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擁護すべきか否か“円安問題巡る黒田日銀総裁発言”

〇2022年」4月、新年度に入ってからの日本の最大のニュースは、異様なスピードで進む「円安」問題です。もちろん、異様な円安=異様なンフレ促進をもたらすこが心配されており、それによって、円安というマクロ経済の難しい問題が庶民にとって直接生活を脅かす、身近な「悪者」にもなっています。2022年6月6日、東京外国為替市場で円相場は1ドルに対し、135円台という23年8カ月ぶりの下落となりました。

 

○さて問題は、この円安に正しく対処することであり、いや、一挙に正しく対処できないにしても(難しい問題ですから)、正しく対応するために正しく議論することが肝要です。日本ではそれが果たしてできているでしょうか。日銀の黒田総裁がこの問題について発言し、庶民の生活を知らないと新聞等にたたかれ、発言撤回に追い込まれた“事件”を題材に考えてみましょう。

 

○黒田総裁は6月6日の講演で、家計の物価に対する見方について、「家計の値上げ許容度が高まってきている」との見解を示しました。6月7日の朝日新聞によると、黒田総裁はさらに、値上げ許容度が高まっている理由について、仮説と断ったうえで、コロナ禍で家計の貯蓄が積み上がっていることを挙げました。そして「日本の家計が値上げを受け入れている間に、良好なマクロ経済環境をできるだけ維持し、来年以降の賃金の本格上昇にいかにつないでいけるかが、当面のポイントだ」として、金融緩和を続ける考えを改めて示しました。

 

○この朝日の記事は、黒田発言を正確に伝えることに腐心した冷静なものでしたが、黒田発言をめぐる環境はあっという間に悪化し、国会で野党を中心に厳しい追及がされ、マスコミもそろって批判のの声を上げました。 6月9日の毎日新聞は、「黒田日銀総裁発言に批判続々」「値上げ受け入れていません」と大きな見出しを掲げ、落語家の立川段四楼さんが、「目の前に居たら、『もう一遍言ってみろ』と怒鳴りつけるところだ。早く札を刷って、ばら蒔け!」とツイートしているのを紹介しています。

 また東京新聞は6月8日の社説や6月11日の「議論の森」というコラムで、黒田発言を「耳を疑う発言だった」などの最大級の表現で腐しています。一番言いたいのは見出しに使われた「暮らしを見ずに語るな」ということのようで、黒田氏に「まず小売店に自ら出向いて、人々の話を直接聞くべきだ」としています。

 

○このように円安問題のような大きな経済問題について、国民が大きな声を上げて批判すること自体はとても良いことだと思います。しかし、批判の中身が「お札を刷ってばら蒔け」とか、「日銀総裁は小売店にに行って、庶民の意見を聞け」とか、感覚的、感情的であることが気になります。円安問題は、国民個々人では対応できず、国単位で対応すべき問題です(国際的な協力も不可欠)。そして日本国として対応策を考える時、まず日本の現状を把握・分析することが必要であり、マクロ経済学の理論を把握することも前提です。

 

○注意深く各紙を読むと、実は、黒田総裁の考えを評価する意見も散見されます。たとえば6月9日の日経・株の動きの解説欄(スクランブル)の「日本株に脱デフレ期待」「『値上げ恐怖症』克服近いか」の記事。37行5段の記事がびっしり。読むと、黒田総裁が言いたかったことがそのまま書いてあります。

 

○日銀は6月17日、政策決定会合を開き、大規模な金融緩和の継続を決めたました。アメリカを始め、各国が利上げに進み、急速な円安や株安傾向が進む中、、現状維持だけで日本経済の安定が保てるのか。私にはわかりませんが、6月19日の「朝日」の社説が言う如く「日銀は検証を急ぎ(現状分析!)、

先行き指針の再検討など、的確な対応をとる必要がある」ということですね。##

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