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記者ノート

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記事で伝えきれなかったこと。取材して悩んだこと、感じたこと‥。記者たちがありのままに届けます。
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広島市議会の議員の発言を分析したサイトを作った理由(報道センター社会担当・明知隼二)

 地元の議員さんって何してんだろ…。そんな疑問を抱いたことはないだろうか。もしかすると、そもそも議会の存在を意識したことがないという人の方が多いかもしれない。そんな人たちが議会を知る助けになればと思い、広島市議会での議員の発言を分析したウェブサイト「市議会って何の話をしているの?」を1月下旬に公開した。ITを活用して読者の皆さんの「知りたい」に応えるための一つのチャレンジだ。 ◆サイト作り サイトを作るため、記者業の傍らウェブ制作やプログラミングを一から学んだ。新聞記者がな

女性アスリートの悩み 言いづらい空気なくなれ(報道センター運動担当・西村萌)

小さな疑問 自分と重ね合わせ スポーツ担当の部署で日々、女性アスリートに接する中、小さな疑問が湧いていた。大事な試合が生理と重なったら、痛みや出血にどう対応しているんだろう。20代半ばで競技を辞める選手が多いけど、体力的には続けられそうなのにもったいないな…。  男性指導者が大半を占めるスポーツ界では、カラダのことやセクハラのことなど、言いづらいことも多いだろう。私はぼんやりと自分を重ねていた。私自身、スポーツ担当の約20人の職場でたった1人の女性記者。もしかしたら、女性同

なぜ手は黒く染まったのか。河井夫妻事件を追い続けて(東京支社編集部・中川雅晴)

冬空の下、捜査関係者を待った日々 振り返ると、あの時は寒かったなと思い出す。  冬空の下、震える手を飲みたくもない缶コーヒーで温めた。捜査関係者が帰宅するのを、家の前で立って待ち続ける日々だった。8時間待ったこともある。あんまり寒いので、足元まで覆われるサッカー用のベンチコートを買って着込んでいた。俺、こんなとこで何してんだろう。何度もそう思った。  元法務大臣の河井克行氏と、その妻で自民党の参議院議員だった案里氏。河井夫妻の大規模買収事件を、2年余りにわたって追いかけてき

ペンを鍬に持ち替えたアラフォー記者が、休職して畑で見つけたこと(東広島総局・教蓮孝匡)

記者室に電話。「タマネギの苗 買ってよ」 2021年11月上旬。東広島市議会の取材を終え、東広島市役所の中の記者室に戻ると、私用のスマホが鳴った。 「あ、教蓮(きょうれん)さん?」  声の主は森貞直子さん(75)。私の自宅近くにある物産館「福富物産しゃくなげ館」(東広島市福富町)の副館長だ。 「タマネギの苗、もう少し買わない?」 「へ? 苗?」 「余っとるんよ」 (私が耕す畑を訪れた森貞さん㊧)  つい1週間前、私はしゃくなげ館のそばに借りている畑で、いも掘り&焼きいもイ

連載「耕すアラフォー記者 協力隊に転身、そして復帰」から

 中年記者はペンをくわに持ち替えた。2年前の夏。中国新聞記者の私、教蓮孝匡(きょうれん・たかまさ、44歳)は、13年続けた会社勤めをお休みし、地域おこし協力隊として東広島市福富町へ移り住みました。山里で取り組んだのは、子ども向けの体験農園づくり。2年後に「卒業」し、復職した後も町に残り、本業の傍ら農園活動を続けています。2021年4月に中国新聞朝刊で連載した「耕すアラフォー記者 協力隊に転身、そして復帰」の初回を紹介します。(教蓮孝匡)  妻の目が見事に三角になっていた。「

尾道の町には「余白」がある。支局時代の出会いで気付いたこと (報道センター社会担当・田中謙太郎)

 「ここは余白がある町だと思ったんだよ」 ある男性から聞いた言葉が、ずっと頭の中に残っている。  その町は、今年の2月まで4年間、支局の記者として暮らした広島県尾道市。広島市から東に80キロ離れた、瀬戸内の港町だ。自ら選んで住んだわけではないが、確かに余白を感じる町だった。人を引き寄せ、溶け込ませる不思議な力があった。  尾道で私は昨年、「雑居雑感(ざっきょざっかん)」という本を書いた。さまざまな人が寄って「雑居」する町で、人々が思う「雑感」を記録するという意味を込めた。内