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Uyare(Rise)

こちらの映画は南部のケララ州の言葉、マラヤーラム語の作品。残念ながら日本では公開されておらず、日本のNetflixからも視聴可能かは未確認。主演はマラヤーラム映画で活躍しているパルヴァティティルヴォトゥが務めた。2018年11月からたった3ヶ月で収録を終え、2019年の4月にインドで公開された。

あらすじ

ある日、管制塔から緊急の無線が入ってくる。フライトの最中に機長が突然意識を失ってしまったのだ。無線の相手はまだ一度しかフライトを経験していない新米パイロットで緊急事態にパニックになっている。コックピットに居合わせたCAのパラヴィはなんと操縦桿を手に取ったのだった。パラヴィ、そして乗客たちは無事に着陸できるのだろうか。

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夢に向かって進む力強い女性像

作中でパラヴィはとても前向きで力強い女性として描かれている。小さい頃の初めてのフライトで出会った女性パイロットに憧れてパイロットになることを志す。娘想いな父親のサポートもあり無事にムンバイの航空学校への入学を実現した。クラスメートにも恵まれ、勉強にも非常に熱心に取り組んでいた。パイロットになるには特殊な訓練が必要なため、女性ともなればさらに狭き門であるに違いない。私はお目にかかったことがないが、2018年時点でおよそ1,000人の女性パイロットがインドにいるらしい。そして戦闘機の女性パイロットも同年に誕生している。

嫉妬深い元恋人

中学生時代に落ち込んでいた自分に寄り添ってくれたことがきっかけで交際を始めたゴヴィンドとも遠距離恋愛を続けるが、所有欲の強い彼はパラヴィが友人たちと夜に出歩くことをよく思っていない。パラヴィは出歩いていないと電話で伝えるもサプライズでムンバイを訪れたゴヴィンドに嘘がバレてしまう。パラヴィはその場で関係を終わらせることを伝えるも、翌日に事件が発生する。この映画においては極端であるが、インドの恋愛映画は男性がとてもストーカー気質であるように思える。日本はメッセージでのやりとりが主流である一方、インドでは月の携帯使用料が電話のかけ放題を含めても600円以下に抑えられることもあり通話でのやりとりが主流である。恋人でなくても家族と1日3回電話で話すことからわかるように、お互いの行動を把握したがる性質がこの場面でも見えてくる。

親の干渉

既に述べたようなゴヴィンドの束縛気質もストーリーに大きな影響を与えるある事件が起こる原因になり得るが、もう一つパラヴィの父親とゴヴィンドの関係性に関しても考察してみたい。子供の交際関係に親が干渉することは日本ではあまりないことである。一方でインドでは子供に相応しい人間か厳しくチェックすることがしばしばある。例えばゴヴィンドはバイクの修理工であったがお世辞にも社会的地位の高い職業とは言えない。パラヴィは航空学校で学び、パイロットになるという見込みがあった。そこでパラヴィの父親は直接ゴヴィンドに会い、娘と近づかないように伝えたのだった。ゴヴィンドの自尊心を大きく傷つけただろう。

事件後のパラヴィ

ネタバレは避けたいのでただ「事件」と述べているが、この事件はインドで年間に数百件発生し社会問題化しているある問題の被害者を描いている。身体や心に深い傷をおったパラヴィがどのようにその被害と付き合っていき、戦っていくのかに注目して鑑賞していただきたい。

予告編リンク(マラヤーラム語音声に英語字幕あり)


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