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【SAPIXのシステム】土特(土曜志望校別特訓)についてのあれこれ〜後期編〜

夏期講習が終わると、ついに中学受験の最後の段階である6年生後期に突入致します。後期からのSAPIXは平常・土特に加えてSS(サンデーサピックス)になり、空いた時間に志望校の過去問を行う一週間になります。

その中での土特に対して前期の土特は必須で受講すべきものだとお伝え致しました。しかし前期・後期で意味が大きく異なるため、後期の土特に関しては慎重にお考え頂く必要があります。SAPIXにて指導していた経験からアドバイスできることがあるため、是非お役立ち頂ければと思います。


今回は神奈川県の栄光・聖光対策などや開成・桜蔭・筑駒補講などの特殊な事例は除き、大多数の校舎の通常の土特に対しての内容になります。特殊事例に関しては各個ご確認下さい。



後期の土特は受講すべきかどうか

いきなり本題ですが、後期の土特は受講すべきかどうかという問題があります。
私が考える答えは
状況によっては受講しない選択も有り
です。
これには2つの理由と後期の状況から言える内容が考えられます。

理由①教材

これは算数の内容になりますが、教材のミスマッチという問題があります。

どういうことかというと、後期の土特算数の教材は大体下記のどれかになります。


・WS(ウィークリーサピックス)
・分野別復習テストB
・Sプリント
・基礎トレテスト
・超図形プリント
・SEプリント
・Nプリント
・SS志望校用教材(何故か土特に回ってくることがあります)


これらの教材の問題点は志望校によっては難しすぎることと、1週間の中でこの土特でまでやる必要があるのだろうかということです。
例えば、慶應中等部を志望されている場合は仮に上位生でも必要があるのかは疑問です。

適切なレベルの学校というと男子上位進学校などではないでしょうか。
そうなると志望校の偏差が50前後以下の場合、現状としても目標としてもこの教材を行うことにどれほどの意味があるのかと私は感じてしまいます。

理由②人員配置

私はよりこちらの理由の方が後期の土特に大きな影響が強いと感じる、人員配置における問題が後期は発生致します。

子供たちが夏期講習を終えSSが始まることが大きな変化であることと同じく、勤務をする講師にとっても大きな変化なのです。それは、単純に授業をする日数が1日増えるのです。じゃあ単純に勤務日を週に1日増やせば良いのか、というとそれほど単純ではなく労働基準法に引っかかる可能性が高くなります。そこから考えられることは前期中に入っていたどこかを外れ、代わりに日曜日にも勤務することです。ちなみにこれが該当するのは社員である常勤です、契約である非常勤は該当しません。

そして、一番割を食いやすい日が土曜日なのです。
SS以外の授業は平日の4・5・6年生の平常授業か土曜日の土特、これを比較すると後期の土特は優先順位が下がります。もちろん全ての講師が外れるわけではありません、ですが比較すると土特と他の平常の授業では土特の授業から外れるケースが多くあります。
私の経験上、社員の授業の優先順位は下記になります。

6年生平常授業>>>>>>>4・5年生平常αブロック>>>土特

これぐらいの差は感じられます。

では、これによる問題は何かというとSS単科講座の問題と同じ一体誰が代わりにやるのかということです。

結局、外れた講師に代わりに来る講師は前期から土特に入らなかった人、ということになります。では何故こういう人は前期から土特に配置されていなかったのでしょうか?
人によっては事情もあるのでしょう。実際私も採用になったタイミングが6月だったので、初年度は9月から土特に配置されることになりました。しかし、それ以降の経験上そんなケースは珍しくほとんどの場合は講師の実力によるものだとしか思えませんでした。

基本的に新年度のスタートである2月から配置されていない場合は配置できなかった何かしらの理由があるからだと思われることで概ね問題は無いと思います。
それぐらい途中から担当になるということは普通ではない、ということです。

最悪の状況

上記の内容は重複した時が一番酷いことになります。

つまり、子供にとって本当に必要かどうか分からないレベルの教材をそんなことも判断出来ずさらに子供を出来るようにすることも難しいレベルの講師がひたすらやらせるという地獄のような75分が続く、かもしれないということです。

6年生後期の状況

6年生後期の状況を一言で言うと
やるべきことを絞り込んでいく時期
と言えると思います。

6年生の夏期講習までは幅広く行って、それこそ算数だけでなく4科目全てについて可能性を全体的に高めていくことを追って良いと思います。しかし、後期になり特に10月11月ぐらいまで来たのならばそのような全体的な内容に対して学習することが目的と言えるのでしょうか。この段まで来れば、2月に向けての対策を行うことが最も目的に沿った行動と言えると思います。そういった意味が絞り込むということだと私は考えています。

塾の教材というものは基本的には生徒に対して最大公約数的な意味合いで作られていきます。そうなると、最後の最後には個人の目的に沿っているのかと言われると違和感が生じてしまうのは仕方がないとも言えるでしょう。
特に土特の教材であればαの最上位生たちや志望校が最上位校ならば行う意味は有るでしょうが、それ以外は中々厳しいと言えます。


いつも通りのお話しにはなってしまいますが結局上記の問題、教材の難しさ・人員配置が関わるのは下位コースになります。
上位生であれば教材の難しさも必要になりまた対処も出来るでしょう。
そして決定的な人員配置の問題はもちろん上位には関係のない話です。仮に上位担当の社員が抜ければ、スライドでαブロックAコマの非常勤が担当するだけです。

常に情報を集め対処が求められるのは下位の成績のご家庭です。辛い現実ですが、そこから抜け出すために早めに準備を行うことが最も重要な対処法です。


対処法

大事なことは目的に沿った行動かどうかになります。
そのためご家庭にお考え頂くことは、SAPIXに通うこと従うことが目的なのか・子供の志望校への合格の確率を上げることが目的なのか、ということです。

それをお考え頂いた上で必要であれば土特に参加されれば良いですし、不必要だと思われたら参加をされなくても構わないと思います。
しかし、ただ参加されずに1日空けましたでは無意味になる可能性があります。下記の注意点を考え可能かどうかはご検討頂く必要があります。

注意点①管理監督出来るかどうか

絶対にしてはならないことは
子供任せにすること
です。
これをした途端せっかくの空いた時間が無意味な1日に成り下がります。

最上位生が自分から時間が欲しいからと言ってきたようなレアケースを除いて、子供が自分で1日の勉強を考え実行できることはありません。辛辣な言い方であることは分かっておりますが、こういった内容で『子供を信じる』などの甘い考え方をなさるならそれが上手くいかない根本的な理由と私には見えます。もしくは子供の受験に関わることが面倒であるからかもしれません。どちらにせよ、都合の良い夢物語に逃げずに子供の受験に本気で関わって下さい。そういった保護者の気持ちが現状を大きく変えるための最初の原動力になります。

もちろん、全てを保護者が考えろ、と言っているわけではありません。
具体的な内容などは専門家に確認し決めて頂ければ良いと思います。
大事なことは、子供が行っていることを確認し現状を把握し目標に対してどうなのか、ということを保護者が管理するということです。
逆に、子供の勉強の横で保護者が付き添っている、などは止められたほうが良いです。ほぼ上手くいきませんので、要所要所でチェックをするぐらいの方が良いでしょう。

特に個別指導に自習室で丸投げなどは、子供任せ&放棄になっていますので絶対にやってはならないことです。

注意点②土特と同等以上の内容かどうか

もちろん、土特の内容よりも劣っている内容であればわざわざ休んでまで行う必要性が無いわけです。

ここで言う内容の優劣というのは志望校に沿っているのかということです。
例えば、算数が出来ていない子に何でもかんでも『四科のまとめ』を進める講師がいますが正直時間の無駄が多いと思います。あのような一単元に10問未満の問題では全然足りません。これで改善が見れるのは受験学年以外かどの模試の偏差でも40を切るようなレベルの子供になります。

こういった意味で本当に志望校に向けて積み上げている内容になっているかどうか、これがとても重要であることは当然だと思われるのではないでしょうか。けれども案外ズレた内容をやられているケースも少なくないのです。

注意点③本気かどうか

最後は抽象的な内容になってしまいますが、ご家庭が本気で中学受験に向けて取り組んでいるかどうかです。
結局はご家庭が本気でなければ子供も本気でやれないのです。

①の内容とも重複しますが、本気だから①のような管理監督が出来るのだと思います。これは共働きのご家庭はダメなのかというとそんなことはありません。むしろ共働きの場合のほうがより強く影響があります。
上記の土特についてなら時間をやりくりされる場合もあれば、外注される場合もあります。どちらにせよ、ご家庭が本気であるからこのような検討を行おうと思うのでしょうし、外注するのならば本当に何とかなる可能性のある講師を探し当てるのだと思います。

オマケ

部分的に土特に参加される、例えば理社のみ参加などというお話しを聞いたことがあるのですが私はあまりオススメ致しません。これは、子供にとって慌ただしくなるのと居心地の悪さという理由からです。
出来ないわけでは無いと思いますが、それほど効果があるかと言われるとうーんと感じるため、参加されるか参加されないかの2択のほうが良いかと思っています。

まとめ

SAPIX6年生の土特は前期・後期で内容自体の性質と時期による状況の違いが大きい問題と言えます。
上記にて後期の土特には問題があることを説明致しました。
・教材の難しさ
・人員配置の問題
・受験直前という状況
これらの問題から、私は後期の土特に関しては必ずしも参加されなくて良いかと考えています。

とはいえ、巷に言われているような無責任な土特不要論とは違います。休んだ分に対しての綿密な準備と管理が伴わなければ無意味な1日になることをお考え頂く必要はあります。

現在の中学受験が『元々出来る子が上手くいく受験』になっている大きな理由として、保護者があまりに塾や受験に関して無策であることが言えると思います。これは無関心であることも焦っていても近場の周りの情報や目に付く情報などに飛びつくことも同レベルで無策であると言えます。

大事なことは、保護者が目的に関してのリテラシーを高めることです。そのためには、まずご自分が動き調べ考えることが絶対に必要になってしまいます。有益な情報はただ待っている人には届きません、自ら取りに行きましょう。世の情報の大半は無意味どころか害悪なものですから大変かもしれません、けれどもそれを何とかすることは子供が中学受験で行っていることと同じことなのだとお知り置き下さい。


注:上記の内容は全て武田の個人的な私感です。SAPIXの公式な見解ということでは無いということをご承知おき下さい。


算数の家庭教師を行っております。無料相談も行っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

武田の個人的な思い

ここから先は武田の非常に個人的な思いで書かせて頂いた内容になります。
かなりネガティブかつ個人的な内容になりますので、そういった方向性を好まれない方にはオススメ致しません。










上記の人員配置の問題も、新しく来る人がもっと真面目に教えようとする人であればだいぶマシになるとは思うのです。
しかし最近の人、特に大学生の大半に多い傾向として無駄に自信に満ちているというものがあります。その結果、ロクに打ち合わせもせずに授業に入り上述の地獄のような時間を作ってしまうのです。

これの最大の問題はその場にいる常勤だと私は思っています。この人たちも新しく来る人たちが大半ろくなレベルでは無いことは分かっています。けれどもそこに手を付けようとすることはほとんどありません。理由は主に
・ハラスメント
・時間の無さ
・そもそも指摘できるレベルの常勤が休みになるケース
だと言えます。
結局はハラスメントとという障害は子供に対してだけでなく、こういった大人に対しても言える内容のため直接的だけでなく間接的にも子供に影響が出てしまいます。
業務に関わる内容なのだから言えば良いだろう、と思われるかもしれませんがそこで不満を感じ次から来なくなるなどは本当にあることなのです。そしてその結果は自分の評価へ返ってくるため、そんなことをやりたいかという状況になってしまうのでしょう。これは学校における教師の立場の弱さから今年1年をつつがなく終わらすという事なかれになってしまう状況ととてもよく似ていると思っています。
また、常勤は基本的に忙しいです。出来る常勤ほど仕事量も多く、非常に大変です。そうなると余計放っておきたくなるのだろうと思います。

こういったことは時代の流れで仕方ないと思えることかもしれません。けれども一番重要なことはどこを見て授業を行うのかということです、あくまで教育なわけですので。

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