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生命保険はここまで活用してはじめて意味がある。 「老後対策」の8つのポイント

活用しよう死亡保険金の「非課税枠」

 生命保険は相続全般において欠かせない対策です。
 特に相続財産が2億円までの場合、生命保険を活用すれば十分と思えるほど対策ができます。
 なお、相続においては、終身保険と言って、生涯、死亡保険金額が変わらない保険を利用します。
①まず、何を目的に保険に入るか検討します。
相続税対策なのか、配偶者の老後の生活資金対策なのか、納税資金対策なのか、遺産分割対策なのか、はたまた内縁の妻や甥や姪にお金を渡したいのかなどと複数の目的もありえるのですが、まず、これを考えます。
②最もシンプルな相続税対策は、死亡保険金の非課税枠の活用です。
保険料負担者と被保険者が同一で受取人が相続人である死亡保険金には、500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。
 この非課税枠は受取人が一人だけの場合も全員分が利用できますので、必ず残さず使い切ってください。
 2018年の生命保険文化センターの調査では、この非課税枠を知っている人は38.5%と、まだまだ少数派です。
 例えば、死亡保険金の非課税枠は相続人が配偶者と子2人の場合は保険金1,500万円までが非課税です。
 相続財産が相続税の基礎控除ギリギリの場合、現金預金1,500万円を保険金1,500万円に置き換えることにより相続税の基礎控除の範囲内におさめて、相続税の申告を不要にできないかを検討します。
 保険会社によっては、90歳近い方でも一時払終身保険に加入できます。
 この場合、保険料と保険金の差額はほとんどないのですが、保険料負担者と被保険者を被相続人にすることにより、この非課税枠を利用できます。

保険金で「相続税を支払いませんか」?

③一般的に保険金受取人は配偶者でなく、子にすべきとされていました。
配偶者には、最低でも相続財産1億6,000万円までは相続税がかからない「配偶者の税額軽減」があるからです。
 子にはこの軽減措置がありませんし、子育て(親からみたら孫)でお金が必要な場合が多かったからです。
 しかし、時代は変わり、老老相続が主流の現在、子育てが終わっている場合が増えてきました。
 また、2019年時点の65歳の平均余命が男性19.83年、女性24.63年(厚生労働省簡易生命表)と、90歳を一つの目安として老後の生活資金を考える必要が生じています。
 先に妻を亡くした夫の場合、残された時間は夫婦間の年齢差からも短いのかもしれませんが、先に夫を亡くした妻の場合、残された時間は20年を超える場合もあります。
 残された妻に不自由のない生活費を残してあげたいと思うならば、非課税枠にこだわらない金額の保険に加入してあげてください。
 年金として生涯受け取ることも可能です。
 なお、遺言により、受取人を内縁の妻や甥や姪に変更するのは可能です。
 遺言執行者(遺言書で指名できます)から保険会社に必ず通知するよう、遺言書に明記してください。
④相続税は現金支払いが原則です。保険金で相続税を支払いませんか?
物納や延納といった制度はありますが、必ずしも認められるわけではありません。
 自宅が主な相続財産である場合、概算でもいいので相続税を考えた保険加入を検討してください([図表1]相続税額早見表参照)。

 この場合、二次相続での相続税もあわせて検討してください。
 たとえば、契約者(=保険料負担者)=保険金受取人:父、被保険者:母の契約です。父が先に亡くなった場合、解約返戻金の額で母に相続されますが、通常、解約返戻金の額<支払保険料総額なので、差額だけ相続財産が減少します。
 しかも、次に母が亡くなった場合(二次相続)、500万円×法定相続人の数の非課税枠が使えます。

子や孫に「生命保険に加入してもらう」という選択肢

⑤最近の相続では兄弟姉妹の平等が一般的になりつつあります。
長男が多くを相続することは少なくなりました。そのため自宅が主な相続財産である場合、遺産分割を円滑にするために、相続人のうち誰か(例えば兄)が単独で自宅を相続し、他の相続人(例えば弟)に現金(代償交付金といいます)を渡します。生命保険をこの代償交付金の準備に利用します。
 注意しないといけないのは、保険金受取人は代償交付金を支払う相続人(兄)にする点です。代償交付金を受け取る相続人(弟)ではありません。死亡保険金は受取人固有の財産と考えるからで、代償交付金は兄から弟に渡す必要があります。
 なお、2019年7月から遺留分侵害額請求権が金銭で解決されることになりました。
 この結果、死亡保険金の重要性がより増したと言えます。
⑥法人を経営している方は、法人で保険に加入できないか検討します。
契約者:法人、被保険者:経営者、保険金受取人:法人とし、法人は受け取った死亡保険金から経営者の遺族に役員退職金を支払います。
 その退職金には、500万円×法定相続人の数の退職金の非課税枠が適用されます。これは保険金の非課税枠とは別枠です。
 法人が契約する場合、終身保険以外に、長期定期保険、逓増定期保険、養老保険と検討できる保険種類が増えます。
⑦保険料相当額を子、孫や兄弟姉妹に贈与して、子、孫や兄弟姉妹に生命保険に加入してもらうのはよい方法です。
この場合、子、孫や兄弟姉妹自身を被保険者にするのでもいいのですが、被相続人を被保険者にして、子、孫や兄弟姉妹に、保険料負担者=保険金受取人の形で保険金を渡すことも検討してください。
 保険金受取人としての子、孫や兄弟姉妹の一時所得となりますので、子、孫や兄弟姉妹は受取人単独で所得税等の確定申告ができます。
 相続税申告のようにいっしょに申告しなくてもよくなります。
 近親者にお金は渡したいけれど、相続財産の総額を知られたくない場合もあるのです。

「親が認知症」贈与の継続ができなさそうなら…

⑧親から保険料の贈与を受けたいけれど親の年齢の問題があり、認知症で贈与が継続できないことを心配する方も多いです。
対策として、一時払終身保険の利用が考えられます。
 いったん契約者=保険料負担者=被保険者:親、受取人:子として保険に加入します。
 その後、契約者を子に名義変更をします(保険料負担者=被保険者:親、契約者=受取人:子)。
 保険料支払は終了しており、もし、その後、子に資金の必要性が生じて保険を減額して受け取る減額払戻金は、贈与税の対象にはなりますが、子の資金調達は可能となります。
 もちろん、贈与税の基礎控除も使えます。契約者は子に代わっていますから、親の認知症は関係ありません。毎年の減額は子の判断で可能となります。

◎ポイント
❶保険加入の目的を検討します。
❷死亡保険金の非課税枠を活用します。
❸受取人をだれにするかを検討します。
❹相続税の納税を検討します。
❺代償交付金の必要性を検討します。
❻法人契約の可能性を検討します。
❼保険料の贈与を検討します。
❽認知症対策を検討します。

最後に

 この対策をしっかり行っていたら、生命保険を有効活用したことになると思いますので、是非、参考にして下さい。
 尚、注意点としたら日本の経済情勢などが悪くなれば、保険会社も経営状況が厳しくなります。
 そうした場合、また対処を考えなくてはならないと思います。



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