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論議しているか日本の安全保障

〇岸田首相は2022年6月26日から30日の日程で外遊し、ドイツで開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)などに参加しました。参院選が6月22日公示されたばかりで、首相が国政選挙中に5日間も外遊するのは珍しいとされました。しかしそんなことより、岸田首相が、G7サミットに続いてスペイン・マドリードで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に初めて出席するのが問題です。今回のNATO首脳会議は行動指針に当たる「戦略概念」を12年ぶりに改定するという歴史的な場になるということです。そこへ岸田首相は「パートナー国」という立ち場で、日本の首相として初参加するのです。
端的に言うと、そこまで日本がNATOに肩入れしてしまって良いのか、という問題です。しかも、新聞などを見ても、そのことについてはほとんど論議もなくやり過ごされています。
 
○今度の参院選挙では、最大の争点は安全保障問題だとされ、野党含めほとんどの党が抑止力(つまり、軍備です)の強化を言います(共産党、社民党などの例外がありますが)。しかしその中身たるや、NATO諸国が国防費をGNPの2%まで上げていくというので、日本もそれに倣ってそうする、というような類ばかり。
 
〇そう思って憤慨していましたら、明快な論考が出ました。6月24日付の「日刊ゲンダイ」の「注目の人直撃」の欄に掲載された、元外務省欧亜局長・東郷和彦氏のインタビュー。日本の安全保障について、我々が知りたいことを真っ向から論じているので、驚くやら、うれしいやら。
 
○日本の安全保障といっても、つまるところ、ロシアのウクライナ侵攻で始まった今度の戦争を
どういう形で(領土問題など)、どうやって(プーチンを追い落とすのではなく)停戦に持ち込むか、ということにつきます。日本国民の多くが、朝6時か7時のニュー―スでウクライナ情勢を見て、戦争がとんでもない進展を遂げている(ロシアの圧勝、とか)のではないことにほっとしていることからも、そのことは自明でしょう。
 
○ここからは、戦争を辞めるためにはどのように考えるか、東郷氏の思考の紹介です。
東郷氏「プーチン氏は戦闘をできるだけ早く止めたいんだと思う。戦争がいつまで続くかは、プーチンにかかっているのではなく、ゼレンスキーとその背後にいる米国とNATOの武器供与のやり方いかんにかかってきているんじゃないか。
 今の僕の最大の関心は、戦争を終わらせるために『ウクライナの正義』が勝つまで戦うのか、。プーチン体制が存続しても、『一刻も早く平和』を実現するのか、どちらになるのかという問題です」
 
○―ウクライナを勝たせなければならない。悪のロシアは処罰を受けなければならない、というのが欧米や日本では主流ですが(ゲンダイ誌の質問)
東郷氏「『それで本当に戦争を辞められるのか』という意見が増え始めているように見えます。エマニュエル・トッド(仏歴史学者)、キッシンジャー(元米国務長官)等々。ニューヨークタイムスは『決定的な勝利は現実的な目標ではない』と痛烈な批判を始めました」
 
○-そんな中で日本は、NATO首脳会議に岸田首相が出席すると表明しました。対話よりも武力による抑止、という空気です。
東郷氏「エマニュエル・トッドは5月31日の日経電子版で日本について、『目の前に恐怖のある欧州はまだしも、この戦争は日本の問題ではない』と喝破しています」
 
○ここまで述べて東郷氏は、「日本の対外政策については、抑止自体は必要だと思う。しかし、抑止は必ず対話とペアでないといけない。この二つは切り離せない。それをwすると、危険なことになる」としめています。
 
○岸田首相、参院選目当てで、国際会議で勇ましいことを言うのはやめて下さいよ##

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