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伊藤詩織:幻の韓国軍慰安所と微妙な就活

近くの図書館から伊藤詩織さんの "Black Box" を借りて読みました。この本は2021年に米で発行された。日本語の原本は2017年だからおよそ4年のギャップがある。しかしこの本には最初からひっかかりを感じている。

第一に正直でないという印象。強姦事件に関連する詳細が、本、海外インタビュー、裁判関係書類等で微妙な喰い違いを見せている。それらが詩織さん虚偽説に繋がってしまっている。

この事件はホテルの密室内で起こったので物的証拠がないと見なされれている。判決は詩織さんの方をより信用したと理由ずけている。これも2017年の詩織さん側に立ったBBCドキュメンタリーの視点とは大きく違っていた。

前回でも述べたように、彼女は学費節約の為に日本、ドイツ、スペイン、イタリアの各大学で必要科目を習得したそうだが、それら各大学の名は全部伏せられている。もちろん卒業を目前に中退を余儀なくされたNYの私立大学の名も伏せられている。

しかしだ、このNYの私立大学の名は好奇心に燃えるおせっかいやき読者によってネットで公開されている。

詩織さんは2013年の12月に当時首都ワシントンのTBS支局長をしていた山口さんにバイト先の"ピアノバー"で出会った。2014年の前期セメスターはイタリアのフィレンチェに留学して交換科目を習得。しかし夏の終わりにパートナーと破局し、9月には山口氏の特別の口利きでNYの日テレ支局のインターンをした。この事で詩織さんはメールで御恩は一生忘れません、と山口氏に感謝していた。

インターンしている間、山口氏は国連総会の取材でNYを訪れたが、詩織さんはせっかくの再会の機会を自ら断っている。詩織さんとしては山口氏は決して個人的に近ずきたいという間柄ではなかったようだ。

それが半年前の9月で、その年の終わりに彼女は卒業をギブアップして日本へ帰国。

翌年早々にはロイターのインターンをスタート。これも2か月の短期間で、終わったらこの先どうしよう、と迷ったようだ。本ではロイターのシンガポール・アジア部支局がフリーランス(バイト)の契約をくれることになった。しかし詩織さんは家族の強い希望もあり安定した正式雇用を捜すことを選択。本では何たってジャーナリストという線でたどりついたのが再び山口氏ということになっている。

詩織さんは山口氏にメールでワシントン支局のインターンのポジションを打診。その際、ジャーナリストとしての就職先を探していることを伝えている。

山口氏は、ここのインターンは即本採用につながっている(英語版訳)と返答。"詩織ちゃん"は正採用を狙ったらどうか、とほのめかした。

本によると詩織さんの頭にはあるシナリオがあった。それはインターンから現地採用されることだ。日テレでインターンした際に現地で本採用された女性に遭遇した、と書いている。もっともこの女性は米の大学卒となっている。とにかく山口氏の返答は詩織さんにとっては願ったりかなったり。早速、本採用の方に応募する、と返事を送った。それならば、と山口氏は詩織さんに履歴書を送るように指示、彼女はそれに即従った。

正式採用には本社を通すので時間がかかる、現地にくればフリーランス(=つまりバイト)を(山口氏が)させてやる、とまた山口氏の示唆。そうすると、"問題はビザだ"、で例の"ビザ"の話がここで初登場。
給料が払われるので詩織さんには何らかのタイプの労働ビザが必要となるわけだ。

事実は詩織さんは外国メディアや組織とのインタビューで山口氏からその日仕事のオファーを受けた、その為に労働ビザを取る必要があるので、彼が来日した際にアポを取った、と繰り返し述べている。

海外バイトごときでわざわざビザを供給してくれるド親切な有名企業はあるのか?というのが私の疑問。
しかし山口氏は、TBSには過去にその例があった、とメールで示唆。
山口氏のは米でいうジョブ・オファーではなく日本の非公式の内定にも聞こえるが、何か紛らわしいところがあり、就職斡旋詐欺にも似ている。

この山口氏に対しても多くの人が、ビザの話なのになぜ食事に誘い、その前に飲み屋で待ち合わせしたのか、という疑問を出している。山口氏は一体どこまで本気だったのかと。これは私の憶測だが、警察側が詩織さんを信じて山口氏を逮捕しようとした原因もここにあったのではないか、と思っている。

実はこの時山口氏も問題の渦中にいた。山口氏は一週間前に文春から特ダネを出したばかり。それは、ベトナム戦に参戦していた韓国軍が戦地で慰安所を開設していた、証拠はこの私が発見した米公文書、というもの。確か元米軍人の証人もいたが、この米人は後で証言をひっくり返した。それにメディアからはネトウヨの片棒担いだジャーナリストによる歴史捏造だと散々非難を浴びた。

この山口さんの特ダネ捏造事件と詩織さんの就活レイプ事件は日にちが奇妙に一致している。伊藤氏詩織さんが突然山口氏に就活メールを送ったのが3/25で3/26は問題の文春特ダネの発行日。だが真相はブラック・ボックスだ。この記事で山口氏は一躍安倍側近ジャーナリストとして時の人となった。一方の詩織さんの方は全くの無頓着、記事も読んでない、と裁判で述べている。

下の動画はスェーデンTVの著名なトークショーに出演した沙織さん。4分10秒の時点で山口氏との会食について説明している。ポチで日本語字幕が出ます。詩織さんは英語で、事実その日に山口氏から米国でのジョブ・オファーを受け、ワーク・ビザについて打ち合わせすることになった、とはっきり述べている。

Shiori Ito broke Japan's silence on rape: – The outcome was brutal | SVT/NRK/Skavlan - YouTube

今日ではベトナムの米軍基地内に売春施設があったことは歴史上の事実です。米軍が設置し、運営はかっての日本軍慰安所と似てベトナム人に委託だったようだ。基地内の兵士の宿舎を急遽改造してベッドごとにカーテンで区切っていた、という米兵告発者の証言も残っている。ベトナムに参戦したオーストラリア軍にも同様の売春所があった。だから韓国軍にもあったとみてもおかしくない。従って山口氏の特ダネも当たらずとも遠からずということになる。

山口氏が持ち出した公文書は新潮記事としてネットに掲載されている。軍特有語が使われ意味がはっきりしない箇所がある。内容は米軍内の大がかりな横流しの報告だ。犯罪の対象はエクスチェンジと呼んでいる米軍の売店用の商品である。このエクスチェンジは多数のデパート、大型スーパーを米国内外で運営しており世界最大の流通チェーンである。米軍兵士にとっては生活に欠かせない重要な購買施設だ。理由はそこの商品が特別割引価格で安く売られているからだ。だから客は軍人関係者のみに厳しく制限されている。しかし海外ではエクスチェンジには横流しがつきもの。この文書は韓国軍を通して米軍物資が横流しされ、その背後には韓国軍関係者がいる、と示唆している。

問題のサイゴンのトルコ風呂(ターキッシュパーラー)は韓国軍の福祉センターの一つ。軍の福祉センターがクラブと売春の施設というのだから"慰安所"に似ていないこともない。だがここで横流し商品が大っぴらにさばかれていた。しかもここが犯行の司令部となっていた。ここの値段はサイゴン価格でかなり高め。もともと酒類、食品、TV,電気製品などのエクスチェンジ物資は給料の安い米兵、ここでは韓国兵、に特別割引価格で供給されるはずだった。だがここの客は韓国兵よりとにかく金を持った連中で、犯罪人共は差額マージンで大儲けだ。

このトルコ風呂が売春所であることを米軍は隠していないところから、韓国軍が設置していたとも充分考えられる。売春は$38と記されている.1970年としてはかなりいい値段で当時貧乏国だった韓国兵士が喜んで払ったとは思いがたい。タバコ1箱が$0.67、ビール1缶が $0.68だと書かれている。これも米本土並みかそれ以上のお値段。

ところでビールの3倍以上もする値段のサイゴン・ティーの正体については報告書を書いた人も全く知らないとうそぶいている。リサーチするとこれは色付きのミント味のする甘いドリンクとなっていた。おそらくフランス人の好むミント・ウォーターのことだろう。つまりフランス式クールエイド。だが日本でのホステスの指名料に相当。客がテーブルのついた女性におごり、ドリンクの半額が彼女達の取り分となった。彼女達はティーガールとも呼ばれ多くは田舎から戦火を逃れてサイゴンへ流れ込んできた女達であった。

戦時下の苦しい時代に客につきまとってこうして現金を稼いだのです。彼女らの苦労にはただアタマを下げるのみ。

日本軍慰安所は売春所であったことにかわりはないが、このサイゴンのトルコ風呂は果たして山口氏の主張するように"慰安所"と呼べるのでしょうか?

(写真1)山口敬之の“韓国軍に慰安婦”捏造疑惑 米公文書を全文公開 | デイリー新潮

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