見出し画像

自民総裁選 真の争点

〇実施の時期が迫った自民党総裁選とこれと密接に絡む衆議院選挙をめぐって、報道がかまびすしい。菅総裁(首相)は、2021年9月17日告示、29日投開票と決まっている総裁選を先送りし、来週前半にも実施する自民党役員人事後の9月中旬に衆院を解散するのではないかという観測がもっぱらでした。しかし、菅首相は、9月1日のぶら下がり会見で、いずれも明確に否定しました。この結果、総裁選がらみで最も注目される動きは二階自民党幹事長が5年間続けてきたその職を辞す(菅首相と会談、好きに人事をやってくださいと言ったという)ということと、その意味であります。

〇二階幹事長は安倍政権以来5年間幹事長を続けており、「長すぎる」「横暴だ」などの批判が党内の若手議員らからあるというほか、自民党総裁選に立候補を表明した岸田前政調会長が立候補演説の中で、党役員は1期1年とし、連続3期までとするという党改革案を提案しました。菅首相は、これは大きな争点になりうるー岸田氏の支持が広がる要素になるーと警戒し、いわば岸田氏提案の争点つぶしとして、有力な菅支持者である二階氏を「切って見せた」というのが大方の見方のようです。

〇私は、総裁選挙で、総裁そのものの在任が長すぎる、というならともかく、幹事長の在任期間をいわば身内の側が問題にし、それを切って捨てることで、党内のストレス解消を狙うとは、何たる姑息、情けないことかと思いました。総理大臣候補を決める自民党総裁選挙には、もっとふさわしい争点がある。混迷している日本政治をただすために議論すべき争点があるはず、と思いました。

〇そのことを考えるのに持って来いの材料がありました。8月28日の朝日新聞夕刊に掲載された、福田康夫元首相のインタビューです。福田康夫さんは「角福戦争」の一方の雄・福田赳夫元首相の息子で、森、小泉内閣の官房長官を4年間務め、第1次安倍晋三首相の後1年間首相を務めました。

〇菅内閣はコロナ対策、特にワクチンの国民への接種で各国に遅れを取り、国民の大きな不満を買っています。また、アフガニスタン問題では、日本大使館や日本関連の組織へ長年協力してくれ、そのことでイスラム過激派のテロなどの心配のあるアフガニスタン人を退避させることができず、国際的信用が揺らいでいます。どうしてこんなことになるのかー福田元首相は、「有事の危機管理体制になっていないことが最大の原因だ」と言っています。

〇政府の新型コロナ対応では、司令塔が誰かもわかりにくい。危機管理全般を担う加藤勝信官房長官とは別に、コロナ対策は西村康捻経済再生相と田村厚生労働相が、ワクチンの調整は河野太郎行政改革相がそれぞれ務ます。船頭多くして船山に上るーそんな状況にあるように見えます。
この状況について福田氏は言う。「司令塔はシンプルである方が迅速に事が運ぶ。危機管理は、各省庁が瞬時に動けるように指揮命令系統と責任の所在を明確にすることが要諦です」
「現場の総司令官は事務次官です。その司令官が安心して懸命に働くという気持ちを失ってしまったのではないでしょうか」

〇2014年に安倍政権下で発足した内閣人事局は、600人を超える各府省幹部の人事を一元管理するとともに省益より国益を重視する職員を登用することが目的でした。だが運用の過程で官邸による官僚人事の介入を決定的に強めた結果、霞が関に「忖度」の風潮が広まったと指摘されます。

〇これについて福田さんは言う。「事務次官の権威を保つのに重要なのは人事権です。その人事権をごぼう抜きするような内閣人事局の運用であってはならない」
「コロナで危機管理体制の重要性が高まりました。官僚の知恵なくして危機管理はあり得ない。国家の命運を担う官僚に気概と気迫を持ってもらうよう政官関係をいかに再構築するか。政治の役割として、今こそ考えてほしい」。
〇政治にどういう姿勢で向い、戦後の日本の再建に大きな役割を果たした官僚をどう生かすか、まずそこからとりくんでほしい。こういうことをするかどうかが、総裁選の新お争点です##

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?