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あえて都心の一等地を"占拠"⁉『みんなでつくる中国山地』004号トークイベントwithスタンダードブックストアのレポート

12/1(金)夜、大阪を拠点とする独立系書店スタンダードブックストアで『みんなでつくる中国山地』004号トークイベントが開催されました。ものすごく盛り上がった過去2回同様、今回も楽しく盛り上がりました。過去2回はこちらです◎

今回は、関西在住の田中謙太郎さんがレポートを書いてくれました!


会場は高層ビルが林立する梅田のシェアオフィス。洗練された空間にやや戸惑いを覚えながら、「みんなでつくる中国山地」のトークイベントに参加しました。

事務局のローカルジャーナリスト田中輝美さんを囲んだのは、スタンダードブックストアの中川さんとコピーライターの日下さん。共に気質が明るくはっきりモノを言う石見と大阪のお三方が集っただけあり、予測不可能なマシンガントークが繰り広げられます。

それでもこの本が持つ魅力や意義について、重要なお話がいくつもありました。まず里山のスローライフを演出する商業誌や過疎の悲惨さを強調するマスメディアのように、外部から中国山地を都合よく切り取るのではなく、実際に暮らしたり関わったりする人々が、ありのままの暮らしや思いを書いていること。だからページデザインも内容もバラバラなのに、1冊にまとめると不思議と伝わってくる「熱」があるのです。

『みんなでつくる中国山地』004号

資産価値で測られる商品ではなく、住み継ぐ「場」としての家

そして今回の004「住まう」特集は、家を資産価値で測られる商品ではなく、住み継ぐ「場」として考え直すものです。人口減少がいち早く進んだ中国山地には空き家があふれていますが、裏を返せば生かせる資源でもある。石州瓦や茅葺きなど職人技が宿る素材はもちろん、里山の職住一体の暮らしに支えられ、改修を重ねながら住み継がれてきた家がたくさんあるそうです。

新築信仰が強い日本社会ですが、ローンや家賃に追われながら働かなれけばならないのはとても息苦しい。だからこそ中国山地の住まいの価値を見つめ直す人が増え、本で紹介された新しい活動にもつながっているということでした。当初は「家と資本主義と私」という直球のタイトル案だったけれど、編集会議で待ったがかかったという裏話も。メンバーが熱意をぶつけ合い、毎号激論を重ねて作られていることが伝わってきました。

血縁の中で家を住み継ぐという考えを変える

私にとって印象的だったのは、血縁の中で家を住み継ぐという考え方を変えていく必要があるということ。中国山地では空き家を安く買い取り、2~3軒家を持っている人も珍しくないそうです。里山に留まって暮らし続けることが当たり前でない以上、都市と二拠点生活をしたいとか、住民と関わる場をつくりたいという外部の人々の手で、家が形を変えながら使われ続けていくことにも大きな意味があると思いました。

血縁の枠内で土地や家を守っていくことは、都市の不動産の価値を高めて家族や企業の中で蓄財をしていく考え方とそう変わりがありません。もちろん家業の存続や地域住民への配慮は必要だけど、流動性が高まっていくことで、中国山地の家に資産とは別の価値がもっと見出されてくるのかもしれない。その価値が環境への優しさや伝統素材の大切さだけではなく、「消費」に依存しない人と人との豊かな関係だとすれば、それは都市の生活空間にも見出しうることかもしれないと思いました。

「あえて都心の一等地を『占拠』したのかもしれないな」。そう感じさせるトークイベントでした。都市の片隅で暮らす根無し草の一会員&書き手として、今後とも中国山地に足を運びたいです。

イベント終了後にみんなで記念撮影

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