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【会計】第1号および第2号電子決済手段の発行・保有の会計処理、検討─ASBJ、実務対応専門委

去る9月7日、企業会計基準委員会は第149回実務対応専門委員会を開催した。第148回(2022年9月10日号(No.1654)情報ダイジェスト参照)に引き続き、資金決済法上の「電子決済手段」の発行・保有等に係る会計上の取扱いについて審議された。
主な審議内容は次のとおり。

■第1号電子決済手段の保有に関する会計処理の事務局分析

第1号電子決済手段の定義は次のとおり(資金決済法2⑤一)。

一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(略)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(略)

事務局は、電子決済手段に現金、金銭債権それぞれとの類似性が認められることから、どちらを重視するかにより次の会計処理が考えられるとした。

方法1 現金に類似するものとして会計処理する方法
①認識:受渡日
②測定:取得時→発行者によって償還が約されている額、期末→償還額
方法2 金銭債権と同様に会計処理する方法
①認識:発生→契約締結時、消滅→権利の行使時・喪失時・支配が他に移転した時
②測定:取得時→時価、期末→取得価額から貸倒引当金を控除した額

そのうえで事務局は、電子決済手段が通貨と同等の性質を有しており、電子決済手段が金銭債権に該当し得るとしても、電子決済手段が設けられた制度趣旨も踏まえると、方法1を採ることが考えられるとした。
専門委員からは、現金に類似しているとしても発行者(銀行、資金移動業者に限定。第2号も同じ)の信用リスクが残る点に懸念を示す意見が聞かれたほか、「預金と現金を比較するほうがよい」、「現段階で現金との類似性を重視するには、論点が残る。どちらを採用するかは明確に決めずに会計処理を検討すべき」といった意見もあった。

■第1号電子決済手段の発行に関する会計処理の事務局分析

事務局は、第1号電子決済手段の発行者は、保有者の求めに応じて発行価格と同額で償還する法律上の義務を有することになること、金融商品実務指針の定めなどから、第1号電子決済手段は金銭債務であると考えられるとした。そのうえで、次のような会計処理を示した。

①認識:発生→契約締結時、消滅→義務の履行時・消滅時・第一次債務者の地位からの免責時
②測定:発行時→債務額、期末→債務額

また、金融負債は時価評価の対象としないことが適当であるとする金融商品会計基準67項の定めは電子決済手段も同様と考えている。
専門委員からは「時価評価の対象としないことが適当ということは、市場で売買をする際に含み損益が発生すると想定されているということか」との意見が聞かれた。これに対して事務局は、「時価の変動はあまり想定していない。ただ、時価開示の対象になるかどうかについては今後検討する」と回答した。

■第2号電子決済手段の発行・保有に関する会計処理の事務局分析

第2号電子決済手段の定義は次のとおり(資金決済法2⑤二)。

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(略)

事務局は、第2号電子決済手段は、第1号電子決済手段と相互に交換できる財産的価値であることから、第1号と同様の会計処理となるとの考えを示した。


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