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「ガッツ」な女子アナ・RCC田村友里(26)【前編】休むより仕事してたい!そのわけは?

 「ガッツ」と呼ばれる中国放送(RCC、広島市中区)のアナウンサー、田村友里さん(26)。まだ入社4年目ですが、飾らないキャラクターが人気で、9月には初のエッセー本を出版しました。映し出されるのは「休むより仕事してたい」という、がむしゃらな姿。今の20代はプライベートを大切にする印象があるのに、いったいなぜ? 田村さんに聞きました。(文・栾暁雨、写真・山下悟史)

入社1年目から番組で自分のコーナーを持つなんてすごいですね。でも、テレビで素をさらけ出すのは怖くないですか。

 ダメな自分を出すことに抵抗はありません。担当している「イマナマ!」の企画「花よりガッツ」では、失敗もたくさんして毎回ドタバタ。海に落ちたり、牛の舌を触って大騒ぎしたり。でもこのコーナー名、われながら自分の性格をよく表していて、すごく気に入っているんですよ。

 だって女子アナの世界にはまさに「花」のような美しくて賢い人がいくらでもいる。その分野ではとても勝負できません。就活中も周りを見れば大学ミスコンの優勝者や元アイドル、モデル…。その中でどう生き残るか、をずっと考えてきました。

 入社後もそう。中根夕希アナや河村綾奈アナのような正統派にはなれない。キラキラに憧れるけど根がそうじゃないから、無理してもメッキが剝がれます。だったら、やる気とガッツという自分なりの持ち味で一番になりたいな、と。テレビやラジオってすごく人間性というか「素」が出るから、どのみち取り繕うことはできませんしね。

 プロゴルファーの父・尚之からは「将来何をするにしても、なるなら一番かビリか、どっちかにしなさい」と言われて育ったんです。中途半端はダメということ。会社員をしながら49歳でプロに転向し、オンリーワンの人生を歩む父ならではの言葉です。

ニックネームが浸透しているそうですね。

 ありがたいことに、今では歩いていると「ガッツじゃ!」と声をかけていただけるようになりました。「花よりガッツ」は木曜の生放送で発表された街に、翌日、アポなし体当たりロケに行くという企画。丸3年で訪れた街の数はおよそ70に上ります。これがもう本当に楽しくて。広島からの中継を担当しているTBSの朝の情報番組「THE TIME,」でも、憧れの安住紳一郎アナが「続いては広島からです。ガッツ~」と呼んでくれるようになりました。

宝物は視聴者からの手紙。デスクの引き出しに保管している

 私、この仕事にすごく誇りを持っていて、死ぬまでアナウンサーでいたいんです。テレビでは図太そうに見えると思いますが、実はすごく心配性。準備には時間をかけます。中継前は自分で100回くらいシミュレーションし、リハーサルも50回くらいはやる。番組後はその日の反省点を必ずノートに記します。

 小さい頃から憧れて、やっとの思いで就いた仕事なので「今怠けたらあの頃の自分が悲しむ。これまでの努力が無駄になる」と思ってしまって。頂いた仕事は全て引き受けたいし、全力で向き合いたいんです。

熱量がすごいです。

 仕事が好きなので、休むことの方がストレスなんですよ。本当は週7日稼働したいけど、働き方改革でそうもいきません。社として「田村を休ませないといけないので、この日は申し訳ありません」と説明し、仕事をお断りすることもあるんですが、それが悲しくて。労務管理がしっかりしているのは、RCCがホワイトな会社だからこそ。感謝しなきゃ、と思いつつも「もっと働きたい!」「もっとテレビに出たい!」とガツガツしちゃうんです。

 先日も出産したばかりの親友に、「子どもは欲しいけど、産前産後の2週間だけ休んで仕事に復帰したい」と話したら「アホか」とあきれられました。今の私にとっては「仕事が趣味」なんでしょうね。

 ちなみに、昨秋にスタートしたラジオの「たむランド~夜の図書室」という15分番組は、私が「もっと仕事したい」と駄々をこねたのがきっかけです。ちょっぴり大人な恋愛小説をムーディーに朗読し、作品選びから、構成、収録、編集まで全て自分で行っています。

かつてのモーレツサラリーマンのようです。休む方がストレスなんて、田村さんの同世代では珍しい気がするのですが。

 「働き方が昭和」とよく突っ込まれます。友人からも「それだけ夢中になれる仕事に出合えてすごい」と驚かれる。本当にその通りで、私は幸せ者です。

 ただ最近になって、視野を広げることが必要だと気付きました。これまでは1週間のリフレッシュ休暇も嫌だったんですよ。極力休まなくて済むように年末年始と合わせて取っていたんですが、先輩たちから「休みにインプットして仕事に還元することも大切」と教わりました。

 なので、今年からは「リフ休は成長の機会。無駄にしないぞ」と意気込み、10月上旬に長崎旅行へ。広島と同じ被爆地なので学べることが多いし、世界文化遺産の軍艦島や「世界新三大夜景」の稲佐山山頂からの眺めなど、見どころがたくさん。

 今季のNHK朝ドラの舞台、五島列島にも行きました。地元の人に話しかけておいしいお店を教えてもらうなど、旅先でもロケのリサーチのようなことをして。ラジオのネタに使おうと思っているので、結構綿密なスケジュールを立てて動いたんですよ。

さすがプロです。

 そうでもしないと私、仕事以外では超「干物女」なので。偉そうなこと言ってますが、普段の休日はジャージー姿でゴロゴロして終了です。12時間爆睡して起きるのは昼過ぎ。ベッドから動かず、1日30歩しか歩かないようなぐーたら人間なんです。近所に出没する時も、髪はボサボサ、コンタクトも入れず眼鏡をかけたまま。

 料理も家事も苦手で、食事は某デリバリー会社にお世話になりっ放しです。週4日は頼んでますね。洗濯物も干すのが面倒だから乾燥機を買っちゃいました。社会人になって一番満足した買い物が乾燥機、というくらい必需品です。

公私のギャップがおもしろすぎるんですが。アナウンサーを目指したきっかけは何ですか?

 小さい頃に見ていた朝の情報番組「めざましテレビ」に出ていた高島彩さんです。その知性と美しさに魅了されて、以来、ずっとアナウンサーになるためだけに生きてきたと言っても過言ではありません。

 たむら・ゆり 1996年呉市生まれ。ノートルダム清心中・高を経て明治大政治経済学部卒。2019年中国放送入社。アイドルグループ「嵐」のファン。

後編に続く⇩⇩⇩