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GXによる新製品・新サービス開発投資への支援

1. 省エネによるコストダウンから新製品開発のための設備投資へ

省エネ法は、40年以上前に、石油などのエネルギーを効率的に使用することいわゆる(省エネ)を企業に求めるために成立しました。我が国経済が、輸入の大部分を占めていた中東からの石油の高騰に大打撃を受けたからです。その主旨にしたがって、設備投資による省エネを促進するためのいわゆる「省エネ補助金」が、毎年数千億円支出され、企業の省エネ活動を大きく支援してきました。

このように長い間、わが国企業のエネルギー使用効率化に大きく貢献した省エネ補助金は「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」(区分C:指定設備導入事業)でした。 参照:一般社団法人環境共創イニシアチブ

しかし、2020年の我が国のカーボンニュートラル宣言を機に、この省エネの目的に加えて、脱炭素支援の使命が加わった「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」(区分A:先進事業、区分B:オーダーメイド型事業、区分D:エネルギー需要最適化愛作事業)が新たに創設されました。

この事業は、チャレンジする企業への投資を促す資金と位置づけられます。非化石エネルギーの利用により、CO₂排出量削減を進め、カーボンニュートル(CN)を達成するという難しい課題克服は、わが国経済の構造改革を進める好機になります。
2025年以降には、折り曲げられる次世代型電池であるペロブスカイト太陽電池を建屋の壁などに設置し、CNを目指す企業への支援も期待されます。

2.コストダウンと投資回収の違い

企業にとって、省エネによるコストダウンを実現すれば、前年に比べてこの年の利益は向上します。省エネをしなかったとしたら、その分の利益は増えません。
一方、省エネによる設備投資とは、将来の新事業開発のために、投資した年から何年かかけて、投資資金を回収することを狙います。要するに、コストダウンは過去志向、投資回収は未来志向と言えます。

3.未来に適応できる組織とは

CNという未来に適応できる組織とは、自社の既存事業で顧客のニーズに応え、社員に相応の給与を払い、株主にも配当を還元しながら、自社の未来の事業にも同時に資金を回す企業です。
なかには、業界全体をリードする(未来を創る)ために、長期的にも投資を行う企業もあります(図表1参照)

図表1

4.未来に適応できる組織を後押しする投資促進支援としてのGX

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、化石燃料に頼らず、太陽光や水素など自然環境に負荷の少ないエネルギーの活用を進めることで二酸化炭素の排出量を減らそう、また、そうした活動を経済成長の機会にするために世の中全体を変革していこうという取り組みです。

官民合わせて、再生エネルギー・自動車など22分野で150兆円の投資を予定しています。うち20兆円が国による先行投資支援【移行債、税額控除】で、原資は、CO₂排出量取引【有償オークション含む】・化石燃料賦課金【≒炭素税】です。
令和4年度と令和5年度の補正予算で、GX移行経済債として合計3,400億円が、こうした投資に使われます。

5.補助金を有効に活用するためには脱炭素計画策定が必要

補助金を獲得することは、新製品・新サービス開発のための手段にすぎません。中長期の経営計画、それを裏付ける投資計画と連動した脱炭素計画があってこそ活用できる補助金です。

補助金で資金の負担こそ減るものの、その獲得自体が目的ではありません。経営計画部門は、CN実現のためのイノベーションの動向を把握し、自社が参入する分野ではどの技術が有望か常にアンテナを張ります。営業部門は、ターゲットとする未来の顧客を設定し、その顧客ニーズを特定します。設計部門は、そのニーズを製品仕様へ展開します。こうした各部門のアクションプランが経営計画と連動していないと、設備を効果的に稼働させることができず、宝の持ち腐れになってしまう恐れもあります。

未来に適応して生き残ろうとする企業は、GXというチャンスをつかみ、2050年のカーボンニュートラルを目指して、まずは2030年度までの脱炭素計画というロードマップを策定しましょう。

(執筆者:中産連 主席コンサルタント エネルギー管理士 梶川)
自動車部品製造業・産業機械製造業・廃棄物処理業を中心に、温室効果ガス排出量算定・削減、省エネ診断、環境法令順守コンサルティングを行っています。


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