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ネットで不倫のデマを流された山口県内の女性。投稿が削除されない理不尽

 ○○って人、不倫してるよ―。山口県内に住む50代女性は2年前、インターネット上の匿名掲示板に実名をさらされ、身に覚えのないデマを流されました。加害者には罰金刑が科せられましたが、問題の投稿は今なお削除できていません。女性は「この苦しみが一生付きまとうんでしょうか」と悩んでいます。被害者にも加害者にもなり得るネット空間。皆さんはどう向き合っていますか。(田中美千子)

被害の始まり

~2019年秋

 「大変なことになってるよ」。同僚がそう知らせてくれたのは、2019年11月のことでした。聞いたこともない掲示板に自分のことが書き込まれていると知り、女性はスマートフォンでサイトを探しました。そして目を疑ったのです。
 それは女性の名前の入った投稿でした。不倫しているとデマを書かれた上、勤務先まで暴露されています。「この人、見たことある」「地獄行きだな」…。胸を刺すようなコメントが、既にいくつも書き込まれていました。
 このサイトには「削除依頼に対応する」と書いてありました。女性は早速、定型フォームを利用し、削除を求めました。が、何回トライしても「72時間をめどに検討する」と、素っ気ない定型文が返ってくるだけ。一向に削除されません。

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 「私、誰かに恨まれることをしたのかな」。いくら考えても、女性に心当たりはありませんでした。それでも、出勤するのが怖くなったといいます。「やましいことは何もないのに人目が気になって…」。職場で名札を付けるのも、電話で名乗るのも嫌になったそうです。
 女性の夫も冷静ではいられなかったようです。「電話に出なかったのは誰かと一緒だったから?」。そんな疑いの目を向けられました。夫の不安は分かるものの、女性も心穏やかではいられなかったのです。

加害者に罰金刑

~2020年秋

 同じ掲示板には、不倫相手に仕立てられた友人男性の個人情報もさらされていました。女性が連絡してみると、「あいつかもしれない」。仲たがいした知人がいるのだといいます。泣き寝入りはしたくないと、女性はすぐに警察へ相談しました。ただ、最初に対応した職員は「及び腰」の印象。「犯人特定は困難」と何度も説明されました

名誉棄損・文書 モザイク処理済み2


 確かに難しいだろうと思いつつも、女性は諦めきれませんでした。警察も手を尽くしてくれたようです。「書き込んだ男が分かった」との連絡を受けたのは、半年後の2020年6月。男はやはり、友人男性の知り合いでした。警察の聴取に犯行を認め、名誉毀損(きそん)の疑いで検察に送られました。検察も男を起訴し、その秋、40万円の罰金刑が科せられたのです。
 男は友人男性に恨みがあったようです。つまり、女性はとばっちりに遭っただけ。「軽率な行為がどんなに人を苦しめるか。罪に問われることなのだと自覚してほしい」。そう憤ります。

消せない書き込み

~2021年春

 ほっとできたのはつかの間でした。2021年春、久々に掲示板を開いた女性は血の気が引いたといいます。自らに汚名を着せた投稿が、目に付きやすい場所に残っていたからです。
 「何とかしないと」。再び削除依頼をサイト運営業者に出してみましたが、やはり機械的な返答があるだけ。業を煮やした女性の目に留まったのは、この掲示板に載っていた東京の弁護士事務所の広告でした。「専門はネット中傷削除」とあります。早速、相談メールを送りました。


削除料55万円

~2021年秋

 今度はすぐに返事がありました。しかも「2週間ほどで消せる」という頼もしい内容。しかし、金額にも驚かされました。「税込みで55万円」を請求されたのです。

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 別の弁護士には「削除は難しい」と、あっさり断られました。夫は「払ったらいい」と言ってくれます。「消せたらどんなに楽になるか」。女性もそう漏らします。ただ疑念もよぎるのだといいます。いとも簡単に消せるというのは、掲示板の運営業者から広告料の見返りがあるからでは―
 「一方的に傷つけられた上、ネット業界の食い物にされているとしたら悔しすぎます」。この弁護士事務所を頼るかどうか、女性はまだ決められずにいます。

グラフィック・大友勇人

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