浮 浪(中原中也)
私は出て来た、
街に灯がともって
電車がとおってゆく。
今夜人通も多い。
私も歩いてゆく。
もうだいぶ冬らしくなって
人の心はせわしい。なんとなく
きらびやかで淋しい。
建物の上の深い空に
霧が黙ってただよっている。
一切合切が昔の元気で
拵えた笑をたたえている。
食べたいものもないし
行くとこもない。
停車場の水を撒いたホームが
……恋しい。
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私は出て来た、
街に灯がともって
電車がとおってゆく。
今夜人通も多い。
私も歩いてゆく。
もうだいぶ冬らしくなって
人の心はせわしい。なんとなく
きらびやかで淋しい。
建物の上の深い空に
霧が黙ってただよっている。
一切合切が昔の元気で
拵えた笑をたたえている。
食べたいものもないし
行くとこもない。
停車場の水を撒いたホームが
……恋しい。
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