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氷山モデルを活用した提案営業

私は今でこそコンサルタントとして働かせて頂いていますが、実は営業担当として働いていた期間は長いです。そして、営業担当として学んだことが、今のコンサルティング業務に間違いなく活きています。

中部産業連盟に入職する前は、とある研究所で経理・研究管理・社内システムエンジニアをしていたため、転職してきた当初はコンサルティング営業が全くできませんでした。当たり前の話で、社内の調整業務だけを行っていた人間が、急にお客様の前で説明し、提案することなど出来るはずありませんよね。そのため、営業に行っては失注を繰り返し、時には顧客に不快感を与えることもあったかと思います。

営業として成果が上がるようになったのは、担当して3年経過した頃でした。きっかけは、大学院(ビジネススクール)に通い始め、そこで学んだフレームワークを活用して営業するようになったことです。

皆さんも、商談の際に顧客は現在困っていることをお話ししてくださいますが、問題の整理ができなくて顧客が納得する提案にまで結び付かない、という経験はないでしょうか?

今回記事にしようと思った氷山モデルは、問題の整理を行うことに大変優れています。営業担当が氷山モデルを使いこなすことができれば、顧客の真の原因(以下、真因)を捉えた、その顧客のためだけのオリジナルな提案を届けることができまると私は考えます。

今回は、氷山モデルを活用した提案営業の一部分ではありますが、ご紹介します。


1.問題を整理する必要性

顧客から伝えられる問題は、しばしば表面的なものであり、その背後に潜む真の問題やニーズを把握するためには、問題の整理が必要です。問題の整理によって、表面上の問題だけでなく、深層の問題にも目を向けることができます。

問題解決の提案営業する際に、表面的な問題だけに焦点を当てると、一時的な解決策にとどまることが多々あります。私が繰り返し失注していた主な原因は、ココにあります。

表面的な問題が全てであるかのように捉え、問題に応える商品を提案していたんですね。もはや提案でも企画でもない、いわゆる御用聞き営業に留まっており、コンサルティング案件は全く受注できませんでした。

しかし、氷山モデルというフレームワークを使うことで、問題の背後にある根本的な原因や潜在的な問題を明らかにすることができるようになり、顧客にとって、より持続的で効果的な解決策を見つけることができるようになってきたのです。

それでは、氷山モデルのフレームワークについて解説していきます。

2.氷山モデル(フレームワーク)

氷山モデルは、問題の整理に役立つフレームワークの1つです。このフレームワークは、表面上見える問題(一角)の背後に潜んでいる深層の問題(氷山の大部分)を示すものです。

マクレライド氷山モデルの概要

(1)根本的な原因の特定

表面上の問題だけを解決しても、根本的な原因が解決されていない場合、問題は再発する可能性があります。問題の整理によって、根本的な原因を特定し、それに対応する解決策を見つけることが必要です。

例えば、ある製造工場で品質の低下が発生しているとします。表面的な問題としては、不良品の数が増えているということが報告されています。しかし、氷山モデルを使って問題の整理を行うと、不良品の増加は表面上の一角である可能性があります。真の問題は、生産プロセスの特定のステップにおいて発生している欠陥や効率の低下にあるかもしれません。

氷山モデルでは、問題の表面的な要素(一角)だけでなく、その背後にある深層の要因や根本原因(氷山の下の部分)を考慮します。これにより、問題を総合的に把握し、より効果的な解決策を見つけることができます。

(2)真の顧客ニーズの把握

こちらが営業担当にとっては重要な要素です。
営業担当も顧客のニーズや要望を正確に把握するためには、問題の整理が重要です。表面上の問題だけでは、顧客の真のニーズを見落としてしまう可能性があります。問題の整理によって、深層のニーズや要望を明確にし、それに基づいて提案することができます。

例えば、ある営業担当が製造工場の担当者と会議を行い、品質の低下が発生していることを知りました。この情報を元に、最初のヒアリングでは、品質の低下についての表面的な要因を把握します。営業担当は担当者に対して、「なぜ品質が低下しているのか」と尋ねます。担当者は、製品の不良率が増加しているため、生産ラインのトラブルが原因であると説明します。この情報は、氷山モデルにおける表面的な問題(一角)に相当します。

しかし、営業担当はそこで満足せず、「なぜ?生産ラインにトラブルが発生しているのか」と再度問い返します。担当者は、生産ラインの機械の故障が頻繁に起きていることを明らかにします。

さらに、営業担当は興味津々で「なぜ?機械の故障が頻繁に起きているのか」と質問します。担当者は、定期的な保守点検や予防保全の実施が不十分であることが原因であることを説明します。

しかし、営業担当はまだ納得せず、「なぜ?保守点検や予防保全が不十分なのか」と追求します。担当者は、製造工場の予算削減により、保守作業や予防保全のための適切なリソースが割かれていないことを明かします。

ここで、営業担当はようやく真の顧客ニーズに迫ることができました。製造工場の顧客は、品質低下の問題を抱えているだけでなく、予算の制約によるリソース不足も抱えていることが分かりました。ここまで来てはじめて、氷山モデルにおける、その背後にある深層の要因や根本原因(氷山の下の部分)に相当するものを得たことになります。

3.真の顧客ニーズに迫る「なぜなぜ分析」

先の例で気づいた方もいると思いますが、氷山モデルを活用するために必要な分析として「なぜなぜ分析」を営業担当はヒアリングの現場で行う必要があります。しかも、相手に嫌がられないように、です。

人間とは、目の前で起こっている問題を解決してくれさえすれば良いと、まずは思うものです。これは、「長期的関係性を築く営業のコツ」で記した行動経済学の理論に基づいても証明されていることです。

まずは、相手が直面している問題に関心を持ち、共感を示すことが大切です。相手の立場や困難さを理解し、共感の意思を示すことで信頼関係を築くことができます。

そして、何よりも「なぜなぜ分析」の結果をもとに具体的な解決策を提案し続けることです。「なぜなぜ分析」を実施した相手に対して、分析結果に基づいた解決策を具体的に示すことで、相手の関心を引きつけることができます。

4.まとめ

氷山モデルを活用した提案営業について、ご紹介しました。顧客が抱えている問題は、面的な要素(一角)だけではなく、その背後にある深層の要因や根本原因(氷山の下の部分)に隠れていることを営業担当は理解しなければならいないと私は思っていますので、今回記事にしました。

氷山モデルも1つのフレームワークで、なぜなぜ分析は1つの分析手法に他ならないですが、使い方によっては営業する上で強力な武器になると私は考えています。

ただし、武器は隠すものです。決して顧客に見せびらかすものではないですので、自然にできるようになることが重要です。フレームワークを自然と活用できる営業担当になれると、自分も営業力が上がったなと徐々に実感できると思います。

フレームワークは、多種多様なものがありますので、いろいろと探索してみて下さい。私も皆さんにお伝えしたいものは、またnoteに記していきたいと思います。

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(執筆者:中産連コンサルタント 岡部)
中小企業診断士・経営学修士(MBA) 伴走型支援が得意で、クライアント企業様と一緒に課題を見つけ・悩み・解決することをお仕事にしています。



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