金も企業の資金繰りを支え、財務省の法人企業統計調査によると、21年6月末の企業による借入金は前年比37兆円増えた一方、手元資金も9兆円伸びたと発表されています。
 倒産減少は世界的な傾向で、米国破産裁判所に申請された企業倒産は21年1~6月に前年同期比32%減ったそうです。
 倒産を政策効果で強引に抑え込んでいるのが実態だが、こうした資金繰り支援はいつまでも続くわけではないのは、当然のことです。
 「ゼロゼロ融資の返済が本格的に始まる22年以降、企業倒産が増勢に転じる可能性が高い」のは、明らかでしょう。
 予兆はデータから読み取れ、日本政策金融公庫によると、元金の返済が始まった企業は21年9月時点で56.4%。一方、条件変更や追加融資を実施した先は7.7%で社数にして約5万先にのぼり、政府系金融機関の支店職員は「返済が始まるタイミングになり、飲食店でポツポツと倒産が出始めてきた」と明かしていますが、返済不可能になったお金はまた国民の税金に上乗せされるのでしょう。
 完済などを除く残り34%の据え置き期間中の融資先のうち、21年9月末時点で据え置き期間を「6カ月以内」とするのが34%、「6カ月以上1年以内」が31%と、約7割が融資から1年以内に元金を返し始める契約を結んでいるが、22年春以降、こうした企業の返済も始まり、ゼロゼロ融資は金利負担はないものの、返済負担に耐えられない企業が増えるのは一目瞭然でしょう。 
 ゼロゼロ融資は上限を超えて何度も利用できず、21年度に入って信用保証の利用は急減しており、すでに上限まで借りた企業が多いことを示唆すると、保証付きで貸し倒れリスクがないため積極的に融資に応じてきた民間金融機関も保証なしの自前融資には二の足を踏むことはまず間違いないでしょう。
 追加の借り入れができても過剰債務を抱えることになり、再生の足かせになりかねないことは、明白ですね。

 法人企業統計調査によると借入金から手元現金を引いた実質有利子負債をEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で割った返済能力は、資本金1億円未満の中小企業では21年3月末に5.4倍と12年3月末以来の水準に悪化しています。
 返済能力低下の主因は稼ぐ力の落ち込みです。
 21年7~9月期の売上高をコロナ前の19年7~9月期と比べると、全規模・全産業で7.4%減り、業績が堅調な製造業に比べ飲食業や宿泊業などの非製造業は過酷な状況となっています。
 資本金1000万円以上1億円未満の宿泊・飲食サービス業に限ると31.9%減で、稼ぐ力の悪化が顕著です。
 日本公庫のデータでも、飲食業に限ると条件変更と追加融資に応じた先は9.5%に増えています。
 「N値が100を超える企業があり腰を抜かしそうになった」。あるメガバンク関係者は、N値は借入金を毎年の収益力で割ることで求め、債務を償還するまでの年数を示し、N値が100なら返済までに100年かかる計算になります。
 国はゼロゼロ融資の期限を22年3月末まで延長するなど資金繰り支援を続けているが、過剰債務に陥る企業が増えるなか公的融資の延長で抑制するだけでは問題の解決にならないでしょう。
 自民党の金融調査会は21年12月、過剰債務を抱える企業の負担軽減策を検討すると表明し、政府にも協力を求めています。
 オミクロン型が流行すれば追加支援となる可能性があるが、うまく経済を回しながら感染を抑える方策をとらなければ、ひずみの解消はされないでしょう。
 また政府は、コロナウイルスの責任にして、まるで自分たち政府は自陣力を尽くしたかのような発表をするだろうが、自分たちのやり方が間違っていること、国民や企業の言葉に耳を傾け、自分たちの足で現場に足を運ぶ、自分たちの目で見ない限り、現状はなかなか理解できないでしょうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?