見出し画像

小皿に味噌(徒然草第215段)

平宣時朝臣(たいらののぶときあそん)さまが、昔のことを思い出して

「最明寺の入道様にある晩、一緒に飲まないか?と誘われたことがありまして。
『すぐに伺います』と返事をしたのはいいのですが、
綺麗な着物がなくて探すのに手間取っていたら
最明寺の入道さまの使いのものが来て
『夜だから、普段着でも結構ですよ。それよりもはやく来てほしいそうです』
と言われたので、よれよれの着物でお訪ねしたんです。

すると最明寺の入道様はお銚子とお猪口を持って玄関先に出ていらして、
『この酒を1人で飲むのは面白くないから誘ったんだけど、
ツマミになるような物はないんだ。あいにくウチの物もみんな寝てしまって、
起こすのも忍びない。台所に何かツマミがあるかも知れないから適当に探してきてくれないか?』
とおっしゃった。

灯りを手に持って探していると、
台所の棚に素焼きの小皿に味噌がチョット乗っているものを見つけたので、それを持って
『こんなモノがありましたよ』
とお伝えすると、最明寺の入道は
『おお♪それでいい♫』と喜び、
その晩は気持ちよく杯を重ね、楽しく過ごしたんですよ。
昔は、そんな風でしたよ。」

そのように言っておられた。

↓↓この段についてお話ししているポッドキャスト番組はこちら↓↓
【勝手に徒然草 #92小皿に味噌】

この記事が参加している募集

わたしとポッドキャスト

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?