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エッセイ

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小説以外の日記、エッセイ文、所感などを放り込む場所です。更新は不定期です。
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2020年4月の記事一覧

母校の制服がMCした話

 格調高くも印象的な冒頭は菊池寛による大正九年作の短編『形』のもの。特に好きな作品で、また短いので折に触れて読み返す。 「槍中村」と呼ばれた槍の名手は戦場において猩々緋の陣羽織を羽織り、その姿を見たものは「ああ、猩々緋よ、唐冠よ」と恐れをなす。味方にとってこれほど頼もしいものはない。ある日若い侍が、初陣に陣羽織を貸してほしいと相談を持ち掛け、中村は快く懇願を受け入れるが、続く戦において若侍が颯爽と戦果を挙げたのに対して、羽織を失った中村はあっけなく仕留められてしまう。人々が怖