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Jail

Jailは2009年に公開されたインドの刑務所を舞台にしたヒンディー語の映画。監督は「Fashion」や「Calendar Girl」で知られたMadhur Bhandarkarが務めた。日本で知られた明るく華やかなインド映画のイメージを覆すドラマ系の映画。

あらすじ

パラグは順風満帆な人生を歩んでいた。仕事ではリージョナルマネージャーに昇進し、航空会社でCAとして働くマンシとの交際も順調に進んでいた。しかしある日、ルームメートのケシャブと外出している際に警察の検閲に引っかかり薬物が見つかってしまう。全く心当たりのないパラグは裁判を待つ間刑務所に入れられ、ケシャブは警察に抵抗して意識不明の重体となる。パラグは過酷なインドの刑務所に存在する厳しさ、誘惑と戦い無実を証明して元の生活に戻ることができるのだろうか。

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リアルなインドの刑務所生活

本作で描かれるインドの刑務所の環境はとても過酷である。全員が横になれる十分なスペースもなく、プライバシーを保つ他人との距離が全くない。与えられる食事も当然上等なものではない。そしてシャワーや洗濯に使える水の量も限られているため戦争のような奪い合いになる。刑務官の指示に従わない場合には容赦無く警棒で叩かれて反抗する余地もない。家族との面会も制限時間内に厳重に二重になっている金網越しのみ許される。映像を通してそうした厳しい環境に徐々にパラグが追い詰められていくのが伝わってくるのである。

パラグの自分との戦い

この映画の見所は上記に述べたような過酷な環境に置かれてしまったパラグの自身との葛藤である。パラグは無実の罪で刑務所に収監された。自分のすぐに解放されると信じて疑わなかったが裁判は思うように進まず希望を失っていく。愛する母親や恋人が恋しくなり刑務所に存在するギャングに夜闇の取引の誘惑に惹かれていくが、この取引の代償はとても大きい。刑務官や外部の人間につながりをもつギャングが自分の願いを裏ルートを通して実現してくれる一方で、見返りとして彼らの要求するどんな仕事もやり遂げないといけない。その誘惑に負けて数多くの受刑者が魂を売ることになってしまった。パラグは自分を保ち続けることができるのか、それとも誘惑に負けてしまうのか。その戦いに注目してほしい。

登場人物それぞれの人生のストーリー

そして本作品では主人公のパラグや家族、恋人だけでなく刑務官や他の受刑者の人生にフォーカスして登場人物を魅力的にしている点である。彼らがどのような人生を歩んでいてなぜ刑務所に収監されることになったのか。そしてこのような過酷な環境をどのような希望を持って耐え忍んでいるのか。それぞれの人物にはそれぞれの理由があることがわかっていく。パラグの心の葛藤も勿論だが、彼らも例外なく収監前の自分と周りの誘惑の間で戦っているのだ。特に個人的にはパラグの辛さを理解し、優しく時には厳しく指導する刑務官のナワブの演技が好みである。こうした同時進行していく受刑者それぞれもこの映画に深みを与えている。

予告編ビデオ


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