No.29 今日も一日頑張ろう

ブリだ。漫画「金色のガッシュ!!」でガッシュがよく抱えていた、あのイキが良く大きなブリだ。

絶賛登園拒否中の2歳3ヶ月の息子は、私の腕の中で泣き叫びながら必死に体を仰け反らせている。それなりに大きくなった体でビチビチと暴れる姿はまさしくガッシュのブリだ。
紺色のジャンプスーツを着ているのでなんとなく色も似ている。

出勤を前にして疲れきっている私は息子を無事に保育園に送り届けることだけを目標に、無心で雪道を突き進んだ。
頭の中では常にブリを抱えたガッシュが共に走っている。

保育園を目の前にして息子の抵抗はより強くなり、両手で何度も私の顔面を叩き始める。その衝撃で、金子眼鏡店で約6万円で購入したメガネが道路の真ん中に落下した。幸いメガネは無傷だが、私の心は生卵を床に落としてしまった時のような何とも言えない虚無感で溢れていた。

息子はと言うと、ひとしきり暴れて気が済んだのか、5メートルほど先にいるカラスを指さして「かーかー!」と嬉しそうに声を上げている。 
そしてそのままご機嫌に保育園へ入っていく息子。
朝の重大ミッションはクリアした。

身軽になった体を揺らしながら職場へと向かう。
空は青く澄んでいて気持ちがいい。
これで一日が終わりだったらいいのに。悲しくもこれは始まりに過ぎない。残酷な現実だ。

何が君の幸せ? 何のために生きるのか?
子供の成長、と言われればその通りで、確かに日常で見られる小さな成長のひとつひとつに毎日感動している。
しかしだ。
どんなに美味しいカレーも毎日続けばチーズやオムレツをトッピングしたくなる。
子供の成長はもちろんとして、その他に自分を喜ばせるための「なくても生きていけるけどあったら嬉しい」トッピングが欲しいのだ。

最近私が得たトッピングは「異次元フェス」の配信チケットだ。アイドルマスターとラブライブ!の合同ライブである。
配信は2日間、各日4時間もあるので、約1週間のアーカイブ期間があっても高確率で私は全編を楽しめない。
それでも見たかった。断片的でもいいから感動を得たかった。

やはり両日全編を堪能するまでの時間は取れなかったが、私はチケットの購入を後悔していない。断片的でも、それほどに素晴らしいライブだった。

異次元フェスは心の栄養になくてはならないものだった。
なくても生きていけたはずだけど、得たあとに「これがあったから今日も頑張れた」と思える幸せはこれからも追い求めていきたい。

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