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広場の中央にそびえる時計台が十八時の鐘を鳴らし始めたその瞬間、男は礼服を翻してカフェのテラスに降り立った。そのたたずまいや、病的なまでに白い肌は死神のそれを思わせた。彼は込み合ったテラスの喧騒からただ一人、私だけを鋳抜いて真っすぐに歩み寄った。 「斎藤様でいらっしゃいますか」 突然名前を呼ばれたものだから驚いて、持っていた雑誌を落としてしまった。 「どちらさんですか」 「三年と十一か月前にご登録いただいておりました、斎藤様でいらっしゃいますね」 死神はもう一度私の名前を